日印交流プラットフォーム構築プログラム
Japan India Exchange Platform Program

第2回JIEPP日印交流セミナー
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「日印関係における大学の役割とは-知的交流の歴史から考える」
本セミナーでは、日印の知的交流史を振り返りながら、日印関係を推進するための大学の役割について考察する。
大学は、国や企業などの特定利害を超えて、普遍的な真理を探究する場である。
そして、日印の知的交流の歴史はまさに、普遍にもとづいて多様なる現れを肯定する思想を核として展開されてきた。
必要なのは、大学を中心とする知的交流から新時代の理念とその実現のための道筋を練り上げ、企業・政府・市民社会と共に、多様な人びとそして人ならざるものが互いの存在を喜び合える環境をつくりあげる実践を積み上げていくことであろう。
日程
2021年7月16日(金)
時間
17:00-18:30 JST / 13:30-15:00 IST
開催方式
Zoom ウェビナー
言語
日本語(通訳なし)
参加費
無料
事前登録
必要: ご登録はこちらopen_in_new
主催
文部科学省補助金「大学の世界展開力強化事業」インド(B)
「日印交流プラットフォーム構築プログラム(JIEPP)」(東京大学経営企画部国際戦略課)
共催
東京大学大学院総合文化研究科 グローバル地域研究機構 南アジア研究センター
お問い合わせ
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講演者
田辺 明生
田辺 明生
東京大学大学院総合文化研究科教授、同研究科グローバル地域研究機構南アジア研究センター長
歴史人類学・南アジア地域研究を専攻。
岡山県出身。1988年東京大学法学部卒業、93年同大学院総合文化研究科博士課程中退、93年東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手、98年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助教授、2004年京都大学人文科学研究所助教授(後、准教授)、2009年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授などを経て、2016年より現職。著書に『カーストと平等性―インド社会の歴史人類学』(東京大学出版会)、共編著に『現代インド1 多様性社会の挑戦』(東京大学出版会)、共訳書にゴウリ・ヴィシュワナータン『異議申し立てとしての宗教』(みすず書房)等がある。
コメンテーター
小林(クリシュナピライ)憲枝
小林(クリシュナピライ)憲枝
長岡技術科学大学 IITM-NUTオフィス コーディネーター
長岡技術科学大学とインドの大学間の派遣・受入学生のサポート業務や、産学連携のコーディネート業務を、インドから行う。
2014-2019年: 大学の世界展開力強化事業(インド)の連携コーディネーター。
2019年以降: スーパーグローバル大学創成支援事業で、GIGAKU教育研究ネットワーク及びGIGAKUテクノパークネットワークのインド連携コーディネーター 。
また、インド工科大学マドラス校で日本語教育を提供し、インドの学生に日本留学・就職の支援を行っている。
司会
加藤 隆宏
加藤 隆宏
人文社会系研究科・文学部 インド哲学仏教学研究室
1973年生まれ。東京大学文学部インド哲学仏教学専修課程卒業、同大学院修士課程修了、博士課程単位取得退学。
博士課程在学中の2003年から2005年までインド・プネー大学サンスクリット学高等研究所に留学。2006年から2012年まではドイツ・マルティンルター大学に在籍(Dr.Phil,ドイツ・マルティンルター大学)。マルティンルター大学時代には、独日ダブルディグリープログラム講師として国際交流事業に従事した経験もある。
専門はインド哲学、サンスクリット文献学。
インド留学時よりサンスクリット写本収集のためにインド各地の図書館や寺院を訪ね歩いている。

開催報告

2021年7月16日(金)17:00より、第2回(令和3年度第1回)日印交流セミナーがzoomウェビナーを用いて実施されました。当日は多くの学生も含む大学関係者や企業関係者から60名の参加がありました。

 田辺明生教授(本学大学院総合文化研究科、同研究科グローバル地域研究機構南アジア研究センター長)による講演では「日印関係における大学の役割とは:知的交流の歴史から考える」の表題のもと、まず仏教伝来からはじまる日印交流の歴史や日本文化にインドの思想が与えた影響が紹介されました。続いて近代の日印交流を代表する思想家であるタゴール、岡倉天心、ヴィヴェーカーナンダの共鳴に触れ、この3人の思想には、この世のものに美と真理を認め、自らの行為をそれへの賛美と奉仕にしようとする姿勢、すなわち、普遍の知と愛にもとづいた多様で俗なるものの肯定があることを指摘しました。翻って日本の大学のあり方については、「森」を範とするインドの大学や「都市」を範とする西洋の大学のあり方との比較から、「里地里山」のように人間と自然がともに新たな世界を作りあげるような場となりうる可能性を指摘しました。そうした大学を中心とした日印交流を行うにあたり、ヨーロッパ由来の近代的世界観に限界が出ている現代においては、新時代にふさわしい「思想のある技術・制度」をつくりあげていくことが望ましいとして、この実現のために「南アジア機構」の設立の重要性を提言しました。

 次いで、小林憲枝氏(長岡技術科学大学 IITM-NUTオフィス コーディネーター)によるコメントでは、全体を要約しつつ、小林氏の視点からポイントを紹介しました。タゴール、岡倉天心、ヴィヴェーカーナンダの思想が逆輸入のような形で日印で受容された背景には、彼らが英語で欧米に向けて発信していたことを紹介したり、ヴィヴェーカーナンダが繰り返し奉仕の精神を説いていたことを紹介し、世界のトップ企業でCEO等として活躍するインド出身者の多さの理由は、こうした奉仕の精神が彼らの基盤なっているからではないかと指摘しました。さらに、「森」を範とするインドの大学の実例として、同氏が拠点を置くインド工科大学マドラス校の自然豊かな風景の写真を紹介しました。そして最後にSDGsのような最近の世界的な動きに触れつつ、田辺教授が提案する新時代にふさわしい日印交流のあり方に賛同し、コメントを締めくくりました。

 講演とコメントを受け、司会の加藤隆宏准教授(人文社会系研究科・文学部 インド哲学仏教学研究室)の進行のもと、フロアからは、現代のインド社会と思想の関係や、インドの教育のあり方、インド出身でグローバルな活躍をしている実業家たちの今後の動きなど、様々な観点から多くの質問が寄せられました。

 最後にこれからの大学のあり方について問われた田辺教授は、大学は直接何かの役に立つということよりも、社会とつながりながら少し離れた立ち位置で、世界がどこへ向かうのかを考える場所として存在することが重要であると応答しました。大学は普遍の真理を追究する場であり、今こそその本来のあり方へ立ち返るべきであるという提言を受け、加藤准教授はインドの国の標語となっている「真理のみが勝利する(satyam eva jayate)」という言葉を引用してセミナーを締めくくりました。