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iPS細胞などを用いた臓器再生に関する基本特許が日本で成立記者発表

iPS細胞などを用いた臓器再生に関する基本特許が日本で成立

平成27年1月28日

国立大学法人 東京大学
株式会社 iCELL

 

東京大学医科学研究所の中内啓光教授等の研究成果から生まれた、「動物体内にヒト臓器を作製する技術」につきまして、東京大学が出願人となり複数の特許出願を行ってまいりましたが、このたびその基本特許といえる、iPS細胞などを用いた臓器再生に関する特許が特許査定を受け、1月13日付で登録料を納付しました。この登録料の納付日より2週間程度で日本国特許庁において特許が成立します。
なお、当該特許は株式会社iCELL(本社:東京都港区 代表取締役社長:三輪玄二郎)が独占的実施権を保有しています。

成立した特許の情報は以下のとおりです。

出願番号:特願2014-188113
発明の名称:iPS細胞などの多能性細胞とBLASTOCYST COMPLEMENTATIONを利用した臓器再生法
権利者:国立大学法人 東京大学
ライセンス先:株式会社iCELL

特許査定となった技術・方法の具体的な内容:
臓器不全症の治療には臓器移植や人工臓器が主に用いられていますが、ドナー不足や生体適合性の問題など解決すべき点が多く、移植可能な臓器を患者自身の細胞から作ることが再生医療の重要な目標となっています。しかし臓器のような三次元的な構造を成体外で再現することは極めて困難です。
本特許は、「BLASTOCYST COMPLEMENTATION(胚盤胞(はいばんほう 注1)補完法)」という技術を用いて、ヒトとは異なる動物の個体に、たとえばヒトの臓器を作らせる、という方法を提供するものです。具体的には、目的とする臓器ができないように操作した動物の胚盤胞に、正常な多能性細胞(たとえばヒトのiPS細胞など)を注入し、これを仮親となる動物の体内に戻し成長させ、目的とする臓器が多能性細胞由来(たとえば患者自身のiPS細胞由来)の細胞だけからなる臓器を作製する技術を権利化したものです。さらに本特許では、上述の臓器作製方法に加えて、このようにして作製された臓器や動物に対しても権利が及びます。
今後の当該特許の活用方法や研究予定:
本特許は、株式会社iCELLが独占的実施権を保有しています。東京大学が保有する特許のライセンス業務を担う株式会社東京大学TLOを介して本ライセンスの契約が締結されました。株式会社iCELLは、本特許ならびに関連するその他の技術の権利化・特許の維持ならびに当該技術の普及を目指します。
また東京大学医科学研究所の中内研究室は、他の協力研究機関と連携し、当該技術の臨床応用にむけた基礎から応用研究までを推進していきます。

関連特許の情報
今回成立した特許は、国際出願(PCT/JP2009/064676、国際公開WO2010/021390、国際出願日2009年8月21日)について日本国への移行手続きをした特許出願(特願2010-525721、親出願)をもとに2014年9月16日に分割した特許出願(特願2014-188113)に対して特許査定がなされたものです。なお親出願もこのたび、特許査定を受けました。
さらに、本技術を実用化する上で重要となる以下の技術についての特許出願も、ほぼ同時に特許査定を受けています。これらの特許についても株式会社iCELLが独占的実施権を保有しています。

出願番号:特願2009-554423
発明の名称:遺伝子改変による致死性表現型を持つ動物の繁殖用ファウンダー
動物作製法
権利者:国立大学法人 東京大学
ライセンス先:株式会社iCELL

特許となった技術・方法の具体的な内容:
前述の基本特許(特願2014-188113)で説明したように、目的の臓器を再生する動物個体は、元来目的とする臓器を欠損しているため成長できず、死に至ることもあります。しかし先の基本特許での技術を用いて、多能性細胞を注入することにより欠損した臓器を再生できることから、本来であれば死に至る動物が正常に発育し、子孫を残すことができるようになります。本技術により、臓器を欠損した動物が正常に成長するため、その作製が効率的に行われるようになるとともに、胚盤胞補完法の実施が容易となります。
なお本特許は、国際出願(PCT/JP2009/053232、国際公開WO2009/104794、国際出願日2009年2月23日)について日本国への移行手続きをした特許出願(特願2009-554423)に対して特許査定がなされたものです。

【用語解説】
胚盤胞:受精卵の発生段階の一つで、着床する前の受精卵の一種で、受精卵は受精からはヒトではおよそ5-6日目にこの段階をむかえます。

【本件に関する問い合わせ先】
東京大学医科学研究所附属幹細胞治療研究センター
教授 中内 啓光(ナカウチ ヒロミツ)
客員研究員 渡部 素生(ワタナベ モトオ)

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