このページのトップです。
東京大学ホーム > 広報・情報公開 > 記者発表 > 研究成果発表一覧 > 「電力管理に便利なIEEE1888通信規格」の相互接続実験を実施
space

広報

記者発表一覧

「電力管理に便利なIEEE1888通信規格」の相互接続実験を実施

平成24年3月26日

東京大学大学院情報理工学系研究科

1.発表者: 江崎浩(東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 教授)
        落合秀也(東京大学大規模集積システム設計教育研究センター 助教)

2.発表のポイント:
  ◆東大グリーンICTプロジェクト(http://gutp.jp/)が、各社から提供された30種類にのぼるIEEE1888規格(注1)対応の製品・試作品を一堂に会して検証しました。
  ◆2011年度に新規に開発された製品・試作品(レジストリ機能を含む)を扱って相互接続試験を実施しました。
  ◆IEEE1888機器・ソフトウェアを整備するために不可欠な相互接続実験を、大学が中立的な立場で主催しました。IEEE1888の整備が進むことによって、電力問題への解決の糸口になることが期待されます。

3.発表概要:
国立大学法人東京大学(総長:濱田 純一、以下東京大学)の東大グリーンICTプロジェクト(注2) (代表:江崎 浩、以下GUTP)は、オフィス等の設備・電力管理など向けに、企業・大学等で開発されているIEEE1888通信機器・通信ソフトウェアの相互接続実験を実施しました。

相互接続実験は、企業・大学が開発したIEEE1888機器を、実際に他社・他大学の機器と接続してみることで、その製造内容を検証する実験です。今回の検証実験は、2011年度に新規に開発された30種類のIEEE1888試作品・製品を扱いました。また、IEEE1888のレジストリ機能を使った大規模・高信頼運用の実験も、数社の機器を用いて行われました。サービスの負荷分散構成、多重化構成も、ベンダー間を越えて達成できることが実証されました。

IEEE1888通信規格は、オフィスや商業施設等の設備(電力を含む)を、広域インターネットを使って管理できるようにすると同時に、データベースやエンタープライズ・アプリケーションを含む様々な情報システムとの連携をスムーズに実現できるようにします。2011年2月に国際規格として承認され、昨年の震災に関わる電力危機においては、その特性が存分に発揮された形で展開・運用されました。電力問題は、今後も長きにわたり続く社会的な課題であり、今回の検証実験を通して達成されるIEEE1888機器・ソフトウェアの整備は、この問題への解決に少しでも力となることが期待されます。

4.発表内容:
電力管理に不可欠な「電力見える化システム」は、商業施設、オフィスビル、家庭など、多くの場面で利用されるようになってきており、それぞれの節電対策で活かされています。一方で、現在のシステムは、製造会社が独自の方式で開発したものがほとんどであるため、次のような、いくつかの課題を残したままです。まず、他社製品との接続ができないことが多々あります。また、数年後には故障した部品が廃版になっていることもあります。これらの問題は、ユーザ側に導入費用・維持費用・融通性の欠如などの形で負担を強いることになり、最終的に「電力管理」を扱いにくいものにしてしまいかねない状況です。

GUTPは、上記のような問題を解消するために、通信の基盤技術の研究開発と通信規格の標準化を一つの活動の柱としています。今回の相互接続実験で対象となった、IEEE1888は、5年以上にわたる実証的研究開発の上に完成し、昨年、IEEEの国際規格として承認されました。通信基盤を統一的な規格上に整備することで、企業間で(中小企業間であっても)連携可能な電力管理システムを構築できるようになります。これまでの各社の独自通信方式と比べ、統一規格によるオープンな市場が形成されるため、ユーザにとっての選択肢が増大することになります。例えば、故障した機器が廃版となっていたとしても、互換品を活用することができるため、電力管理システム全体の維持も現実的なものになっていきます。

今回のIEEE1888相互接続実験は、上記の背景のもと、複数の企業・大学により持ち込まれた30種類に上るIEEE1888製品・試作品の検証を実施しました。実際に、異なるベンダーの機器を相互に接続し、正しく連携して動作できるかどうか、製造内容に誤りがないかどうかが、確認されました。
今回の相互接続実験には、2011年度に開発されたIEEE1888対応の、
- スマートタップ
- 施設向けの電力メータ
- 人感センサ
- 無線温度センサ
- 組込み表示装置
- Lonworks-IEEE1888通信ゲートウェイ
- 総合施設管理ツール
- 総合施設情報装置
- デマンド監視対応の空調監視装置
- ゲートウェイ・エミュレータ
- レジストリ
- プロトコルテスター
などが持ち込まれました(詳細は図1を参照)。

パソコン上のソフトウェアとして提供されるIEEE1888対応アプリケーションやゲートウェイの他、名刺サイズ程度の組込み装置にIEEE1888通信プロトコルスタックを搭載した機器など、様々な形態の機材が持ち込まれました。すでに製品として市場投入されている、株式会社ユビテックのUbiteq Green Service G-Serverや、セイコープレシジョン株式会社のGreenTALKの接続確認も実施されました。三機工業株式会社は、IEEE1888無線温度センサが、可能な限りすべての組織のソフトウェアや表示装置と連携できることを実証しました。その他にも、今回の相互接続実験を通じて、ZigBee、Modbus (RS232C/RS485)、Lonworks、パルス信号(各種電力メータ)などの機器を、複数ベンダー間で、IEEE1888によって共有できることが実証されています。

また今回の実験では、IEEE1888レジストリ(エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社製)を使って、複数の組織から持ち込まれた機器の相互運用検証が行われました。IEEE1888では、レジストリ機能を用いれば、柔軟に、大規模・高信頼運用を実現することができるようになります。今回の検証は、そのようなシナリオを想定した実験を実施しました。東京大学のIEEE1888ストレージ、株式会社ディー・エス・アイの空調監視システム、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社のIEEE1888 GWが、レジストリを使いながら連携動作し、電力データ管理サービスの負荷分散構成、多重化構成も、ベンダー間を越えて達成できることが実証されました(その他にも、IPv6センサネットコンソーシアム、山口大学、新潟大学の試作ソフトがIEEE1888レジストリとの接続テストに成功しています)。

IEEE1888はテスターの開発も進んでおり、NTTアドバンステクノロジ株式会社製のテスターが今回持ち込まれ、各社の製品・試作品のIEEE1888通信機能のテストが実施されました。また、東京大学が開発したオープンソースの簡易テスターを使い、GreenTALK、Ubiteq Green Service G-Server 、株式会社コムツァイトのゲートウェイ・エミュレータのテストが実施されました。

今回の相互接続実験によって得られた知見は、技術者間で共有され、今後の研究開発・事業展開に生かされることになっています。

参加組織リスト(五十音順)
- IPv6・センサネットワーキングコンソーシアム
- NTTアドバンステクノロジ株式会社
- エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
- 株式会社コムツァイト
- 三機工業株式会社
- 国立大学法人静岡大学
- セイコープレシジョン株式会社
- 株式会社ディー・エス・アイ
- 国立大学法人東京大学
- 国立大学法人新潟大学
- 国立大学法人山口大学
- 株式会社ユビテック

7.問い合わせ先: 
東大グリーンICTプロジェクト発起人代表
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 江崎 浩

東大グリーンICTプロジェクト事務局
〒101-8141 東京都千代田区永田町2-10-3
株式会社三菱総合研究所
担当:中村秀治・吉田薫・橋田理恵

8.用語解説: 
(注1)IEEE1888通信規格
電力メータや空調設備などの施設情報をインターネットの上で扱うためのオープンな通信規格。2011年2月にIEEE(米国電気電子学会)によって標準規格として承認された。次世代のBEMS(ビル・エネルギー・マネージメント・システム)を実現するための要素技術となる。この規格の技術開発に、東京大学が大きく関与している。

(注2)東大グリーンICTプロジェクト(代表:江崎浩,http://www.gutp.jp/
国立大学法人東京大学(総長:濱田 純一、以下東京大学)が、2008年6月9日に大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授を代表として、IPv6 普及・高度化推進協議会と協力して、発足させたグリーン東大工学部プロジェクトを2010年4月1日に全学の活動として、再組織した。
東京大学本郷地区の工学部新2号館(2005年竣工 地上12階 総合研究教育棟)をモデル的な舞台として、個別に運用管理されていた施設の設備制御管理システムを相互接続し、投入・配送・消費エネルギーの状況を収集・可視化し、ITによる省エネとIT環境自身の省エネの両立を実証する。設立発起人(詳細は、「発起人・組織リスト」を参照)を中心に、技術規格標準化関連団体、建設会社、建設設計事務所、ハードウエア・ソフトウエアベンダ、インテグレータ、通信事業者などファシリティーの企画・設計・構築・運用に関連する関連組織からの参加の下、データ取得方法・表現形式などの標準化やファシリティーの運用管理効率の向上などをはじめとして、省エネ実現のモデルケース確立などに取り組んでいる。

参加企業・団体:http://www.gutp.jp/members/
関連出版物:
(1) 江崎、落合『スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011 [東大グリーンICTプロジェクトの「IEEE 1888システム」と節電対策の実践]』、インプレスR&D社。http://r.impressrd.jp/iil/GUTP2011
(2) 江崎「なぜ東大は30%の節電に成功したのか? 」、経営者新書、幻冬舎、2012年3月。

9.添付資料: 

20120326_02
図1: 相互接続検証で作られたネットワーク構成図(一部のみ)

space