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RNAの生成過程に関する新たな発見をScience誌がEditor’s Choiceで紹介研究成果

RNAの生成過程に関する新たな発見をScience誌がEditor’s Choiceで紹介

2009年11月12日
東京大学先端科学技術研究センター

RNAの生成過程に関する新たな発見をScience誌がEditor’s Choiceで紹介


 このたび、東京大学先端科学技術研究センター(以下、東大先端研)の和田洋一郎特任研究員、大田佳宏特任研究員、井原茂男特任教授、児玉龍彦教授(システム生物医学分野)らが英オックスフォード大学と連携して行った研究成果、「ヒトの染色体にポリメレースの複合体が結合してRNAが作られてゆく様子をとらえることに成功」に関する研究論文*1が、11月13日付Science誌のEditor’s Choice*2で採り上げられます。

*1 米国科学アカデミー紀要の電子版に掲載された研究成果の概要については別添参照
*2  Editor’s Choice とは、Scienceの編集者が最近の論文から優れた研究内容を選択し、ハイライト形式で紹介するとともに、その学術的な意義を編集者の視点から解説する記事のこと

1. Science誌、Editor’s Choiceに選ばれた理由
 今回クロマチン免疫沈降や、マイクロアレイ技術といった従来型の生物医学研究の手法と、大量情報処理という数学的手法を高度に融合させることによって、従来、菌類と同様に進行すると考えられていた遺伝情報の転写が、哺乳動物細胞においては全く異なる様式で進展していることが明らかになりました。その結果、30年前の仮説に再度脚光を浴びせ、加えてインスレーターという蛋白群や、ヒストン修飾などのエピゲノム修飾が転写の進行に重要であることを新たに見出し、遺伝情報を分断して遺伝子上に保有している哺乳動物の転写メカニズムの解明に一歩前進することになりました。

2. 今後の展開
 哺乳動物において、遺伝子とは、遺伝情報(エクソン)とそれを分断するイントロンからなります。その結果遺伝子は長大になるので、効率的に遺伝子を転写するためには多数のRNAポリメレースIIを組織的に動員する必要があると推測されていました。今回、転写の実体を観測したところ、遺伝子の上を大量のRNAポリメレースIIが時間を追って移動している様子が認められ、これらを保持する未知の巨大な転写装置の存在が示唆され、今後その解明が重要と考えられました。
 一方、効率的な転写の為にクロマチン構造が立体的に変化していることも推測されていましたが、核内での染色体の動きは予想以上にダイナミックでその詳細をとらえることができませんでした。しかし、今回血管細胞に炎症刺激を加えて一定時間帯に転写が起こっている遺伝子群を同定したので、その瞬間にRNAポリメレースIIに結合している遺伝子の配列を明らかにすることによって、一つの遺伝子内において配列上は隔たっていても空間的に隣接している部分を明らかにし、遺伝子の空間的な構造を解明することが期待できます。
 また、同じ炎症刺激によって転写される複数の遺伝子群のうち、いくつかの遺伝子は同じ転写装置によってまとめて転写を受けている可能性があります。今回同定された転写の動態を手がかりに、複数の遺伝子間での相対的な空間的位置関係を解明することによって、一つの刺激によって引き起こされる多数の遺伝子群の転写のメカニズムが明らかになることが期待されます。

以上

注意事項:
Science誌オンライン版が掲載される、アメリカ東海岸時間11月13日午前零時、日本時間11月13日午後2時、までは報道しないようお願い申し上げます。

ご参考:
[1]Science
http://www.sciencemag.org/

[2] 米国科学アカデミー紀要(PNAS)
http://www.pnas.org/

お問い合せ:
東京大学先端科学技術研究センター
システム生物医学分野 教授 児玉 龍彦
システム生物医学ラボラトリー(LSBM)のサイト http://www.lsbm.org/

【報道担当】
東京大学先端科学技術研究センター
経営戦略企画室広報担当 神野
〒153-8904 東京都目黒区駒場4-6-1

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