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ヒトES細胞を利用したメチル水銀の毒性評価に成功 ―化学物質等の胎児期への影響を迅速に予測することが可能に―研究成果

ヒトES細胞を利用したメチル水銀の毒性評価に成功
―化学物質等の胎児期への影響を迅速に予測することが可能に―

平成24年5月17日

東京大学大学院医学系研究科
国立環境研究所

国立環境研究所と東京大学の研究グループは、発育中のヒト胎児の神経細胞がメチル水銀に対して異常を起こしやすいことをヒト胚性幹細胞(ES細胞)から神経細胞を作る培養方法を利用して証明しました。
本研究成果は、平成24年4月発行の国際学術誌「Toxicology Letters」(電子版)に掲載されました。

メチル水銀(注1)は胎児性水俣病の原因物質であることが知られていますが、病態を引き起こすメカニズムは明らかになっておらず、さらなる研究が必要とされています。国立環境研究所と東京大学の研究グループ(国立環境研究所・曽根秀子主任研究員、東京大学大学院医学系研究科・大迫誠一郎准教授)は、ヒトES細胞(注2)とマウスES細胞から成熟した神経細胞を分化させる培養方法と、数理工学的手法を利用した解析方法を開発し、メチル水銀に対するヒトとマウスの感受性を比較しました。その結果、ヒトの神経細胞は、実験動物であるマウスの神経細胞より形態的に異常を起こしやすいことを明らかにしました。

この手法を利用すれば、メチル水銀のみならず他の化学物質や放射性物質などについても、特に、ヒトにおける胎児期への影響を迅速に予測することが可能となります。

なお、本研究は環境省環境総合推進費(マルチプロファイリング技術による化学物質の胎生プログラミングに及ぼす影響評価手法の開発: H19-H21)、ならびに厚生労働省化学物質リスク研究事業(確率推論型アルゴリズムに対するヒト胚性幹細胞試験データ適用法の標準化に関する研究: H21-H23)の研究費で実施されました。また、この研究成果は平成24年4月発行の国際学術誌「Toxicology Letters」(電子版)に掲載されました。

用語説明
(注1)メチル水銀
脂溶性の物質であるため生物濃縮をうけやすい典型的な毒物。水俣病の原因物質。
(注2)ES細胞:動物の発生初期の細胞から作られる細胞で、すべての組織に分化する分化多能性を保ち、無限に増殖させる事ができる。再生医療への応用が期待されている。

【問い合わせ先】
独立行政法人国立環境研究所 環境リスク研究センター
  健康リスク研究室 主任研究員 曽根秀子

東京大学 大学院医学系研究科疾患生命工学センター
  准教授 大迫誠一郎

【添付資料】
 下記URLで閲覧可能
  国立環境研究所URL:
   http://www.nies.go.jp/whatsnew/2012/20120517/20120517.html


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