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耳が光って血糖値をお知らせ ―4ヶ月以上長期埋め込み計測に成功!―研究成果

「耳が光って血糖値をお知らせ
―4ヶ月以上長期埋め込み計測に成功!―」

平成23年8月2日

東京大学生産技術研究所


1. 発表者:
竹内 昌治(東京大学生産技術研究所 准教授)
ホ ユンジョン(同 特任研究員)
興津 輝(同 特任准教授)
柴田 秀彬(技術研究組合BEANS研究所 研究員)
川西 徹朗(同 交流研究員)

2.発表概要:
東京大学生産技術研究所と技術研究組合BEANS研究所は、血糖値に応じて光の強度を変えるハイドロゲルをファイバー状に加工し、マウスの耳に4ヶ月以上埋め込み血糖値を計測することに成功した。
20110802
このセンサは、これまでに同研究グループが考案した、血糖値に応じて光の強度(蛍光強度)を変化させるハイドロゲル(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2009/20090619press1.pdf)をファイバー状に加工したもの。これまでのビーズの形状は、長期埋め込みを行うと、ビーズが移動してしまうという問題があった。また、計測後に、ビーズを体外に取り出すことも難しかった。そこで、微小径のファイバーに加工することで、長期間、埋め込んだ位置に安定して存在させることができた(上写真参照)。また、ファイバーを引き抜くことで、容易に埋め込み部位から取り出すことにも成功した。さらに、このハイドロゲル内に生体適合性のポリマーを混入させることで、埋め込み時の皮膚周囲の炎症を低減させ、皮膚の外からの光計測を長期間行うことができた。実験では、埋め込み後4ヶ月経っても、ファイバーの位置は変化せず、体内の血糖値に応じて変化する蛍光強度を体外から計測することに成功した。

糖尿病において合併症を防ぐためには、厳格な血糖値制御が必要である。現在、多くの糖尿病患者は1日数回、指などに針を刺し、血糖値を計測している。しかし血糖値は、食事や運動によって、大きく変動するため、1日数回の計測では、十分な経時的変化をとらえることは難しい。連続計測のために、半埋め込み型のセンサが市販されているが、感染症などの理由から数日おきにセンサを取り替えなくてはならず、長期間の計測は難しかった。

ここで開発された微小径のファイバー型センサを利用すれば、患者の負担なく体内に低侵襲で埋め込むことが可能であり、睡眠中など、自らが計測することができない場合でも、長期間センサを取り替えることなく、自動的に(無意識のうちに)血糖値を計測できるシステムの実現が期待できる。

本研究は8月1日3:00PM(米国東部時間)に米国科学アカデミー紀要(PNAS)誌の電子版に公表された。なお、本研究は、NEDOの「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」(BEANSプロジェクト)の一環で行われたものである。

3.発表雑誌:
雑誌名:米国科学アカデミー紀要(PNAS)電子版 Proc. Natl. Acad. Sci. USA
論文タイトル:Long-term in vivo glucose monitoring using fluorescent hydrogel fibers
著者:Yun Jung Heo , Hideaki Shibata , Teru Okitsu , Tetsuro Kawanishi, and Shoji Takeuchi

4.問い合わせ先:
東京大学生産技術研究所 准教授
竹内 昌治(たけうち しょうじ)

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