○東京大学学生懲戒処分規程
平成16年10月26日
教育研究評議会可決
東大規則第253号
(目的)
第1条 この規程は、東京大学学部通則第25条および東京大学大学院学則第42条に規定する懲戒に関し手続その他必要な事項について定めることを目的とする。
(定義)
第2条 この規程において「学生」および「懲戒処分の対象となる学生(以下「当該学生」という。)」とは、学部学生および大学院学生をいう。
2 この規程において「部局」とは、学部、研究科および教育部をいう。
3 この規程において「部局長」とは、学部においては学部長、研究科においては研究科長、教育部においては部長をいう。
(懲戒処分の対象)
第3条 懲戒処分の対象となりうる行為は、次の各号に掲げるものとする。
(1) 犯罪行為
(2) 人権を侵害する行為
(3) セクシュアル・ハラスメント
(4) 試験等における不正行為および論文等の作成における学問的倫理に反する行為
(5) 情報倫理に反する行為
(6) 本学の規則に違反する行為
(7) 本学における教職員の業務ならびに学生等の学習、研究および正当な活動を、暴力、威力、偽計等の不当な手段によって妨害する行為。ただし、学生の正当な自治活動の一環として、大学または部局等への意思表示のために、授業を受けることの放棄を呼びかけること自体は、ここにいう行為にはあたらないものとする。
(懲戒処分の種類)
第4条 懲戒処分の種類は、退学および有期の停学とする。
(懲戒処分のための手続)
第5条 第3条第1号、第2号、第4号、第5号、第6号および第7号に関する懲戒処分のための手続は、次条以下においてこれを定める。
2 第3条第3号に関する懲戒処分のための手続は、「セクシュアル・ハラスメントを理由とする学生の懲戒処分についての了解事項(平成14年4月16日評議会決定)」による。ただし、同了解事項において「評議会への付議」とあるのは、「学生懲戒委員会への付議」と読み替える。
(懲戒処分に関する部局の意見)
第6条 部局長は、懲戒処分の対象となりうる行為が当該部局の学生によって行われたことを知り得たときは、遅滞なく事実確認および当該学生に対する事情聴取を行い、懲戒処分が相当と判断した場合には、懲戒処分に関する意見を作成し、速やかに総長および当該学生にこれを通知する。部局による事情聴取にあたっては第11条第2項および第3項の手続にならって行うものとする。
2 懲戒処分に関する意見には、懲戒処分の根拠となる事実の認定、懲戒処分の相当性に関する判断および懲戒処分の量定に関する判断が含まれる。
(学生懲戒委員会)
第7条 教育研究評議会の下に学生懲戒委員会を置く。
2 学生懲戒委員会は、副学長1名、評議員、研究科に置かれる副研究科長および研究科以外の大学院組織に置かれる副部長(以下「評議員等」という。)のうちから5名ならびに教員15名(本学の教授または准教授であることを要する。)の計21名の委員によって構成される。
3 総長は、委員長をつとめる副学長を任命する。
4 教育研究評議会は、副学長以外の学生懲戒委員会委員を選任する。
5 総長は、前条に定めるところにより懲戒処分に関する意見が通知されたときは学生懲戒委員会に、懲戒処分の要否および懲戒処分を要する場合のその内容についての審査を付議する。
6 学生懲戒委員会は、前項に定めるところにより審査を付議されたときは学生懲戒委員会の中に担当班を設置する。個々の事案の懲戒処分手続は、学生懲戒委員会の担当班がこれを行う。
7 学生懲戒委員会の担当班は、学生懲戒委員会委員長である副学長、評議員等1名および教員3名の計5名によって構成される。担当班の班長は当該副学長が、副班長は当該評議員等がつとめる。
8 学生懲戒委員会は、担当班を組織するにあたり、懲戒手続の公平性の確保に努める。
(当該学生の意思の確認)
第8条 学生懲戒委員会の担当班は、当該学生が、部局の作成した懲戒処分に関する意見に対して不服を申し立てるか否かを確認する。
(当該学生および部局からの事情聴取ならびに資料等の提出要請)
第9条 学生懲戒委員会の担当班は、適宜、当該学生および当該部局から事情聴取を行い、資料等の提出を求めることができる。
(不服の申し立てがない場合の手続)
第10条 学生懲戒委員会の担当班は、当該学生が部局の作成した懲戒処分に関する意見に対して不服を申し立てることが確認されなかった場合には、直ちに当該意見の適否の判断を行うことができる。
2 学生懲戒委員会の担当班は、当該意見が妥当であると判断した場合には、その旨を学生懲戒委員会に報告する。総長は、学生懲戒委員会からの報告を受けて、当該部局長に対して、この懲戒処分をとるよう命ずる。総長は、懲戒処分を命じたことを教育研究評議会に報告する。
3 学生懲戒委員会の担当班は、当該意見が妥当でないと判断した場合には、必要に応じて前条に定める調査を行った後、新たな懲戒処分案を作成し学生懲戒委員会に報告する。学生懲戒委員会は、第13条に定める参考人団の評決に委ねる。当該学生からの事情聴取および懲戒処分案の作成にあたっては、次条第2項、第3項および第5項の手続が適用される。
(不服が申し立てられた場合の手続)
第11条 学生懲戒委員会の担当班は、当該学生が部局の作成した懲戒処分に関する意見に対して不服を申し立てることが確認された場合には、遅滞なく当該学生および部局から事情聴取を行い、資料等の提出を求めるものとする。
2 学生懲戒委員会の担当班は、当該学生からの事情聴取にあたっては、当該学生に自己を防御する機会を十分に与えるよう配慮する。ただし、当該学生が正当な理由が無いのに事情の聴取に応じない場合または自己に有利な証拠を提出する等の防御をしない場合には、その機会を自ら放棄したものとみなすことができる。
3 学生懲戒委員会の担当班は、当該学生からの事情聴取にあたっては、当該学生からの申し出があれば、当該学生を補助する者(弁護士を含む。)の同席を認める。ただし、調査の妨げとなる場合には、同席する者の数を制限することができる。
4 学生懲戒委員会の担当班は、懲戒処分案を作成し、学生懲戒委員会に報告する。学生懲戒委員会は、第13条に定める参考人団の評決に委ねる。
5 懲戒処分案には、懲戒処分の根拠となる事実の存否および懲戒処分の相当性に関する判断が含まれる。懲戒処分を相当であるとした場合には、量定に関する判断も含まれる。
(参考人団)
第12条 第10条第3項ならびに前条第4項および第5項の懲戒処分案に関し、その公平性と透明性を高めるため、次項以下に定める参考人団を置く。
2 参考人団は、評議員1名、教員5名(以下「教員団員」という。)および学生5名(以下「学生団員」という。)の計11名によって構成される。参考人団を構成する評議員および教員団員は、学生懲戒委員会委員以外から総長が任命する。
3 参考人団を構成する評議員は、当該学生の所属部局とは異なる部局の者でなければならない。参考人団の団長は、評議員がつとめる。団長は、参考人団を統括する。
4 教員団員は、当該学生の所属部局とは異なる部局の者でなければならない。
5 学生団員は、各部局から選出された学生参考人で構成される学生参考人会の中から、互選により選出される。学生団員は、当該学生と所属部局が異なる者でなければならず、また当該学生と個人的に交際関係のある者であってはならない。学生参考人の選出その他必要な事項に関しては、別途定める。
(参考人団による評決)
第13条 参考人団は、学生懲戒委員会の担当班による懲戒処分案が妥当であるか否かに関する評決を行う。
2 参考人団は、評決に先立って、学生懲戒委員会の担当班による懲戒処分案の説明を受ける。参考人団は、必要があれば、当該学生および当該部局の意見を聴取することができる。当該学生からの事情聴取にあたっては、第11条第2項および第3項の手続にならって行うものとする。
3 評決にあたっては、団長および7名以上の団員(教員団員および学生団員をいう。以下同じ。)の出席を要する。評決は、出席した団員の多数決によって行われる。団長は、評決に加わることができない。ただし、可否同数の場合には、団長の決定による。
4 団長は、評決結果を学生懲戒委員会に報告する。
(総長による処分または再審査の命令)
第14条 学生懲戒委員会は、参考人団が懲戒処分案(処分不相当とする案を含む。)を相当であると評決した場合には、それに基づいて懲戒処分案を確定し、総長に報告する。総長は、当該部局長に対して、この懲戒処分(処分不相当とする場合を除く。)をとるよう命ずる。総長は、懲戒処分を命じた場合には、そのことを教育研究評議会に報告する。
2 学生懲戒委員会は、参考人団が懲戒処分案(処分不相当とする案を含む。)を相当でないと評決した場合には、その旨の理由を付して総長に報告する。総長は、学生懲戒委員会に対して、当該事案の再審査を命ずる。
(再審査)
第15条 再審査は、学生懲戒委員会において新たに組織される担当班によって行われる。
2 学生懲戒委員会は、再審査に基づいて新たに作成した懲戒処分案(処分不相当とする案を含む。)を総長に報告する。
3 総長は、審査の全過程を斟酌の上、懲戒処分(処分不相当とすることを含む。)を決定し、部局長に対して、この懲戒処分(処分不相当とする場合を除く。)をとるよう命ずる。総長は、懲戒処分を命じた場合には、そのことを教育研究評議会に報告する。
(学生による再審査請求)
第16条 懲戒処分を受けた当該学生は、処分の根拠となった事実が存在しないことが明らかになった場合その他正当な理由がある場合には、総長に対して再審査を請求することができる。
2 前項の請求があったときには、総長は遅滞なく再審査の要否の審査を学生懲戒委員会に付議する。
(関係者の守秘義務)
第17条 学生懲戒委員会の委員ならびに参考人団の団長および団員(学生参考人を含む。以下この条において同じ。)は、その地位にあることから知り得た情報に関する守秘義務を負う。この義務は、委員、団長または団員の地位を解かれた後も継続する。
(補則)
第18条 この規程に定めるもの以外に、この規程の実施にあたって必要な事項は、別途これを定める。
附 則
1 この規則は、平成17年1月1日から施行する。
2 昭和56年2月24日評議会承認「現行懲戒処分制度について」は、平成16年12月31日をもってこれを廃止する。
附 則
この規則は、平成19年4月1日から施行する。