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「Proprius21:東京大学、天然ガス鉱業会京葉天然ガス協議会と『地圏開発における持続可能性の考え方の構築と地域環境問題への対応技術の開発』に関する共同研究を開始」記者発表

「Proprius21:東京大学、天然ガス鉱業会京葉天然ガス協議会と『地圏開発における持続可能性の考え方の構築と地域環境問題への対応技術の開発』に関する共同研究を開始」

2007年2月21日
国立大学法人東京大学

Proprius21:東京大学,天然ガス鉱業会 京葉天然ガス協議会と
「地圏開発における持続可能性の考え方の構築と地域環境問題への対応技術の開発」
に関する共同研究を開始

 国立大学法人東京大学と天然ガス鉱業会 京葉天然ガス協議会(環境委員会)は,地域エネルギー資源開発活動の持続可能性と地域資源の高度利用に資することを目的として,地圏利用における環境調和型技術開発に関する共同研究を開始します.
  天然ガスに代表される化石エネルギーは,一次資源として人間活動に不可欠な物質ですが,消費を主とし,リサイクル,リユースができない特性を持つため,安定した持続的な供給が必要です.
  千葉県を中心とした南関東ガス田は,約3,200億?の水溶性天然ガス可採埋蔵量を誇り,現在の年間生産量を4億?とすると約800年間の継続的な開発が可能です.当該地域のかん水(ガスが溶けた状態で存在する地層水)はガス水比(産出水量に対するガス量の容積比)が高いために生産効率が高く,さらに天然ガスはメタンが約99%を占め,一酸化炭素や硫黄分等を含まない環境にやさしいクリーン・エネルギー資源といえます.また,かん水から抽出されるヨウ素の生産量は世界の約1/4に達します.以上のように,南関東ガス田の水溶性天然ガス・ヨウ素は埋蔵量,環境負荷特性ともに優れており,今後の社会発展を支える重要な資源として期待されます.
  しかし,水溶性天然ガスは地下に存在しているため,資源開発に伴い地圏環境の変化が発生します.例えば,地下水の揚水によって南関東ガス田でも地盤沈下問題が起きており,それが長年継続することにより,地表環境変化(河川流況,洪水,塩水遡上など)の可能性も危惧されています.したがって,当該地域の水溶性天然ガスを今後も長期間にわたって安定したエネルギー資源として活用するためには,環境への影響に十分な配慮がなされた,地域社会に受容される持続的開発のあり方を模索していく必要があります.
  これまでは環境対策として,「開発の規制」を行ってきました.すなわち,法律・協定・自主規制をもとに,排水量や水質の目標値の設定・測定・管理を行い,規制組織への報告と承認により対応してきました.本共同研究グループはそこからさらに一歩進めて,地域社会に受容される「持続可能な開発の提案」を目指します.具体的には,その実現に不可欠な以下の3つの技術開発【環境変化把握・予測】【地盤変動監視・観測】【資源利用・地域貢献】を行います.
天然ガス生産活動が地表環境変化に与えた影響の正確な評価と将来予測
  天然ガス生産活動等に伴う地盤沈下により,われわれの生活圏である地表環境がどの程度変化したのかを定量的に評価します.まず過去の地理情報(旧版地図,空中写真,衛星データ)やその2次データ(土地利用図や地形分類図)を整理し,GIS技術を用いて位置情報をもとにデータの統合・解析を行い,対象地域における地表環境変化およびその要因として地下環境変化の実態を定量的に把握します.次にそれらの変化と工業的な揚水による地盤沈下との対応関係・因果関係を解明し,環境影響予測システムを開発します.以上の研究成果により,地域社会に受容される持続的開発のための環境保全技術の構築と長期ビジョンの作成が可能になります.

地盤変動監視・観測技術の構築
  水準測量,GPS,干渉SARを統合的に活用し,社会に受け入れられる精密地盤変動計測技術の開発を目的とします.まず,公的に使用される水準測量の弱点(基準点の経時変化の把握,水準測量自体の精度)を定量的に認識し,GPS測量を用いた精密位置測定により水準測量を補完します.さらに,干渉SARによる面的精密位置計測による解釈支援を行います.特に本研究では茂原地区をテストフィールドとして広域地盤変動を精密に測定するための実用的方法を開発し,上記3方法統合による社会受容性のあるプロトタイプシステムの構築を目標とします.研究成果は,各地の地盤沈下監視に対して意思決定を支援できる測量技術として活用されます.

地場エネルギーとしての資源の位置づけと有効利用
  地場の天然ガス資源の有効利用による再生可能エネルギーの積極的導入と,持続可能な自律分散型地域エネルギーシステムの提案を目的とします.再生可能エネルギーである風力と太陽光は共に自然エネルギーのため出力が不安定で,常に系統側でバックアップを用意する必要があります.これに対し本システムは,この自然エネルギー特有の出力変動を,地場産の天然ガスを燃料とする出力調整が容易な電源によりマイクログリッド内で需要に合わせるように平滑化し,系統に負担をかけずに再生可能エネルギーを導入できるようにするものです.本システムは系統電力との高い親和性を有することから,各地において再生可能エネルギーの積極的な導入が期待されます.

 なお,本共同研究に対し,東京大学は大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 助教授 徳永 朋祥,大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授 六川 修一,助教授 茂木 源人を中心としたチームで研究を遂行しております.また共同に研究を行う天然ガス鉱業会は国内での天然ガス開発・生産会社17社が天然ガス鉱業の発展を期して昭和32年に設立され,京葉天然ガス協議会は京葉地区の天然ガスに関する諸問題に対処するための下部組織となっています。この協議会の中に特に九十九里地域等を拠点とした天然ガス・ヨード生産会社が地盤沈下等の環境問題に対して業界として対応するために設けられたのが環境委員会です.環境委員会は次の9社から構成されています:旭硝子株式会社,伊勢化学工業株式会社,合同資源産業株式会社,帝国石油株式会社,日本天然ガス株式会社,日宝化学株式会社,三井化学株式会社,株式会社東洋興産ライフ,関東天然瓦斯株式会社.

本共同研究は,2009年9月末まで実施の予定です.本共同研究の計画は,東京大学Proprius21プログラムのもと約1年かけて行われました.Proprius21プログラムのもと計画された共同研究のうち,複数企業との連携を行うものは本件が最初の例となります.

Proprius21とは,産学でテーマ検討段階から討議を重ね,テーマの絞込み,ニーズの明確化とシーズの創出について合意形成をはかり,共同研究の立案計画を進めるものです.
詳しくは,下記URLをご覧ください.
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/proprius21/index.html


■お問い合わせ
国立大学法人 東京大学 産学連携本部


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