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社会心理学
社会心理学は,社会学と心理学との境界領域として,社会的環境における人間の心理と行動を研究する経験科学である.そのため,社会的状況における個人の行動,集団行動,組織における人間行動,文化的歴史的に規定された人間行動の研究など,幅の広い研究領域を含んでいる.
社会心理学研究室では,実証的な研究が行われており,学部教育でも,実証的なアプローチに重点が置かれている.そのため,社会心理学的な実験的手法を学ぶための演習,および社会調査法を学ぶための演習が,ともに必修となっており,データの統計処理のため,数学や統計学の基礎知識も必要である.また,隣接科学として心理学,社会学はもとより,政治学,経済学,文化人類学,生物学,精神医学などの幅広い知識が役に立つことが多い.
各教員の研究領域および担当授業の概要は以下のとおりである.
山口 教授 実験社会心理学を専攻とする.研究で用いる方法は,研究対象者(被験者と呼ばれる)の置かれる状況を研究者(実験者と呼ばれる)が意図的に操作し,条件によって認知や行動がどのように変化するかを調べるというものである.一般的に言って、人の社会的行動は文化による変動が大きい.そのため,一つの文化で見いだされた傾向が,他の文化では全く見られなかったり,逆の傾向が存在したりすることがよくある.そのため,社会的行動の文化を超えた一般性を吟味したり,変動を分析したりすることが重要となる.
現在の主な研究のテーマの一つは,集団主義傾向が,その人の認知傾向や行動とどのように関わっているかを比較文化的に検討することである.また,日本人の自尊心の高さやそれを測定する方法について、比較文化的な視点から検討している。さらに、日本人に固有の傾向と考えられてきた「甘え」についても、実験的な手法をもちいて比較文化的な研究を行っている。日本人で得られた結果の一般性を調べるために,他のアジア諸国や米国およびヨーロッパでデータの収集を行っているわけである.具体的には,日本人に特有と考えられてきた,集団主義的傾向や「甘え」の文化を超えた一般性などについて研究を進めている.
授業科目では,「社会心理学概論」「実験社会心理学実習」「社会心理学実験実習」の第2部および第3部を担当している.実験社会心理学演習では,社会的行動や認知について,英文の論文を講読しながら議論を進めていく.さらに,それと平行して,さまざまな実験および社会的データの解釈について考える問題を解く練習を行う.社会心理学実験実習「社会心理学実験実習:第2部,第3部」では実験材料の作成,実験の実施,データの解析まで履修者自身の手で行うことが求められる.
池田 教授 専門は応用・認知社会心理学である.人々の持つ「社会のイメージ」や「社会的なリアリティ感覚」がどのようにその社会的行動に影響するかに関心を持っている.それには従来の学問的常識と対立するという側面もある.たとえば,選挙で人々は政治的なリアリティ感覚に基づいて投票するが,これは政治学者の考える投票行動とは大きく異なっている.またインターネット社会のリアリティは,マスコミュニケーション研究や対人コミュニケーション研究の常識にそぐわない事象を多く含んでいる.これらの研究を理論的かつ実証的に進めることをメインの専門としている.
担当する社会心理学概論「社会心理学入門:第2部」では,半ば第1部の応用編,半ばマクロな社会心理学の概説を行う.この講義では,私たちが社会に対して持つイメージ,またそのイメージに基づいて行う行動とその社会的なインパクトについて議論することを目的とし,対人コミュニケーション,ソーシャル・ ネットワーク,マスコミュニケーションといった一連のコミュニケーション関連テーマを論ずる一方,投票行動,世論,消費者行動,価値意識といったマイクロ=マクロ・リンケージに関わる領域を検討する.さらに,私たちの「常識」やステレオタイプ,あるいは俗信を成り立たせている社会的現実感の問題についても議論していく.
応用社会心理学演習「リアリティの社会心理学」では,認知社会心理的なアプローチがいかにわれわれの日常的な認識と関わるのか,いくつかの代表的な領域の中で議論していく.基本的には,われわれの日常のリアリティを支えるさまざまな社会心理的メカニズムについて,どのような実証研究が可能かを多面的に検討可能な文献をもとに議論を展開する.
唐沢 准教授 人や集団などの「社会的刺激」に対する情報処理や社会的な場面での情報処理過程を扱う,「社会的認知」領域の研究を行っている。特に,集団に対するステレオタイプ的な信念が後続の対人判断に与える影響を検討したり,苦境にある他者に対する反応を,そのような状況に陥った責任の判断や対人感情,支援や非難といった対人行動の観点から分析することを通して,「既存の知識」や「感情」が他者に対する理解をどのように方向付けるのか,また,対人行動にどのように影響するのかを論じている.
授業科目では,「社会心理学概論」「実験社会心理学演習」「実験社会心理学実習」「社会心理学実験実習」の第1部,第2部および第3部を担当している.
社会心理学概論では,社会的認知研究を中心に,これまで行ってきた研究を紹介する.社会心理学実験実習では,研究テーマや研究仮説に即した実験材料の作成,実験の実施,データの解析を行いながら,実験による研究手法を習得する.実験社会心理学演習では,社会的動機・感情と対人判断・対人行動との関連に焦点を当てた英文テキストを購読しながら,私たちが他者に対するリアリティを構築する過程について議論する.また,社会的な情報処理過程を解明する上での,理論やモデルの役割,個人差要因を考慮する意義,社会的認知に関する知見を現実の社会問題の解決に応用する可能性と限界についても考察する.
スティール専任講師 現在研究テーマには,政治行動,市民行動規範システム,価値の形成,ジェンダーの定性的で定量的な研究,投票行動などがあるが,最新のものにマスメディアと世論に関する研究がある.研究は主に二次データの定量分析に基づいて行うが,質問事項に対する市民の応答をよりよく理解する手段の一つとして,フォーカス・グループも採用している.具体的には,心理学的および社会経済的な変数が,二カ国以上あるいは単一の国家の中での異なった下位集団の投票者の価値に与える影響に焦点を当てた研究を行っている.最新の研究では,ジェンダーの役割に対する市民意識に与える影響について六十を越える国で検証を行った.二番目の研究プロジェクトではメディアが政治に対する興味や議論の枠組みを形成する仕組に焦点を当てている.具体的には,権威のある硬いメディアと柔らかいメディア(ワイドショー等)がどう小泉内閣の圧倒的な人気を形成したのか検討している.
授業科目では「世論の研究」「Research Design and Academic Presentation」「社会心理学調査実習(後半)」「政治心理学入門」「社会心理学実験及び調査」を担当している.大学院レベルの研究に関するイントロダクションとして「世論の研究」が選択される.ゼミでは米国市民の世論,安定した市民行動規範システムが形成される様子に焦点を当てる.また米国に関する調査結果を,日本で得られた結果と比較する.「Research Design and Academic Presentation」では,「米国流」の論文企画を書くための計画書を学生に執筆してもらう.雑誌への論文提出方法,会議への申込方法などを論じ,国際会議で発表する論文の申込を実施する.「社会心理学調査実習(後半)」では,社会調査による社会心理学の実証研究の方法論及び技術を習得することを目的とする.前半に学んだ調査理論と方法の概説を踏まえて,後半は調査の全過程を,実習を通して学習する.学部学生ゼミ「政治心理学入門」では,政治心理学の範囲の定義付けを行い,市民の政治的価値観,意識,アイデンティティといった,市民の知識,理念の形成過程,その重要性などの,政治心理学の主要なテーマを論じる.また一般的な手順や手法に関し解説する.
卒業生の進路は,大学院の他,民間企業,情報産業,官庁など多岐にわたっている.配属される部門は,人事,教育,調査,取材などが比較的多いようである.
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