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折紙を応用したハニカムコアの新しい製造方法の実証に成功

平成26年11月25日

東京大学生産技術研究所

 

1.発表者: 斉藤一哉(東京大学生産技術研究所 機械・生体系部門 助教)

 

2.発表のポイント: 
  ◆翼形、波形など特殊な断面形状を持つ蜂の巣様の構造(ハニカムコア)をオンデマンドで製造できる新しい製造方法を実証し、アルミ合金製パネルの試作に成功しました。
  ◆これまでコストのかかる2次加工で製造されていた特殊断面ハニカムコアを、折紙のように一枚のシートから直接立体化する新しい製法で作製できるようになりました。
  ◆ハニカムコアを使用する際のデザインの選択肢を大幅に向上させたことで、ハニカムコアの優れた特性をより広範な製品に応用することが可能となります。

 

3.発表概要: 
  軽量で高強度、高剛性を実現できるハニカムコア(※1)・サンドイッチパネルは航空機・宇宙機から建材、家具までさまざまな工業製品に使われています。 ハニカムコアは現在、半世紀程前にイギリスで開発された「展張式(※2)(図1(a))」と呼ばれる手法で製造されていますが、この方法では平板パネルしか作製できず、曲率を付けたり、テーパー(※3)(図1(c))を付けたりする際はコストのかかる2次加工が必要となるため、使用できる形状に多くの制限がありました。
  東京大学生産技術研究所の斉藤一哉助教は、「折紙式」とも呼ぶべき新しいハニカムコアの製造方法を実証しました。これは1枚の紙から折り曲げのみでさまざまな立体形状を作り出す折紙の手法を応用し、周期的なスリット・折線を入れた1枚のシートからハニカムコアを立体化する方法(図1(b))で、展開図のパターンを変えることにより平板だけでなくテーパー形(図1(c)) や翼形、曲面パネル(図1(d))などさまざまな形状のハニカムコアを直接製造できる利点があります。今回、斉藤助教は城山工業株式会社、株式会社フジカケと共同でこの「折紙式」ハニカム製造装置のプロトタイプを開発し、波形や曲率パネルなどさまざまな形状のアルミ合金製ハニカムコアの試作に成功しました(図2)。
  今回の研究開発で折紙式ハニカムコア製造法の具体的な加工方法を確認することができました。産業化がなされれば形状の異なるさまざまな製品について安価な軽量化手段を提供することができるだけでなく、遮音・吸音、断熱性などハニカムコアの持つさまざまな優れた機能特性を広汎な製品へ利用可能となります。
  なお、本研究は科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の支援を受けて行われました。

 

4.発表内容: 
  軽量で高剛性・高強度を実現できるハニカムコア(※1)・サンドイッチパネルは、航空機用途を中心に開発がなされ、製作加工技術の発展とともに鉄道車両やレーシングカー、建築物や家具にまで応用が広がっています。このハニカムコアは半世紀程前にイギリスで開発された「展張式(※2)(図1(a))と呼ばれる手法で現在も作製されていますが、この方法では平板パネルしか作製できないため、パネルに曲率を付けたり、テーパーを付けたりする際は平面パネルを曲げたり、切削加工することによって対応していました。しかしながらハニカムコアは曲げられた際に鞍形に変形するため屈曲性が悪く、さらに切削加工するとセル壁の倒れ、バリの発生(※4)等によって表面精度の低下がおきる問題があります。そのため加工には特殊な装置と熟練した作業者が必要となるうえ、製品ごとに冶具を製作しなくてはならず、加工コストが非常に高い欠点がありました。テーパー形ハニカムコアや曲率を持ったハニカムコア等の特殊断面ハニカムコアを安価に製作する手法が開発されれば、多くの潜在的需要を発掘できると考えられ、航空宇宙分野、建築分野のみならず大きな市場を開拓できると期待されます。


東京大学生産技術研究所の斉藤一哉助教は「折紙式」とも呼ぶべき新しいハニカムコアの製造方法(図1(b))を実証しました。これは1枚の紙から折り曲げのみでさまざまな立体形状を作り出す折紙の手法を応用し、周期的なスリット、折線を入れた1枚のシートからハニカムコアを立体化する方法です。この手法の利点は展開図のパターンを変えることにより、平板だけでなくテーパー形や翼形、曲面パネルなどさまざまな形状のハニカムコアを直接立体化できる点にあり(図1(c), (d))、既に任意の断面を立体化するための展開図の設計方法が斉藤助教らによって明らかにされていました。今回、斉藤助教は城山工業株式会社、株式会社フジカケと共同でこの「折紙式」ハニカム製造装置のプロトタイプを開発し、波形や曲率パネルなどさまざまな形状のアルミ合金製ハニカムコアの試作に成功しました。さらに立体化されたハニカムコアに株式会社フジカケの独自技術である減圧接着法(※5)によって表面材を貼りつけ、ハニカムコアの最終製品であるサンドイッチパネルへの加工にも成功しています。


今回の研究開発で折紙式ハニカムコア製造法の具体的な加工方法を確認できたことにより、用途や意匠に合わせてさまざまな形状のハニカムコアを1点ずつオンデマンド製作する革新的なデジタル・ファブリケーションシステムの開発が可能となります。これによって形状の異なるさまざまな製品について安価な軽量化手段を提供することができるだけでなく、遮音・吸音、断熱性などハニカムコアの持つさまざまな優れた機能特性を広汎な製品へ利用できる可能性が広がります。また折紙式によって「端材ゼロ」で目的の形状を作り出せる点も従来技術にない注目すべき特徴です。製品そのものの軽量化と併せて、資源利用の大幅な効率化が可能となり、持続可能な社会の形成のための大きな武器となります。産業化がなされれば、折紙とものづくりを融合させたスマート・ジャパン技術の一つとして世界をリードできると期待されます。


なお、本研究は科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の支援を受けて行われました。

 

5.問い合わせ先: 
東京大学生産技術研究所 機械・生体系部門 助教 斉藤一哉 (さいとう かずや)


6.用語解説:
(※1)ハニカムコア
アルミシートや紙、複合材などを蜂の巣状に成形したパネル。表面にアルミ合金板や複合材板を貼りサンドイッチパネルとして使用することで軽量で高剛性・高強度を実現できる。航空宇宙産業ではなくてはならない構造体だが、近年では建材や家具にまで用途が広がっている。

(※2)展張式
ハニカムコアの代表的な製造方法。周期的に接着剤を塗布したシートを積層させたブロックを展張させて蜂の巣状に成形する。

(※3)テーパー
厚さが先細りになっている形状のこと(図1(c))。建築物では庇(ひさし:日除けや雨除け用の小型の屋根)などに、テーパーのついたパネルが多く使われている。

(※4)セル壁の倒れ、バリの発生
ハニカムコアを構成する6角柱は厚さ0.03mm~0.1mmと非常に薄い金属箔で作られているため、通常の金属ブロックのように切削加工しようとすると加工面に不要な突起(バリ)が生じたり、6角柱の縁(セル壁)がきれいに切断できずに内側に倒れて折れ曲がったりするため、表面精度が低下する問題がある。

(※5)真空減圧接着法
ハニカムコアに表面材を貼る方法で、サンドイッチパネル内部の空気を減圧することで表面板を接着する。株式会社フジカケで開発。

 

7.添付資料:
こちら(PDFファイル)をご覧ください。

 

8.参考文献: 

  今回の成果そのものではありませんが、本成果の基となった「折紙式ハニカムコア作製法」に関しては、以下の雑誌に論文が掲載されています。論文[1]は平成25年に米国機械学会の37th ASME Mechanisms and Robotics ConferenceのBest Paper Awardを受賞し、論文[3]は平成20年度日本機械学会賞(論文)を受賞しています。

[1] “Manufacture of Arbitrary Cross-Section Composite Honeycomb Cores Based on Origami Techniques”, Kazuya Saito; Sergio Pellegrino; Taketoshi Nojima, ASME Journal of Mechanical Design, 2014; 136(5):051011-051011-9. doi: 10.1115/1.4026824
(URL:http://mechanicaldesign.asmedigitalcollection.asme.org/article.aspx?articleid=1831332&resultClick=3)

[2] 「任意断面を持つハニカムコアの展開図設計法」,斉藤一哉; 野島武敏,日本機械学会論文集A編, Vol.78, No.787,pp.324-335, 2012年3月.doi: 10.1299/kikaia.78.324
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaia/78/787/78_787_324/_article/-char/ja/)

[3] “Development of Newly Designed Ultra-Light Core Structures”, Taketoshi NOJIMA, Kazuya Saito, JSME International Journal Series A, The Japan Society of Mechanical Engineers, vol.49, pp.38-42, January 2006. doi: 10.1299/jsmea.49.38
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmea/49/1/49_1_38/_article)


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