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東京大学IRT研究機構が共焦点距離センサと塵埃センサを実現~京都で開催される国際学会NEMS2012にて発表~研究成果

東京大学IRT研究機構が共焦点距離センサと塵埃センサを実現
~京都で開催される国際学会NEMS2012にて発表~

平成24年3月5日

東京大学大学院情報理工学系研究科

国立大学法人東京大学(総長:濱田純一、以下、東京大学)の東京大学IRT研究機構長・大学院情報理工学系研究科 下山 勲 教授らは、2012年3月5日から8日にかけて京都で開催される国際学会NEMS2012(7th Annual IEEE International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems、以下NEMS2012)で、「共焦点距離センサ」」および「薄膜梁を用いた塵埃センサ」について発表します。


内視鏡により病変部までの距離を計測するための共焦点距離センサ

1.発表者: 野田堅太郎
(東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 特任助教)

2.発表のポイント: 
  ◆研究のポイント
内視鏡での治療の精度向上を目的として、内視鏡の先端から病変部までの距離を正確に計測するための内視鏡に組み込むことが可能な共焦点距離センサを実現しました。
  ◆新規性
内視鏡から病変部までの正確な距離を計測することが可能な共焦点距離センサです。
  ◆社会的意義/将来の展望 
内視鏡に組み込み、内視鏡の画像と重ね合わせ・表示することで、病変部までの距離を施術者に提示することが可能となります。内視鏡によるレーザ治療を行う時など、病変部までの正確な距離がわかることで、レーザを集光し、正確に病変部を焼灼・治療できるようになります。

3.発表内容:
国立大学法人東京大学(総長:濱田純一、以下、東京大学)の東京大学IRT研究機構長・大学院情報理工学系研究科 下山勲教授および野田堅太郎特任助教らは、京都で開催される国際学会NEMS2012にて、「内視鏡による病変部位置特定を実現する共焦点距離センサ」に関する研究発表をします。

現在、初期段階の小さな病変部の治療方法の一つとして、内視鏡を用いたレーザ治療が用いられています。この治療法では、病変部に治療用レーザを照射し、焼灼・治療するため、病変部に治療用レーザを正確にフォーカスすることが必要です。しかし、現在使われている内視鏡では、内視鏡から病変部までの距離を測定しておらず、正確な位置合わせは困難です。

本研究では、内視鏡治療時に内視鏡の先端から病変部までの正確な距離を計測・提示するための共焦点距離センサを実現しました(図1)。

共焦点距離センサは、観測対象物に微弱なレーザを照射し、その反射光を光検出器で検出します。反射光は、観測対象物がレーザの集光する位置にある時に、光検出器に届きます。そこで、レーザの集光位置を前後に走査し、反射光が観測された時のレーザの集光位置を求めることで、対象物までの距離を計測します。

提案するセンサでは、光学系先端に取り付けた液体レンズを用いてレーザを集光します。液体レンズは、下部透明電極に配置した液体を薄い高分子膜と上部金属薄膜で覆っており、上下の電極に電圧を加えることで変形し、焦点位置が変わります。この液体レンズに周期的に電圧を加えることで、レーザの集光位置を前後に走査しました。さらに液体レンズの形状をその静電容量[注1]を元に計測することで、ヒステリシス[注2]なく、高精度にレーザの集光位置を計測する方法を確立しました(図2)。

この共焦点距離センサを用いることで94~140mmの距離を標準誤差1.0mm、標準偏差0.7mmで計測し、提案するセンサの有効性を確認しました(図3)。

提案する共焦点距離センサを内視鏡に組み込むことで、病変部までの距離や病変部の三次元形状を施術者に提示し、レーザ治療などの内視鏡作業を高精度化することが可能となります。

本成果は、JST研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)要素技術タイプの開発課題 「内視鏡のための単眼三次元異種情報計測システムの開発(平成22~25年度(予定))」によって得られたものです。

4.学会での発表タイトル: 
Kentaro Noda, Nguyen Binh-Khiem, Yusuke Takei, Tomoyuki Takahata, Kiyoshi Matsumoto, and Isao Shimoyama, “Confocal Distance Sensor with Varifocal Liquid Lens”

5.添付資料: 

20120305_01
図1:共焦点距離センサを用いた内視鏡システム

20120305
図2. レンズの静電容量変化と焦点距離の関係

20120305_03
図3. 試作した可変焦点液体レンズおよび共焦点距離センサを用いた距離計測結果

6.用語解説:
[注1] 物体が変形した際に、何かしらの理由で変形を起こした原因を取り除いても元の状態に完全には戻らなくなる現象。
[注2] 絶縁体を挟む二層の電極にどの程度まで電荷を蓄えることができるかを表す物理量。


薄膜片持ち梁を用いた塵埃センサを実現

1.発表者: 高橋 英俊(東京大学大学院IRT研究機構 特任研究員)

2.発表のポイント: 
  ◆研究のポイント
MEMSを利用して、薄膜片持ち梁を用いた塵埃センサを実現しました。
  ◆新規性
従来とは異なり、光学系を用いないセンサ構成です。
  ◆社会的意義/将来の展望 
原理的に花粉などを検出する塵埃センサの小型化・低消費電力化が見込まれます。

3.発表内容:
国立大学法人東京大学(総長:濱田純一、以下、東京大学)の東京大学IRT研究機構長・大学院情報理工学系研究科 下山 勲 教授および高橋 英俊 特任研究員らは、2012年3月5日から8日にかけて京都で開催される国際学会NEMS2012で、「薄膜片持ち梁を用いた塵埃センサ」について発表します。

塵埃センサは、空中に浮遊する埃や花粉などの小さい粒子を検出し、室内のクリーン度を計測します。従来の粒子を検出する塵埃センサは、レーザなどの光学素子を用いて、浮遊する粒子に光を当て、その散乱光を受光素子で計測することで粒子を検知していました。

今回の発表では、厚み 0.3 μmで大きさ200 μm × 200 μmの微小片持ち梁[注1]を粒子の検出素子としています。図5に示すように粒子が片持ち梁に衝突することで、粒子が持っていた運動エネルギーで片持ち梁が歪みます。その歪みを片持ち梁の表面に形成したピエゾ抵抗層[注2]の抵抗値の変化から検出することで、粒子を検出します。光学素子を用いていないため、より小型で低消費電力な塵埃センサを製作できます。

本研究では、図4の写真に示すような塵埃センサを試作しました。センサチップの先端に薄膜の片持ち梁が形成されています。図6に直径35 μmの花粉の粒子が片持ち梁に衝突した際の高速度カメラの連続写真を示しています。図中のt =3.0 msの時間で粒子が片持ち梁に衝突しています。このとき片持ち梁の抵抗値は衝突に合わせて変化し、片持ち梁の共振周波数で振動することが分かりました。この抵抗変化を計測することで、粒子を検出します。このセンサ原理を用いることで、小型で低消費電力の花粉量センサなどに応用することで可能となります。

4.学会での発表タイトル: 
H. Takahashi, T. Kan, K. Matsumoto and I. Shimoyama, “Particle Sensor using an Ultra-thin Piezo Resistive Cantilever,”

5.添付資料: 

20120305_04
図4:センサのコンセプト図

20120305_05
図5:試作したセンサチップの写真

20120305_06
図6:花粉が当たった際の様子

6.用語解説:
[注1] 梁の一端が固定され、他端は動くことができる構造体。
[注2]変形によって抵抗値が変化する素子。金属ひずみ素子の100倍に近い感度を有する。


発表学会:
国際学会NEMS2012(The 7th Annual IEEE International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems,2012年3月5日~3月8日)
NEMS2012 website:http://www.ieee-nems.org/2012/

問い合わせ先:
東京大学IRT研究機構
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 下山勲
URL: http://www.leopard.t.u-tokyo.ac.jp/

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