Go Global Gateway 2020年度コラム8
THUG (The Hate U Give)
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2021/02/08       

  大学院総合文化研究科・教養学部       
  附属国際交流センター グローバリゼーションオフィス 特任助教       
  下山田翔       

  2021年2月3日、東京オリンピック組織委員会会長である森喜朗氏は、日本オリンピック委員会の評議会において、女性は発言が長いという私見を述べ、「発言の時間をある程度、規制しておかないとなかなか終わらないので困る」と発言をしました。この発言に対する批判は世界中で瞬く間に広がり、「女性に対する偏見」、「女性差別」、「女性蔑視」といった言葉で、国内外から強く抗議されています。
  私も強い怒りを覚えたうちのひとりです。森氏がその後の記者会見において組織委員会会長を辞任しない意向を示した直後に、処遇の改善を求めるオンライン署名活動に参加しました。2021年2月8日の時点で、この署名活動には13万人以上が参加しており、大規模な抗議活動が展開されています。賛同者は署名サイトにコメントを残すことができ、森氏に対する鋭い批判が多く寄せられています。私もコメントを残そうとしましたが、あるコメントを見て手が止まってしまいました。

                    “老害”

  これは、森氏が自身の会見で述べた言葉でもありますが、森氏に対して使われているのを目の当たりにしたのは、私にとってこの時が初めてでした。ヘイトスピーチをした人に対するヘイトスピーチと言えるかもしれません。このように繰り返される憎悪の連鎖を、そしてそのような連鎖が子供たちに与える悪影響を、アメリカ人のラッパーであるTupac Shakur氏は「THUG (The Hate U Give)」という言葉で表現しました。
  この「老害」という言葉が森氏に対して浴びせられている状況から、私たちが得るべき教訓は、「自業自得」でも「自分で蒔いた種」でもありません。誰かを批判するときに、相手の気分を害するような言葉を投げかける必要はないはずです。批判と差別を混同している限り、全ての性別、ジェンダー、年齢層、国籍、人種、宗教が尊重される社会は実現されないと思います。憎悪の連鎖、断ち切りましょう。