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ガラス基板上に低コストでLEDディスプレーを作製する技術を開発研究成果

記者会見「ガラス基板上に低コストでLEDディスプレーを作製する技術を開発」

平成26年6月23日

東京大学生産技術研究所

 

1.会見日時: 2014年 6月23日(月) 14:00 ~ 16:00 

 

2.会見場所: 東京大学生産技術研究所総合研究実験棟An棟大会議室(An301/302)別紙参照
         〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1
         http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/access/access.html

 

3.出席者: 藤岡 洋(東京大学生産技術研究所 教授)

 

4.発表のポイント:
  ◆安価なガラス基板上に低コストでLED(*1)ディスプレーの作製を可能とする技術を開発した。
  ◆原子が不規則に並んだ(非晶質)ガラス基板上にRGBのフルカラーのLEDを実現した。
  ◆LEDの製造コストが劇的に安くなり、液晶ディスプレーや有機EL(*2)にとって代わる、高性能・高信頼性のディスプレーや通信機能を備えた面発光照明などに応用されることが期待される。

 

5.発表概要: 
これまで無機半導体を用いた発光ダイオード(LED)は高価なサファイア等の単結晶基板(*3)の上に、MOCVD法(*4)とよばれる生産性の低い手法で形成されていた。このため、価格が高く、細かく切ってパッケージに入れた小さなLEDチップとしてのみ利用されてきた。これまで東京大学生産技術研究所の藤岡洋教授らは、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「CREST」の支援を受けて、安価なガラス板を基板上に、スパッタリング法(*5)と呼ばれる生産性の高い製造方法で窒化物半導体(*6)のLEDを作製する技術を開発してきた。また、従来、窒化物半導体のLEDでは紫外域から青色、緑色までの光は発光するが、赤色で発光するものの作製は困難とされていた。


今回、藤岡教授らは、半導体形成時の温度を下げることにより、青、緑、赤の3原色のLEDを作製することに成功した。ガラス基板は原子が不規則に並んだ非晶質と呼ばれる物質で、この上に結晶質の窒化物半導体を積むことは困難である。そこで、今回、ガラス基板と窒化物半導体の間に炭素の2次元物質であるグラフェンの層を挿入した。グラフェンは非晶質基板の上でも一定の方向を向いているため、良質な結晶の窒化物半導体を形成することが可能となった。この高品質な窒化物半導体を用いて、今回RGBフルカラーのLEDの試作に成功した。


本成果により安価なガラス板上に信頼性の高いフルカラーのディスプレーを実現できるようになり、表示部分を変形することができるディスプレー(フレキシブルディスプレー)にも応用可能である。また、窒化物半導体のLEDは応答速度が速いため、通信機能を備えたディスプレーなどへの展開も期待される。この他にも、LEDは高価なため点光源としてのみ利用されてきたが、安価な本技術を用いるとやわらかな光源である面発光照明へ応用される可能性も高まる。本技術は単に現在広く使われている液晶 (*7)や有機ELを代替する技術としてだけではなく、その用途の幅は広いといえる。

 

■従来技術との比較1:(液晶との比較)■
従来の液晶ディスプレーに比べ、自発的に発光する素子のため、①高いコントラストを持つ、②光源が不要で素子を薄くできる、③高速の応答が可能である、④光による高速通信が可能である、⑤広い視野角を持つなどの特徴を持つ。


■従来技術との比較2:(有機ELとの比較)■
  同様な特徴を持つ発光素子としては、有機ELがあげられる。しかし有機ELは製造コストを下げるのが困難で利用が広がっていない。本提案の素子は、生産性の高いスパッタリング法を用いて製造できるため①製造コストが安いという特徴がある。また、無機物を用いているため、②有機ELより寿命が長く安定性が高い、③酸素や水分の侵入を防ぐ特殊なパッケージが不要、④応答速度が速く無線通信機能も加えられるといった利点がある。

 

6.発表雑誌: 
雑誌名   :「Scientific Reports」6月23日
論文タイトル:Fabrication of full-color InGaN-based light-emitting diodes on amorphous substrates by pulsed sputtering
著者    :孫政佑、太田実雄、上野耕平、小林篤、*藤岡洋
J.W. Shon, J. Ohta, K. Ueno, A. Kobayashi, H. Fujioka
DOI番号   : 10.1038/srep05325
アブストラクトURL:http://www.nature.com/srep/2014/140623/srep05325/abs/srep05325.html

 
7.問い合わせ先: 
東京大学生産技術研究所 教授 藤岡 洋
http://fujioka.iis.u-tokyo.ac.jp/

 

8.用語解説:
*1 LED:発光ダイオード(Light Emitting Diode)の略。半導体に電圧を加えることによって電気エネルギーを光エネルギーに変換する。
*2 有機EL:有機物を発光層とする発光素子。一部のスマートフォンの表示素子として用いられている。
*3 単結晶基板:原子が周期的に配列した材料。価格が極めて高い。ガラスなどの非晶質は原子の配列に規則性はないが、価格が安く、液晶ディスプレーなどの基板として用いられる。
*4  MOCVD:有機金属気相成長法(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)の略。窒化物半導体の素子に一般的に利用されているが、生産性が低く、コストが高い。
*5 スパッタリング:薄膜を生産性良く製造する手法の名称。集積回路や液晶テレビ等の製造に広く使われている。
*6 窒化物半導体:窒化ガリウムを代表とする半導体。LEDやレーザー、パワーデバイス用の材料として広く用いられている。
*7 液晶:LEDなどの光源から出た光をシャッター機能によって画像を作り出す素子。現在、テレビとして最も一般的に用いられている技術。応答速度が遅く、視野角が狭い、コントラストが低いなどの問題がある。また、液晶には光源としての機能はないため、液晶ディスプレーにはLEDや冷陰極管などの光源が別に取り付けられている。

 

9.添付資料:

 

  사본 -IMG_1068-3.jpg IMG_1022.JPG 사본 -IMG_1056-2.jpg

 

図1:ガラス板上に作製したRGBフルカラー発光ダイオード(LED)の構造と発光の様子

 

図2:ガラス板上に作製した緑色発光ダイオード(LED)の発光スペクトル

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