Go Global Gateway 2020年度コラム7
言語は誰のもの
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2020/08/19     

大学院総合文化研究科・教養学部
附属国際交流センター グローバリゼーションオフィス 特任助教     
下山田翔     

  みなさん、夏休みをいかがお過ごしですか。授業がない期間を活用して、外国語のスキルを向上させようとしている人も多いでしょう。特に英語力の向上は、多くの人の関心事です。SIL Internationalが提供するEthnologueというデータベースによると、英語の話者は全世界に推定12億人以上います。その大多数は英語を第二言語や外国語として話す人々です。英語は、それを第一言語として使用する人々の占有物ではないと私は思います。しかし、英語はいわゆるその「ネイティブスピーカー」に帰属するものだという考え方が、いまだに強く残っていると指摘されています。
  私は中国語を勉強していますが、中国の方からごく稀に「太君(taijun)」と呼ばれることがあります。諸説ありますが、もともとは日本軍の兵士を指す言葉で、現在は日本人を意味するジョークのような言葉です。悪気はないのでしょうし、もしかしたら親しみを込めて使っているのかもしれません。しかし、私は兵士ではないですし、戦争を想起させる言葉には抵抗を感じるので、「日本人」と呼んでくれたらいいのにと思います。
  日本語の「外人(gaijin)」という言葉の使用も、しばしば議論になります。日本人は外国人を差別するつもりはなくても、日本語を話す外国人の中には、「外人」と呼ばれることに嫌悪感を覚える人がいます。あなたは、「外人」は「外国人」の短縮形だと思いますか。それとも、排外主義を示唆する言葉だと思いますか。インクルーシブな社会を日本で実現するためには、日本で生活している外国人に疎外感を与えかねない言葉の使用は控えるべきです。
  言語の所有権は、それを第一言語として話す人のみにあるのでしょうか。その言語を第二言語、もしくは外国語として使用する人には、意見を主張する権利はないのでしょうか。第二言語や外国語の「共同所有者」として、そして「正当な意見者」として認められるためには、どのような条件を満たす必要があるでしょうか。もし外国語の習得に励んでいるなら、これはあなた自身の問題です。ぜひ考えてみてください。