小笠原希少野生植物保護増殖事業

  • 目標15:陸の豊かさも守ろう
川北 篤
理学系研究科
教授
小笠原諸島は大陸と一度も陸続きになったことがない海洋島であり、隔絶された環境下で独自の適応を遂げたさまざまな固有植物が生育している。しかし、森林の開発、外来種の侵入、家畜として持ち込まれたヤギによる食害などにより、多くの貴重な固有植物が絶滅の危機に瀕している。東京大学大学院理学系研究科附属植物園では1980年頃からその保全に積極的に取り組み、植物園の温室で増殖育成技術を確立するとともに、子苗を現地に植え戻すことにより自然集団の回復を図ってきた。2004年からは「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく環境省委託の「希少野生動植物種保護増殖事業」として活動を継続している。病虫害の持ち込みが懸念されるために現在植え戻しは中止されているが、植物園内で系統保存する株を管理・増殖して質的・量的に良好な状態に保つとともに、生育域内および域外における生活史の調査研究を通して、自然状態での繁殖が実現できるよう、情報の収集と技術の向上に努めている。
植物園の温室では小笠原の固有植物125種のうち約90種を系統保存している。
理学系研究科附属植物園
小笠原諸島父島に固有のムニンノボタン。植え戻し株の種子が発芽成長し、自然更新が行われている。
理学系研究科附属植物園

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主な関連論文

出野貴仁,田中健文,小牧義輝.2017.異なる環境で実施した小笠原固有種コバトベラの自生地播種の発芽と1年後の生育状況.日本植物園協会誌 52:16-20.
太田祐子,小牧義輝,出野貴仁,田中健文,槇原寛,服部力,升屋勇人,北島博,島田律子.2016.小笠原群島固有の絶滅危惧種コバトベラの枯死原因.樹木医学研究 20:133-137.
小牧義輝.2013.小笠原希少植物保護増殖事業における「植え付け」について.日本植物園協会誌 47:57-62.
東馬哲雄,小牧義輝,平井一則,邑田仁.2008.絶滅危惧種ムニンノボタン(ノボタン科)の最近の個体群動態と今後の保全に向けての遺伝的評価.植物研究雑誌 83:15-20.
平井一則,小牧義輝. 2008. 小笠原希少植物保護増殖事業について.日本植物園協会誌 42:52-55.
岩槻邦男,下園文雄.1989.「滅びゆく植物を救う科学-ムニンノボタンを小笠原に復元する試み」研成社.
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