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言語学


(1)言語学専修課程で学ぶこと
 言語学専修課程では「言語」を研究対象とします。ではそれが、同じく言語を対象とする、文学的あるいは哲学的な研究とどう違うかというと、言語学的な研究では、言語を科学的な研究対象として扱うことが求められるのです。すなわち、研究の結果は、客観的に検証できるような形で提示されなければなりません。これは、個々の言語を扱う場合でも、また、広く言語一般を扱う場合でも(その時にも個別言語のデータが基礎となりますが)、忘れてはならない大切な点です。

 言語学専修課程進学の必要条件は、言語について深く調べることに興味をもつことですが、研究対象として選ぶ言語に制限はありません。日本語・中国語・欧米のいくつかの言語のように比較的身近なものから、アジア・アフリカ・南北アメリカ・太平洋地域の、ほとんど誰もその名を聞いたことのないような、そして、今まで誰も研究を試みたことのないような言語、さらにはまた、最後の話し手がごく少数残っているだけで、まさに消滅寸前の状態にあるといえるような言語まで、本人の興味により自由です。また、ある程度の言語資料を残したまま既に消滅してしまった言語を扱うことも可能です。研究対象だけではなく研究方法にも様々なものがありますが、学部専門課程においては、将来どのようなアプローチをするにせよ必要となる基礎的な研究方法の訓練を受け、そういう訓練を通じて、自分に最も適した分野を自ら選んで行くことになります。

 哲学・文学・歴史などの分野に興味のある人は、専修課程に進学する前に、ある程度自分で専門書を読んで既に予備的な知識を身につけることが多いでしょう。しかし、言語学に関して、それはなかなか困難です。本屋などで手に入る書物で言語学について独学した人は、実際に言語学研究室で学び始めると、それまでに抱いていたイメージの変更を余儀なくされると思います。これには色々な理由が考えられますが、上述の「言語を科学的な研究対象として扱う」ような研究の書籍は、しばしば流通ルートに乗りにくく、したがって、それを目にする機会も少ない、ということが一つでしょう。それでも最近は言語学の専門書を一般の書店で目にする機会もふえましたが、言語を研究対象として扱うための前提や手続きにまで立ち戻って基本的な知識を与えてくれる本は少なく、特定のテーマを扱うものに限られる傾向があるようです。また、全国の大学で、言語学を専門課程として持つところがまだ必ずしも多くないことも、言語学的知識の普及に障害となっています。そういうわけで、言語学専修課程に進学する学生は、ほぼ全員が白紙の状態からスタートする、といっても過言ではありません。

(2)言語学専修課程を卒業するために必要な科目と単位
 言語学専修課程では、「言語学概論」、「音声学」、「比較言語学」の3つの講義を必修科目としています。言語学概論は言語学の基本的な考え方と、音声・音韻・文法・意味など言語学の諸分野の基礎知識を与えるものです。平成21年度は言語学概論(I)と言語学概論(II)として冬学期に開講されますので、2年生のうちに履修するようにしてください。音声学は世界の言語で用いられる様々な言語音を聞き取り、発音し分け、また正確に記述する方法を学ぶ授業です。比較言語学は、言語学のうちの重要な分野の一つである歴史・比較言語学を扱います。この三つはあらゆる研究の基礎になりますので、必ず3年次までに取るようにして下さい。

 言語学専修課程を卒業するためには、まず、これら必修の3科目のほか、「言語学演習」が12単位必要です。その際、必ず2年以上(4学期)に分けて取る必要があります。要するに、毎学期1つ以上演習を取らなければなりません。これに加えて、「言語学特殊講義」を12単位、その他に文学部(言語学専修課程のものを含む)ないしは他学部の授業から36単位を取らなければなりません。

 さらに、卒業のためには、以上に加えて、「卒業論文」による12単位が必須です。卒業論文は、単に読んだものをまとめるというだけでは不十分で、最初に述べた「言語の科学的研究」によって、言語学に何か新しい知識をもたらすものであることが期待されます。

 言語学専修課程に進学した学生は、あまり狭く専門を限ることなく、なるべく広範囲の授業を受け、演習に参加することが望まれます。これは、繰り返しになりますが、ほとんどの人にとって言語学を学ぶのが初めての経験であるためで、特に、大学院に進学しようとする場合には、少なくとも言語学の代表的な分野について、ある程度の知識を持っていることが不可欠です。

(3)教員の専門分野
 言語学研究室の教員はそれぞれ専門を異にしており、日本語諸方言のアクセント、オーストラリア原住民語、インド・ヨーロッパ語の比較言語学、チュルク諸語、認知言語学、リテラシー研究と、様々な分野の専門家が研究・教育を行なっています。

 また、多岐にわたる言語学の諸分野をできるだけカバーするために、言語学研究室以外の教員の授業科目を、必要な範囲で、「言語学演習」または「言語学特殊講義」として認定するほか、毎年数人の非常勤講師を他大学からお招きして、言語学特殊講義を開講しています。参考のために平成20年度と平成21年度の非常勤講師の授業の例をあげますと、平成20年度は「日本語文法研究―日本語学と日本語教育の観点から―」「アイヌ語」「音韻論と音韻理論」「社会言語学」「言語の形と意味機能」が開講されました。平成21年度は「日本語教育と日本語文法」「日本手話」「太平洋地域の言語と文化・社会」「コンテクスト主義とトートロジー」「バスク語」「セイリッシュ語概説」「多民族国家ネパールの多言語状況」「シベ語口語入門」が開講される予定です。

(4)進路その他
 学部卒業生の進路の割合は毎年様々ですが、最近は約3分の1が大学院進学を目指し、残りが社会に出る道を選びます。就職先は、公務員・放送・出版・一般の商社など、どの専修課程にも共通する分野に加えて、コンピュータなど情報関係の会社のように、多少言語学と関係する業種も以前から見られます。大学院に進学した学生の中には、それぞれの選んだ言語の研究や言語学の特定の分野の研究のために、外国留学する者も毎年出ています。

言語学演習室。窓から大講堂をのぞむ 最後に、「学生室」の活用ということを強調したいと思います。言語学科の授業の大半は、文学部3号館6階の言語学演習室で行われますが、同じ6階には、助手室と並んで、学生が勉強のために使える学生室があり、ここには各種辞書、新着雑誌、コピー機、プリンタ、数台のパソコンと音声分析装置があり、自由に利用できます。また,ノート型コンピュータを接続してインターネットを利用するための有線・無線のLANの端末もあります.これらのパソコンで電子メールやWorld Wide Webの利用を行なうほか、キャンパス内のネットワーク(UTNet)を通じて情報基盤センターに接続したり、総合図書館のオンライン検索を利用したりすることが可能です。また言語学研究室は独自のサーバーをもち、学生はここに登録することによって  username@gengo.l.u-tokyo.ac.jp のメール・アドレスを持つことができます。教員・学生の研究・教育活動やさまざまな行事は、言語学研究室のWebページ http://www.gengo.l.u-tokyo.ac.jp/indexj.html で見ることができます。個人のページを作成してここに公開することができるだけでなく、言語学研究室全体のページの作成にも、希望者は参加することができます。

 学生室はまた、日常的に同輩・先輩・後輩が接触して自由に情報交換をする場でもあります。基本的な文献の探し方やパソコンをはじめとする機械類の使い方、Webページの作り方を教わることもできるでしょうし、興味の方向を異にするもの同士の会話から啓発されることも多いでしょう。なお、教員の研究室も同じ階にあるので、学生は適宜容易に指導が受けられます(ただし前もって予約をしてください)。学生室を中心としたこのような学生生活は、教養課程の場合との大きな違いであり、積極的な活用が期待されます。

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