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IEEE1888通信装置の接続試験を実施しスマートコミュニティー関連事業の技術基盤を整備記者発表

IEEE1888通信装置の接続試験を実施し
スマートコミュニティー関連事業の技術基盤を整備

平成24年11月26日

東京大学大学院情報理工学系研究科

1.発表者: 江崎浩(東京大学大学院情報理工学系研究科・教授/東大グリーンICTプロジェクト・代表)

2.発表のポイント:
- スマートコミュニティーの通信規格の一つであるIEEE1888に対応した機器を複数の企業、団体、大学等が持ち寄り、機器の相互通信性を検証しました。
- 結果、IEEE1888対応の装置群が誕生し、既存ビルや商業施設等への導入に向けて大きく前進しました。また、大規模なスマートシティーシステムに関する研究が進展しました。
- この成果の一部は、IEEE1888ソフトウェア開発キットに反映され、Webで一般に公開されます。

3.発表内容:
国立大学法人東京大学(総長:濱田 純一、以下東京大学)の東大グリーンICTプロジェクト(代表:江崎 浩、以下GUTP)は、10月17日から18日にかけて、企業・大学で開発されたおよそ30種類にのぼるIEEE1888通信機器、およびその周辺装置を一か所に集め、相互接続試験を実施しました。IEEE1888は、IEEE(米国電気電子学会)が策定した国際標準的な規格であり、ビルやコミュニティのエネルギー監視制御(将来的にはスマートグリッド連携を含む)などを実現するための通信技術です。ビル設備やエネルギー情報のIT化やクラウド連携を促進する技術として、エネルギー関連のベンチャー企業や、BEMSアグリゲーション事業者(*1)などで利用されています。
今回の接続試験では、基本的な相互接続検証に加え、以下の3点に関する検証を行いました。

I. 従来型の設備ネットワーク規格との接続性
新しく開発したBACnet(*2)ゲートウェイ機器、Lonworks(*3)ゲートウェイ機器、Modbus(*4)ゲートウェイ機器(図1)を使うことで、既存ビルの内部でよく利用されている従来型の設備ネットワーク規格との接続性を実証しました。具体的には、空調設備(BACnet規格に準拠)や太陽光発電量計測(Modbus規格に準拠)などがIEEE1888で接続可能になったことを確認しています。

 II. スマートコミュニティーシステムにおけるマルチベンダー連携性
IEEE1888のレジストリ機能を使うことで、複数の組織が運用しているIEEE1888サービス(*5)を自動的に連携させ、一つのサービスとして提供できることを確認しました。これはスマートコミュニティーのように多数の企業がエネルギー管理サービスを提供する状況下で、それらが互いに連携するための必要な要件となっていました。

 III. 組込みボードへの実装性
今回の接続試験では、4種類の組込みボード(具体的には、PICマイコンボード(*6)、Arduino互換機(*7)、mbed(*8) など)にIEEE1888通信ソフトウェアを搭載し、他社機器と通信できることを確認しました。

今回の接続試験によって得られた成果の一部は、IEEE1888ソフトウェア開発キット(SDK: Software Development Kit)に反映されました。最新版のSDKは、東大グリーンICTプロジェクトのWebページ( http://gutp.jp/fiap/kit.html )から、2012年11月26日(月)に公開されます。

表1: 接続実験への参加企業と持込み機器の一覧
企業名 機器
株式会社インターコム MaLion 3ゲートウェイ、簡易ビューア、分析ソフトなど
株式会社大塚商会 PlugWise (スマートタップ)
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
レジストリ、ゲートウェイ
株式会社コムツァイト プロキシ、ゲートウェイ・エミュレータなど
静岡大学 住環境センサ(PUCC)
株式会社システム・ランド 見える化アプリケーションなど
セイコープレシジョン株式会社 GreenTALK (設備・エネルギー監視ツール)
株式会社ディー・エス・アイ Lonworksゲートウェイ、PICマイコンボード
株式会社ユビテック UBITEQ-G-SERVER Next (統合監視・制御ソリューション)
山口大学 スマートコンセント(mbedボードによるゲートウェイ)、Lonworksゲートウェイ(iLon経由)、カメラなど
株式会社リコー スマートタップ
東京大学 BACnet/IPゲートウェイ、Modbusゲートウェイ、パルス計測器、デジタル・アナログ計測器、レジストリ、ストレージ、プロトコルテスター

4.お問い合わせ先:

東大グリーンICTプロジェクト発起人代表
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 江崎 浩

東大グリーンICTプロジェクト事務局
〒101-8141 東京都千代田区永田町2-10-3
株式会社三菱総合研究所
担当:中村秀治・吉田薫・橋田理恵

5.用語解説: 
(*1) BEMSアグリゲーション事業者:経済産業省の「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金制度」によって採択されたエネルギー利用情報管理運営者のこと。BEMSアグリゲータとも言う。契約電力が50kW~500kWの高圧小口電力需要家が、BEMSアグリゲータからクラウド型BEMSを導入すると、補助金が支給される(総額300億円)。
IEEE1888を採用したBEMSアグリゲータのシステム例:http://www.nttdatacs.co.jp/product_html/service/system/remoteone/
(*2) BACnet:ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)のBACnet委員会が策定したビルオートメーション用の通信規格。
(*3) Lonworks:米国エシェロン(Echelon)社が規定したビルオートメーション用の通信規格。
(*4) Modbus:プログラマブル・ロジック・コントローラ向けに開発されたシリアル通信規格。電力メータの自動検針などの用途で広く使われている。
(*5) IEEE1888サービス:IEEE1888のシステムアーキテクチャで想定されているストレージやゲートウェイなどが提供するオンラインの機能。
(*6) PICマイコンボード:Microchip社が市場提供しているワンチップマイクロコントローラを使用して作られたネットワーク通信ボード。
(*7) Arduino:世界的に広く使われているオープンな組込みマイクロコンピュータのプラットフォーム。柔軟なハードウェア・ソフトウェア開発を可能にする仕組みが取り入れられており、小ロット多品種生産を可能にしている。発表当初は教育や研究期間向けで利用されることが想定されていたが、正しい開発ステップを踏めば十分な信頼性を持って動作するため、最近は、多くの事業で使われている。
(*8) mbed:組込み開発をクラウド対応させたボードで、高速なプロトタイプ開発ができることが特徴となっている。

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