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ペタバイト級M2Mデータベースを取扱い可能な超大容量ストレージの開発に着手 ~ビッグデータを活用した次世代のスマート制御を目指して~記者発表

ペタバイト級M2Mデータベースを取扱い可能な超大容量ストレージの開発に着手
~ビッグデータを活用した次世代のスマート制御を目指して~

2013年12月2日

東京大学大学院情報理工学系研究科

1.発表者: 国立大学法人東京大学 大学院情報理工学系研究科 江崎研究室
        株式会社 NTTデータ・ビジネス・システムズ
        シムックス株式会社

2.発表内容:
国立大学法人東京大学(総長:濱田 純一、以下東京大学)の江崎 浩 教授、株式会社 NTTデータ・ビジネス・システムズ(代表取締役社長:羽生田 文晴、以下NTTデータBS)、シムックス株式会社(代表取締役:中島高英、以下CIMX)は、東大グリーンICTプロジェクト・コンソーシアム(ウェブサイト:http://www.gutp.jp/)の活動の一環として、ペタバイト級のビッグデータをM2Mデータベース化して取扱い可能な、超大容量のIEEE1888ストレージ(FIAPStoragePeta)の開発に共同で着手しました(*1, 2, 3, 4)。FIAPとはIEEE1888の別名(Facility Information Access Protocol)で、FIAPStoragePetaには、ペタバイト級の設備情報を蓄積可能なストレージという意味が込められています。

 このM2Mデータベースは、IEEE1888通信規格に対応し、データベース・エンジンにHBaseを採用したものです(図1, 2)。HBaseは、ビッグデータ処理で有名なHadoop(*5)の基盤技術であり、原理的には記憶容量をペタバイト級に拡張することを可能にします。

M2Mデータベースは、ビル設備、電力、気象、防災、リモート・ヘルスケアなどの各分野におけるデータを取り扱うためのものです。これらの分野には多数のセンサが用いられるため、それらから生じる膨大なデータをうまく処理・管理できる高性能なデータベースが必要となっています。例えば、1つのビルには数千~数万個のセンサがありますが、それらから1分間隔で値を収集し記録する場合、ビル1棟だけで1000万件/日のデータとなります。1000棟のビルを対象とすれば100億件/日となり、年間では約3.6兆件に達します。1件のレコードをデータベース上で管理する際およそ300バイト(実績値)を要するとした場合、全データ量はおよそ1.0 ペタバイトになります。

従来の一般的なM2Mデータベースは、これだけ膨大なデータに対応することは不可能でした。そのため、1時間ないし1日単位の、粗い、集約されたデータのみを記録として残すこととし、1分単位の細かいデータは、そもそも収集しないか、データベース上から削除していました。その結果、例えば、過去の分単位で行われる設備運転(デマンド予測およびデマンド制御運転)(*6) が不明となってしまったり、分刻みで集められた電力消費パターンから推定できるはずの設備運転状況(*7) が見えなくなってしまったり、という不利益が生じています。

FIAPStoragePetaを使うと、膨大かつ精細なデータを取扱いできるようになるため、過去の何通りもの「制御計画とその結果」のデータを瞬時に想起でき、現在の場面に適した設備運転を自動実行してくれるようになると期待されます。これは従来から行われている機械的なビル・オートメーションの概念を超越するものであり、真のスマート化にとって必要不可欠な技術であると言えます。

 東京大学およびNTTデータBSとCIMXは、現行のFIAPStorageをベースに、今年度中にHBaseを使って動作するFIAPStoragePetaを開発し、実環境での性能評価試験を実施します。来年度から本格的な運用に入り、複数ビルのデータをFIAPStoragePetaで取り扱います。実際の運用規模は必要に応じて拡張できるようになっており、最初は、数台のラックマウントサーバで運用を開始する予定です。成果物は、最終的にはオープンソース化し、多くの研究者やエンジニアにより継続的な整備が行われる体制を構築する予定です。

3.問い合わせ先:
東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 江崎浩

株式会社NTTデータ・ビジネス・システムズ
第一システム事業本部 ITS事業部 河島 正明

シムックス株式会社 代表取締役 中島 高英

4.用語解説: 
(*1) ペタバイト:容量の単位。1ペタバイトは1024テラバイト。2の50乗バイト。
(*2) M2M:Machine-to-Machineの略。電力、気象、防災、交通、農業、ヘルスケアなどの分野において、その分野に特化したセンサ機器を投入し、ネットワーク回線に接続することで、遠隔からこれら設備の監視・制御を行うシステムの形態。
(*3) ビッグデータ:それぞれのデータ単位は小さいが、これらが桁外れに大量に集まったもの。大量に集まることで、地球環境、社会情勢、市場動向、生活環境、機械寿命などをデジタル統計の世界で推定できるようになる(内容は、データの起源に左右される)。また、大量のデータ(=経験)をベースに行動計画を立てるシステムを構築すれば、最適な計画を立案する「知能にも似た体」として振る舞うこともある。
(*4) IEEE1888:Ubiquitous Green Community Control Network。ビルエネルギー管理システム(BEMS:Building Energy Management System)をはじめとする、スマートシティーの構築に必要なコミュニティの監視制御を担う通信規格であり、2011年にIEEE(米国電気電子学会)での標準化が完了している。
(*5) Hadoop:数千台のサーバやペタバイト級のデータ処理を瞬時に実現できるビックデータを支える代表的な技術。HBaseはHadoopの要素技術。
(*6) デマンド予測およびデマンド制御運転:利用可能な電力やガスなどの時間単位の消費量(=デマンド)を越えないように、消費側で設備運転を調整すること。将来的なスマートグリッドでは、ほぼすべての電力消費者に求められること、となっている。30秒ないし1分単位のきめ細かな需要予測および制御によって成立するものであり、正しく運用するには多くのノウハウを必要とする。
(*7) 電力消費パターンの設備運転状況の推定:1分単位に細かく消費電力を計測すると、その消費パターンから、どのような機器(プリンタ、PC、冷蔵庫、照明など)がどのように運転されたかを、ある程度推定できる。

5.添付資料:

20131202_01

図1: FIAPStoragePetaのシステム構造

 

20131202_02

図2: IEEE1888アーキテクチャにおけるFIAPStoragePetaの位置付け
(APP: アプリケーション, GW:ゲートウェイ)

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