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波形インバージョンによる西太平洋下の最下部マントル構造 キャロラインホットスポット火山の起源に迫る

掲載日:2014年10月21日

地球は、地表から深さ方向に地殻・マントル・外核・内核にわかれている。外核と接するマントル最下部はD”領域(ディーダブルプライム、厚さ数百キロの領域)と呼ばれる。液体鉄合金からなる外核に近づくにつれて、D”領域内で温度や化学組成が急変する。この領域を介した物質やエネルギーのやり取りはマントルの熱化学進化の観点から地球の進化を考える上で重要な手かがりとなるが、その詳細な構造はいまだ明らかになっていない。

(1) 震源(トンガおよびフィジー下の赤星)及び観測点(日本にある青い三角)の分布。波線の赤い部は地震波線がD領域を通る範囲を示す。挿入図は図(2)における断面を示す。(2) 西太平洋下の最下部400 kmマントルのS波速度不均質構造。(2a)は各深さにおける速度構造。(b)は図1の挿入図で示された断面における速度構造である。高さ300km程度の「逆Y字型タワー構造」の低速度領域がある速度構造が見られる。

Adapated from Figure 1 and Figure 4, Waveform inversion for localized three-dimensional seismic velocity structure in the lowermost mantle beneath the Western Pacific, Konishi et al., Geophysical Journal International, 199: 1245-1267, 2014.
(1) 震源(トンガおよびフィジー下の赤星)及び観測点(日本にある青い三角)の分布。波線の赤い部は地震波線がD’’領域を通る範囲を示す。挿入図は図(2)における断面を示す。(2) 西太平洋下の最下部400 kmマントルのS波速度不均質構造。(2a)は各深さにおける速度構造。(b)は図1の挿入図で示された断面における速度構造である。高さ300km程度の「逆Y字型タワー構造」の低速度領域がある速度構造が見られる。

今回、東京大学大学院理学系研究科のロバート・ゲラー教授および同大学院総合文化研究科の河合研志助教らは、日本の高密度地震観測網で収録された膨大な地震波データを解析し、西太平洋下のD” 領域の詳細な3次元構造を推定することに成功した。その構造には、高さ300km程度の「逆Y字型タワー構造」の低速度領域が見られた。これは核とマントルの境界における局所的な高温領域であると解釈される。この構造はキャロラインホットスポット火山のほぼ真下に位置するため、今まで不明であったこのホットスポットの起源が核とマントルの境界であることを示唆する。従来の希ガスの同位体を用いた研究から、キャロラインホットスポット火山は初生的もしくは孤立したマントル由来であることが示唆されていたが、今回の成果はその仮説を裏付ける証拠となる。今後キャロラインホットスポット火山の年代軌跡の研究から過去のプレートの運動の研究が進むことが期待される。

なお、本データ解析には、ゲラー教授および河合助教らが開発した詳細な3次元内部構造を推定可能にする「波形インバージョン」手法を用いた。

プレスリリース

論文情報

Konishi, K., K. Kawai, R.J. Geller and N. Fuji,
“Waveform inversion for localized 3-D seismic velocity structure in the lowermost mantle beneath the Western Pacific”,
Geophysical Journal International, (November, 2014) 199 (2): 1245-1267. doi: 10.1093/gji/ggu288.
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