このページのトップです。
東京大学ホーム > 広報・情報公開 > 記者発表 > 研究成果発表一覧 > 「中高年者の生活実態に関する継続調査」結果概要
space

広報

記者発表一覧

「中高年者の生活実態に関する継続調査」結果概要

平成25年9月5日

東京大学大学院人文社会系研究科

1.発表者:
白波瀬佐和子(東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻(社会学) 教授)

2.発表のポイント: 
- 本調査は、2010年時点で50歳以上85歳未満の男女を対象に実施した全国調査の回答者3,516人を、2012年に追跡調査したものである。
- 2011年3月11日の東日本大震災から1年後、政治状況においても不安や不満が鬱積した時代に生きる中高年層の生活実態や意識を明らかにした。
- 2014年2月には第3回継続を予定している。
  

3.発表概要: 
現在日本では、他国に類をみない少子高齢化が進行しており、社会における世帯の変化、社会保障制度等に対する個人の意識、資産を含む経済状況の変化を捉えて、社会の実情に応じた伝統的な社会階層論の見直しを試みる必要がある。

東京大学大学院人文社会系研究科の白波瀬佐和子(しらはせ さわこ)教授らは、2012年に「中高年者の生活実態に関する継続調査」(以降、中高年継続調査)を実施し、その結果を取りまとめた。本調査の対象者は、2010年に実施した「中高年者の生活実態に関する全国調査」(50~84歳の男女9,600人を対象)の回答者6,442人のうち、継続的な調査を承諾した3,516人で、そのうち3,193人から回答を得た(回収率90.8%)。調査は郵送によるアンケートの配布と調査員による回収により行った。

中高年継続調査は、これまでの階層研究において見過ごされてきた65歳以上の高齢層の階層格差の実態を50代層と比較しながら、経済状況(所得、資産等)、家族関係、人とのつき合い、生活時間や余暇の過ごし方、そして社会保障制度等に対する意識といった多方面から検討することを可能にした。

本調査の結果では、労働市場との関係は年齢が高くなるにつれて薄れていき、75歳以上の男女ともに2割程度しか仕事に就いていなかった。一方、65歳以上になっても大きく変わらないことの一つが、家事時間の大きな男女差であった。資産については、多くの資産を保有する者ほど震災後の1年間に資産が減少したと回答する傾向にあった。

なお、本調査は日本学術振興会より研究助成を受けた基盤研究(S)(課題番号 20223004)の一環として、行われたものである。

4.発表内容: 
欧米を中心に発展してきた社会学の社会階層論では、労働市場との関係を通してその実態が把握されてきた。しかし、現在日本は他国に類をみない少子高齢化が進行しており、このことは労働市場と安定的な関係を持たない者が増加していることを意味する。そこで、日本の急速な高齢化に対応して、伝統的な社会階層論の見直しを試みることが本調査研究の主たる目的である。

本調査は、2010年に日本全国に在住する50~84歳男女9,600人を無作為に抽出して
実施した「中高年者の生活実態に関する全国調査」の回答者6,442人から、3,516人を対象に実施した継続調査である。調査は郵送によるアンケートの配布と調査員による回収により行った。

調査時点(2012年)で仕事に就いていたのは、回答者の半数弱の47.9%(1,520人)であった。正規職に就いていたのは男性42.8%で、そのうち自営業(家族従業者含む)は3分の1弱であった。一方、女性の就労者は過半数が非正規職に就いており、正規職の割合は2割であった。「いつごろまでいまの仕事を続けたいか」という質問に対して、「健康である限り」現在の仕事を続けたいとする65歳以上の高齢層者は8割以上に上った。

日頃から気をつけている事柄のうち、「食事のバランス」や「規則正しい生活を心がける」といった事柄について、女性は、中年層(51~64歳)、高齢前期層(65~74歳)、高齢後期層(75歳以上)に関わりなく高いが、男性は中年層で「特に気をつけていることはない」と回答した者が15%いた。

生活時間の中で最も男女差が大きい家事時間(育児、介護を含む)を検討したところ、中年女性の平均家事時間は約4時間と中年男性の35分に比べて極めて長かった。女性の長い家事時間は65歳以上の高齢期層に入っても継続していた。男性は、高齢前期層54分、高齢後期層約1時間、と年齢層が高くなるにつれて平均家事時間が長くなる傾向にあるものの、女性の長い家事時間には及ばなかった。家族類型を考慮した場合、高齢後期層女性の夫婦のみ、世帯における長い家事時間が目立った。ここでの家事時間は介護・育児を含むので、高齢の夫を高齢の妻が介護している状況がうかがえた。

余暇の過ごし方を30項目に分けて質問し、(1)ほぼ毎日、(2)週に1~2回、(3)月に1~2回、(4)月に5~6回、(5)年に1~2回、の合計割合を検討したところ、多くの回答者があげた余暇の過ごし方は「スポーツ観戦をする(テレビ観戦を含む)」(65.1%)、「演歌や歌謡曲を聴く」(58.3%)、「盆栽・家庭菜園・ガーデニングをする」(56.3%)、「ウォーキングやジョギングをする」(53.9%)、「国内旅行をする」(50.8%)であった。年齢階層別にみた場合、「インターネット・電子メールをする」は中年層の半数が行うと答えたのに対し、高齢前期層、高齢後期層になるにつれてその値が25.3%、12.9%と大きく減少していた。余暇の過ごし方、情報収集の方法に、興味深い世代差が確認された。

資産の所有について、預貯金、株式等の金融資産や土地、不動産等をいずれも持っていないと回答した者は回答者の16.7%で、中高年層の多くは何らかの資産を持っていた。そのうち、この1年間の資産の変化を質問した結果、預貯金、金融資産ともに多くの資産を持つ者ほど「100万円以上の減少があった」と訴えていた。特に、高齢前期層の間で資産が100万円以上減少と回答した者が多かった。

政府への信頼、社会保障制度(公的年金制度)に対する信頼度を、2010年と2012年で
比較してみた結果、政府を信頼してないと回答した者は63.8%から74.2%へと上昇し、年金制度を信頼していないと回答した者は過半数となった。2010年調査で政府を信頼していると回答した者のうち、5割以上が2012年調査では「信頼していない」と回答していた。年齢階層別にみてみると、現役世代後半の中年層で80.4%、高齢前期層で76.0%が政府を「信頼していない」としていた。

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故以降、社会に対する見方
や考え方、家族や友人、自然や科学に対する見方に変化があったかを尋ねたところ、回答者の56%が「変化があった」と回答した。変化があったと回答した者に、具体的な内容について自由回答形式で尋ねた。そこで得られた回答は、原発への強い不信、原発の安全神話を疑いなく真に受けていたわが身への自戒の念、自然に対する脅威、もしもの時の準備や日頃からの心構えの大切さ、そして、政府への強い不信感であった。また、家族や友達など、絆や助け合いの大切さを実感したとする声も多く聞かれた。想定外の大惨事を前に、一日、一日を大切にし、日々の感謝を忘れないこと、いままで当然と思っていたことが実はそうではないこと、普通の生活が送れることへの感謝の念といった回答もみられた。

本調査は2014年2月に第3回継続調査の実施を予定しており、今後さらなる分析を進めていく。

5.発表雑誌: 
現在、本格的な調査データ分析をすすめており、今後速やかに学術雑誌を中心に研究成果を発表していく。

6.問い合わせ先: 
白波瀬佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻(社会学) 教授 

7.参考情報: 
本調査結果の概要は、プロジェクトのHP(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/ssm_spr/)からもご覧いただけます。

space