日印交流プラットフォーム構築プログラム
Japan India Exchange Platform Program

第4回JIEPP日印交流セミナー
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日印間のジョイントディグリー:現状と展望
日本の大学と海外の大学との交流を促進する上で効果的な連携方策の一つであり、留学生獲得にも資すると期待されるジョイントディグリー制度は、制度面、資金面等で克服すべきハードルも高い。日印交流においてもこの制度の活用が今後重要性を増してくるであろうということを踏まえ、本セミナーでは、インド工科大学グワハティ校とのジョイントディグリー制度を実現した岐阜大学から情報提供をいただき、日印間のジョイントディグリー制度の課題と展望について意見交換を行う。
日程
2022年9月30日(金)
時間
13:00 - 15:00 JST / 9:30 - 11:30 IST
開催方式
Zoom ウェビナー
言語
日本語
参加費
無料
主催
「日印交流プラットフォーム構築プログラム(JIEPP)」(東京大学研究推進部国際研究推進課)
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講演者
植松 美彦
植松 美彦
岐阜大学教授・グローカル推進機構長
1966年生まれ.1990年 京都大学工学部卒業,同大学院博士前期,後期課程修了.工学博士.1990~2004年 大阪大学に助手として勤務.2004年に岐阜大学工学部に移動し,2011年より岐阜大学教授.2001~2002年にはデルフト工科大学(オランダ)客員研究員,2010~2011年には文部科学省学術調査官なども務める.
2019年にインド工科大学グワハティ校(IITG)とのジョイントディグリーが開始し,連携統合機械工学専攻長を務める.また同年より岐阜大学グローカル推進機構長として,留学支援に当たる.
講演者
久米 徹二
久米 徹二
岐阜大学工学研究科国際連携統合機械工学専攻教授
1997年神戸大学大学院博士課程を修了、学術博士を取得。翌年より岐阜大学工学部に赴任、2016年より工学部教授。インド工科大学グワハティ校とのジョイントディグリー専攻の設立に深くかかわり、2019年4月より本専攻のコーディネーターを務めるとともに、工学部における国際業務を担当している。専門は半導体物性工学。
コメンテーター
米原 泰裕
米原 泰裕
在インド日本大使館一等書記官
京都大学教育学部卒業、東京大学公共政策大学院修了。
2001年に文部科学省に入省。初等中等教育、科学技術分野、政策評価などの業務に携わる。
2020年2月より外務省に出向し、同年7月より在インド日本大使館に勤務。両国間の教育分野を中心とした人的交流(特に留学生関係)や日本語教育などを担当。
司会
加藤 隆宏
加藤 隆宏
東京大学インド事務所長
1973年生まれ。東京大学文学部インド哲学仏教学専修課程卒業、同大学院修士課程修了、博士課程単位取得退学。
博士課程在学中の2003年から2005年までインド・プネー大学サンスクリット学高等研究所に留学。2006年から2012年まではドイツ・マルティンルター大学に在籍(Dr.Phil,ドイツ・マルティンルター大学)。マルティンルター大学時代には、独日ダブルディグリープログラム講師として国際交流事業に従事した経験もある。
専門はインド哲学、サンスクリット文献学。
インド留学時よりサンスクリット写本収集のためにインド各地の図書館や寺院を訪ね歩いている。

開催報告

2022年9月30日(金)13:00より、第4回日印交流セミナーがzoomウェビナーにて実施されました。当日は学生を含む大学関係者や官庁・企業関係者から79名の参加がありました。

植松美彦教授(岐阜大学・グローカル推進機構長)による講演では、岐阜大学にて実施しているインド工科大学グワハティ校とのジョイントディグリープログラムの紹介がありました。プログラムはすべて英語で実施され、プログラムの参加学生は相手側の大学の入学料、授業料を不徴収とし、日印の学生が互いのキャンパスを行き来して講義を受けていること、このプログラムを設置するまでには、2012年に大学間で協定を結んだことをきっかけとして、部局間で訪問、大学間で交流と徐々に幅を広げ、対面とリモートを駆使して交流を続け、最終的にプログラムの締結にいたったことが説明されました。このプログラムをとおして、岐阜大学における地域貢献、地域活性も一つの目標として研究成果をアウトプットすることを目指していること、岐阜大学が国内のジョイントディグリープログラム協議会の幹事校として、国外とのジョイントディグリープログラムを広げることを今後の展望としていることが説明されました。

久米徹二教授(岐阜大学・工学研究科国際連携統合機械工学専攻教授)による講演では、実際にジョイントディグリープログラム設置までを担当した際のグッドプラクティスや苦労した点の紹介がありました。コロナ禍のためオンラインでのミーティングが多くなったが対面で打ち合わせすることが重要であること、ジョイントディグリープログラムとは何かということと互いの大学の教育システムの相違を理解することがまずは必要で、その後で、セメスター・講義の調整や論文審査、単位の設定等について国際基準を基にしながら一つ一つ照らし合わせプログラムを作成することができたとの説明がありました。ジョイントディグリープログラム開始後の効果として、共同研究および国際共著での論文が増えたこと、参加した学生のモチベーションが上がり国際関係企業や団体等への就職につながったことが挙げられました。課題として、学生側からは留学費用や生活文化の違い、大学側としてはインド側に比べて日本側からの留学希望者が少ないことが挙げられました。学生側の課題には奨学金等の制度を充足させること、大学側の課題には学生の留学に対するモチベーションを上げられるようにプログラムを広報していくことで対応したいとの説明がありました。

以上の講演を受け、米原泰裕一等書記官(在インド日本国大使館)によるコメントでは、岐阜大学とインド工科大学グワハティ校間のジョイントディグリープログラムは非常に貴重であるとの説明がありました。また、インドでは日本の大学がそれほど有名ではないが、インド工科大学とのジョイントディグリーであればインドの企業にも評価されるので、インド人学生にとっても有益であるとのコメントがありました。一方、国内大学の国際交流協定数を見ると、相手国が中国や米国と比べインドは少ないが、インドは人口が増加しており、すでに国別論文数ランキングは日本が追い抜かれそうになっている現実があるとの指摘がありました。日印交流にあたっては語学の壁が大きく、日本側の英語力に加え、インド側でも多言語社会のためヒンディー語・地元言語・英語を学習する中で日本語を学ぶのは困難であり、英語でのプログラム整備が求められるとの説明がありました。インドでは「とりあえずやってみよう」というスタンスで日本との交流に非常に積極的なので、ぜひ日印交流を検討していただきたい、その際、在インド日本国大使館を是非活用してほしいと述べ、コメントを締めくくりました。

講演とコメントを受け、視聴者からは、プログラムに参加した日本人学生は就職活動のスケジュールに問題がないかとの質問がありました。これに対し、岐阜大学のジョイントディグリープログラムであれば、日本人学生は修士課程1年の夏季にインドへ留学し、冬季に帰国するので就職活動に支障はないとの回答がありました。また、視聴者からはインドの大学院では日本の大学院とは異なり、修士課程と博士課程で試験を挟み学生が総入れ替えとなるといった教育システムの違いに対する言及がありました。

最後に植松教授から、ジョイントディグリープログラムを進めるにあたり学生側の最大の懸念は、経済的な問題であり、生活に心配のない環境で研究してもらう必要があるという指摘がありました。今後は、大学の世界展開力強化事業に採択されたためその補助金も活用し、ジョイントディグリープログラムを推し進めていきたいとの展望が語られました。