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東大と電通総研、「世界価値観調査2010」日本結果を発表 ―社会不安の中、社会と個人のウェルバランスを模索する生活者―

東京大学(調査代表:大学院人文社会系研究科教授 池田謙一)と電通(電通総研)は、1981年以来実施している「世界価値観調査」の日本調査の結果をもとに、日本人の価値観の時系列変化(1981年~2010年)について分析し、発表しました。結果の概要は以下の通りです。

≪結果の概要≫
1. 生活や家計の満足度が低下、増加する「中の下」(ロワーミドル)意識
2. 背景には「経済競争力」「雇用・労働状況」の悪化や、「国際政治力」の低下などの社会不安
3. 今後10年間の国家目標として「高い経済成長の維持」を期待
4. 国の役割は「国民の安心な暮らし」の実現 めざすべきは、「財政規律」を重んじ、「福祉などの行政サービスが充実した社会」
5. 「科学技術水準」「文化・芸術」については、日本がよい方向に向かっていると評価
6. 環境や安全に配慮し、創造性を活かし、人と助け合う“共生個人主義”志向は健在、同時に、無駄な出費を避け、必要なことにだけお金をかける堅実消費志向も
7. 消費は自分自身の利益/便益だけでなく、「公共性も考慮すべき」と考える生活者が増加

 1981年から2010年までの時系列データをみると、ここ5年で生活や家計の満足度が約7ポイントも低下しており、人びとの不満の高まりが読み取れる。生活程度意識についても、1990年には過半数を占めていた「中の中」意識が時系列で縮小し、かわって「中の下」(ロワーミドル)意識の拡大が顕著である。このような背景には「経済競争力」や「雇用・労働状況」の悪化、「国際政治力」の低下などの社会不安が垣間見え、現在の日本に不安を感じる人も93%に達している。
 そのため、今後の日本については、グローバル市場における高い経済成長の維持を期待しつつ、行政に対しては、健全な財政規律をベースに、福祉など再配分機能の充実による安心な暮らしの実現を期待しており、活力と安心を両立する社会像が望まれていることが鮮明になった。
 そんな不安感の中でも、「科学技術水準」、「文化・芸術」については、日本が良い方向に向かっていることとして評価しており、グローバル競争の中で日本が生き延びるための重要なファクターとして注目されているようだ。
 生活面においては、前回の2005年調査と同じく、重視するライフスタイルとして、環境や安全に配慮し、創造性を活かし、人と助け合う“共生個人主義”志向がみられた。また、経済停滞、社会の先行き不安の中、無駄な出費を避け、必要なことにだけにお金をかけたいという堅実消費志向も明らかとなった。同時に生活者の間には、消費という本来個人的な活動において、公共性の文脈を重視する傾向が拡大しており、新たな消費スタイルを模索する兆しが読み取れる。
 社会の混迷、経済停滞という不安の中でも、「経済成長と再配分」、「自分自身の利益と公共性」といった、一見相反するように見える事象の調和をめざし、社会・環境との共生と個人主義のウェルバランスを探りつつ、前向きに自分のライフスタイルを構築しようとする、しなやかな人びとの姿が浮き彫りとなった。
 調査後の2011年3月に発生した東日本大震災は、こうした国民の求める暮らしや期待に衝撃を与えた。高い経済成長の実現はますます厳しくなることが予想され、国民の安心な暮らしを守るべき国の役割がまさに問われている。科学技術水準への期待に影を落とす事態も生じている。そうした中で、人々のあいだでは、助け合いの精神をベースとした“共生個人主義”が実践レベルで発揮されているように思われる。さらなる試練においても、新しい社会像、新しい個人像の模索が続くことが期待される。

≪「世界価値観調査」概要≫
世界97カ国・地域の研究組織によるグローバル協働プロジェクトで、定量調査により、一般の人びとの価値観や意識を比較・分析するものである。本調査は、過去30年にわたり時系列調査を行っており、6回目となる今回の調査には、文部科学省平成22年度科学研究費補助金により、東京大学と電通総研が協働で参画した。今回の日本調査は2010年11~12月、全国18~79歳を対象に訪問留置法で実施した(有効回答数は2,443。訪問留置法は、専門の調査員が無作為に抽出された調査対象者を訪問し、調査票への回答を依頼、後日回収するために再訪問する調査方法)。

<本件に関するお問い合わせ先>
東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室 池田謙一
電通総研インサイト・センター グローバル・インサイト部 山﨑・榊原

※主なトピックスとデータはこちらをご覧下さい。


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