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宇宙の夜明けにある巨大天体ヒミコの姿が明らかに ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ電波望遠鏡の観測で古代の天体に迫る

掲載日:2013年11月22日

© NASA, ESA, 東京大学(大内正己) ハッブル宇宙望遠鏡、すばる望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡のデータから作成されたヒミコのカラー合成写真。左側のパネルはハッブル宇宙望遠鏡が捉えたヒミコとその周辺領域です。ヒミコは、中央の白い四角形で囲まれた位置にあります。右上のパネルは白い四角形の内部を拡大した画像です。右下のパネルはこの部分をハッブル・すばる・スピッツァー望遠鏡で観測した画像を重ね合わせたものです。ハッブル宇宙望遠鏡の画像ではWFC3カメラにより撮影された0.98, 1.25, 1.6ミクロンの近赤外線3バンドのデータをそれぞれ青、緑、赤で表示しています。ハッブル・すばる・スピッツァー望遠鏡の画像では、ハッブルWFC3カメラの3バンドで合成した近赤外線を緑、すばるシュプリーム・カムで捉えたライマン・アルファ輝線を青、スピッツァーIRACカメラで得られた3.6ミクロンの赤外線を赤で表示しています。

巨大天体「ヒミコ」は、ビックバンから8億年後にあたる古代の宇宙(現在の宇宙年齢の僅か6%しか経過していない時代)に存在する天体です。2009年に東京大学宇宙線研究所 大内正己 准教授(当時はカーネギー天文台・カーネギーフェロー)らによってすばる望遠鏡で発見され、5万5千光年に広がった熱く輝くガス雲を持つヒミコの並外れた性質が明らかにされました。しかし、そのガス雲とエネルギー源については謎に包まれていました。

今回、大内 准教授らは、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ電波望遠鏡による観測を行い、「ヒミコ」の正体に迫りました。観測データからは複雑な構造が描き出され、この巨大天体では3つの銀河が衝突する珍しい現象(三体合体)が起きていることが分かりました。これによって引き起こされる激しい星形成活動が輝き続ける巨大なガス雲を作っていると考えられます。一方で、ヒミコからはビッグバンで生成されない元素(炭素、ケイ素、酸素などの重元素)が発する電波が検出されませんでした。これは、ヒミコを構成するガスは重元素を殆ど含まず、ビッグバン直後に作られた原始ガス(水素やヘリウムといった軽元素からなるガス)に近く、ヒミコが原始的な古代の天体である可能性が示唆されました。今回の観測結果は、宇宙が星々の光で満たされ始めた「宇宙の夜明け」と呼ばれる時代において、銀河が作られる最初の過程を明らかにする上で重要な知見です。

プレスリリース

論文情報

Masami Ouchi, Richard Ellis, Yoshiaki Ono, Kouichiro Nakanishi, Kotaro Kohno, Rieko Momose, Yasutaka Kurono, M. L. N. Ashby, Kazuhiro Shimasaku, S. P. Willner, G. G. Fazio, Yoichi Tamura, and Daisuke Iono,
“AN INTENSELY STAR-FORMING GALAXY AT Z~7 WITH LOW DUST AND METAL CONTENT REVEALED BY DEEP ALMA AND HST OBSERVATIONS”,
The Astrophysical Journal Online Edition: 2013/12/01(UT), doi: 10.1088/0004-637X/778/2/102.
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宇宙線研究所

宇宙線研究所 観測的宇宙論グループ

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