○東京大学ヒトES細胞使用規則
令和元年9月26日
役員会議決
東大規則第41号
(全改)
(趣旨)
第1条 東京大学におけるヒトES細胞の使用、分配及び分化細胞の譲渡(以下「使用等」という。)に関し必要な事項については、東京大学研究倫理審査実施規則(平成11年11月16日評議会可決。以下「審査規則」という。)等に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
(定義)
第2条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 胚 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号。以下「法」という。)第2条第1項第1号に規定する胚をいう。
(2) ヒト胚 ヒトの胚(ヒトとしての遺伝情報を有する胚を含む。)をいう。
(3) 人クローン胚 法第2条第1項第10号に規定する人クローン胚をいう。
(4) ヒトES細胞 ヒト胚から採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないもののうち、多能性(内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞に分化する性質をいう。)を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を有することが推定されるものをいう。
(5) 分化細胞 ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞をいう。
(6) 生殖細胞 始原生殖細胞から精子又は卵子に至るまでの細胞をいう。
(7) 使用部局 東京大学基本組織規則(平成16年4月1日東大規則第1号)第3章及び第4章に掲げる組織並びに附属病院のうち、ヒトES細胞を使用して基礎的研究を行う組織をいう。
(8) 分配機関 他の機関から寄託されたヒトES細胞(基礎的研究の用に供するものに限る。)を第三者に分配する業務を実施する機関をいう。
(9) 臨床利用機関 法令に基づき、医療(臨床研究及び治験を含む。以下同じ。)に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関(海外機関を除く。)をいう。
(10) 海外機関 外国において基礎的研究又は医療に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関をいう。
(11) 使用計画 使用部局が行うヒトES細胞の使用に関する計画をいう。
(12) 使用責任者 使用部局において、ヒトES細胞の使用を総括する立場にある者をいう。
(13) 研究者等 使用責任者の監督の下で使用部局において、ヒトES細胞を取り扱う研究者及び技術者をいう。
(使用の要件)
第3条 ヒトES細胞の使用(次項に定めるものを除く。)は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
(1) 次のいずれかに資する基礎的研究を行うものであること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
(2) ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び意義を有すること。
2 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞の使用は、特定胚の取扱いに関する指針(平成31年文部科学省告示第31号。以下「特定胚指針」という。)第6条第2項に規定する目的に限り、行うことができるものとする。
3 使用に供されるヒトES細胞は、次に掲げるものに限るものとする。
(1) ヒトES細胞の樹立に関する指針(平成31年文部科学省・厚生労働省告示第4号。以下「樹立指針」という。)で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞(生殖細胞の作成の用に供される場合には、生殖細胞の作成を行うことについてのインフォームド・コンセントを受けていることその他の樹立指針で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞に限る。)
(2) 外国で樹立されたヒトES細胞で、樹立指針と同等の基準に基づき樹立されたものと認められるもの(生殖細胞の作成の用に供される場合には、当該外国の法令等及びヒトES細胞の提供に関する条件においてヒトES細胞から生殖細胞を作成しないこととされていないものに限る。)
(禁止行為)
第4条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。ただし、法第4条に定める特定胚を作成する場合であって、特定胚指針の適用を受ける場合にあってはこの限りでない。
(2) ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。
(3) ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。
(4) ヒトES細胞から生殖細胞の作成を行う場合には、当該生殖細胞を用いてヒト胚を作成すること。
(総長の責務)
第5条 総長は、本学におけるヒトES細胞の使用等について包括的に責任を負うものとする。
2 総長は、ヒトES細胞の使用等に関し必要な措置を講ずるものとする。
(倫理審査専門委員会)
第6条 ヒトES細胞の使用に際しては、その科学的妥当性及び倫理的妥当性について、審査規則第6条に規定する倫理審査専門委員会(以下「専門委員会」という。)において審査するものとする。
2 前項の審査に、審査の対象となる使用計画を実施する研究者等又は使用責任者との間に利害関係を有する者が参画することはできない。
3 専門委員会は、使用計画について、本規則に則して総合的に審査し、その適否、留意事項、改善事項等に関して使用部局の長に意見を提出するものとする。
4 専門委員会は、ヒトES細胞の使用の状況について、使用部局の長からの報告を受けて、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して使用部局の長に意見を提出するものとする。
(使用部局)
第7条 使用部局は、次に掲げる要件を満たすものとする。
(1) ヒトES細胞を使用するために必要な施設及び人員を有すること。
(2) ヒトES細胞の使用に関する技術的能力及び倫理的な識見を向上させるために必要な教育及び研修(以下「教育研修」という。)を実施するための計画(以下「教育研修計画」という。)が定められていること。
(使用部局の長)
第8条 使用部局の長は、当該部局におけるヒトES細胞の使用等の総責任者として次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 使用計画を専門委員会に諮問し、その意見を受けて使用計画の実施を了承すること。
(2) ヒトES細胞の使用の状況を把握するとともに専門委員会に報告し、必要に応じ使用責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。
(3) ヒトES細胞の使用を監督すること。
(4) 使用部局において本規則等を周知徹底し、これを遵守させること。
(5) ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画を作成し、教育研修を実施すること。
(6) 本規則の定めるところにより文部科学大臣に届出、提出又は報告した事項について、総長に報告すること。
(7) その他使用部局におけるヒトES細胞の使用等に関し必要な措置を講ずること。
2 使用部局の長は、使用責任者を兼ねることができない。ただし、前項の業務を代行する者が選任されている場合は、この限りでない。
3 前項ただし書の場合において、本規則(前項を除く。)の規定中「使用部局の長」とあるのは「使用部局の長の業務を代行する者」と読み替えるものとする。
(使用責任者)
第9条 使用責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) ヒトES細胞の使用に関して、内外の入手し得る資料及び情報に基づき使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討し、その結果に基づき、使用計画を記載した書類(以下「使用計画書」という。)を作成すること。
(2) ヒトES細胞の使用を総括し、研究者等に対し必要な指示をすること。
(3) ヒトES細胞の使用が使用計画書に従い適切に実施されていることを随時確認すること。
(4) ヒトES細胞の使用に関する教育研修に研究者等を参加させること。
2 使用責任者は、ヒトES細胞に関する倫理的な識見並びに十分な専門的知識及び技術的能力を有するとともに前項各号に掲げる業務を的確に実施できる者とする。
(使用計画書)
第10条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用に当たっては、あらかじめ使用計画書を作成し、使用計画の実施について使用部局の長の了承を求めるものとする。
2 使用計画書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
(1) 使用計画の名称
(2) 使用部局の名称及び所在地
(3) 使用責任者の氏名
(4) 使用の目的及び意義
(5) 使用の方法及び期間
(6) 使用部局の基準に関する説明
(7) 外国から分配されたヒトES細胞を使用する場合には、当該ヒトES細胞が樹立指針と同等の基準に基づき樹立されたものであることの説明
3 使用計画書には、使用責任者の略歴、研究業績及び教育研修の受講歴を示す書類を添付するものとする。
4 使用部局の長は、第1項の規定に基づき、使用責任者から使用計画の実施の了承を求められたときは、科学的妥当性及び倫理的妥当性について専門委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき使用計画の本規則に対する適合性を確認するものとする。
(使用計画の届出)
第11条 使用部局の長は、使用計画の実施を了承するに当たっては、前条の手続の終了後、あらかじめ、当該使用計画の実施について文部科学大臣に届け出るものとする。
2 前項の場合には、使用部局の長は、次に掲げる書類を文部科学大臣に提出するものとする。
(1) 使用計画書
(2) 使用責任者の略歴、研究業績及び教育研修の受講歴を示す書類
(3) 専門委員会における審査の過程及び結果を示す書類
(4) 専門委員会に関する規則
(使用計画の変更)
第12条 使用責任者は、第10条第2項各号(第2号を除く。)に掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、当該変更について使用部局の長の了承を求めるものとする。ただし、使用計画の実質的な内容に係らない変更については、使用部局の長に報告することをもって足りる。
2 使用部局の長は、前項本文の了承を求められたときは、当該変更の妥当性について専門委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき当該変更の本規則に対する適合性を確認するものとする。
3 使用部局の長は、第1項本文の了承をしたときは、速やかに、使用計画変更書(使用計画の変更の内容及び理由を記載した書類をいう。)並びに当該変更に係る専門委員会における審査の過程及び結果を示す書類を添付して、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
(使用計画の実質的な内容に係らない変更)
第13条 使用部局の長は、第10条第2項第2号に掲げる事項に変更があったときは、速やかに、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
2 使用部局の長は、前条第1項ただし書の使用計画の実質的な内容に係らない変更があったときは、その旨を専門委員会及び文部科学大臣に届け出るものとする。
(使用の進行状況の報告)
第14条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用の進行状況を使用部局の長及び専門委員会に随時報告するものとする。
2 生殖細胞の作成を行う使用部局の使用責任者は、前項の報告に加え、少なくとも毎年1回、生殖細胞の作成状況を記載した報告書を作成し、使用部局の長に提出するものとする。
3 使用部局は、ヒトES細胞の使用に関する資料の提出、調査の受入れその他文部科学大臣が必要と認める措置に協力するものとする。
(使用の終了)
第15条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用を終了したときは、速やかに、使用の結果を記載した報告書を作成し、使用部局の長に提出するものとする。
2 使用部局の長は、前項の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを専門委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(分配の要件)
第16条 使用部局は、分配機関へのヒトES細胞の寄託のほか、他の使用部局、ヒトES細胞を使用して基礎的研究を行う学外機関、臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配することができるものとする。
2 使用部局からの臨床利用機関に対するヒトES細胞の分配は、当該ヒトES細胞が分配機関から分配を受けたものでない場合であって、契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
(1) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及び人の胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から生殖細胞の作成を行わないこと。
(2) 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配又は譲渡をしないこと。
(3) ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画が定められていること。
(4) 個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
(5) 作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知すること。
(6) 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。
3 使用部局による海外機関へのヒトES細胞の分配は、分配先との契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
(1) 分配するヒトES細胞の使用が、当該海外機関が存する国又は地域の制度等に基づき承認されたものであること。
(2) ヒトES細胞の取扱いについて、当該海外機関が存する国又は地域の制度等を遵守すること。
(3) 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配しないこと。
(4) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及びヒトの胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から作成した生殖細胞を用いたヒト胚の作成を行わないこと。
(5) 基礎的研究及び医療目的以外の利用を行わないこと。
(6) 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞を分配しようとする場合、個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
(7) 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。
4 使用責任者は、臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配したときは、分配の状況を記載した報告書を作成し、使用部局の長に提出するものとする。
5 使用部局の長は、前項の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを専門委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(分化細胞の取扱い)
第17条 使用部局は、作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知するものとする。
2 生殖細胞の作成を行う使用部局は、作成した生殖細胞を譲渡する場合には、前項の通知を行うほか、当該生殖細胞の取扱いについて、譲渡先との契約その他の方法により、次に掲げる事項が確保されることを確認しなければならない。
(1) 生殖細胞は、次のいずれかに資する基礎的研究に用いられること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
(2) 生殖細胞を用いてヒト胚を作成しないこと。
(3) 生殖細胞を他の機関に譲渡しないこと。
(4) 生殖細胞を譲渡した使用部局が、前各号に掲げる生殖細胞の取扱いの状況について、必要に応じ、譲渡先から報告を求めることができること。
3 使用部局が前項の規定に基づき生殖細胞を譲渡しようとするときは、使用責任者は、あらかじめ、使用部局の長の了承を求めるものとする。
4 使用部局の長は、前項の了承をするに当たっては、作成した生殖細胞の譲渡が第2項の規定に適合していることを確認するものとする。
5 使用部局の長は、第3項の了承をしたときは、速やかに、その旨を専門委員会及び文部科学大臣に報告するものとする。
6 生殖細胞の作成を行う使用部局が、使用の終了後に引き続き当該生殖細胞を取扱う場合は、第2項第1号から第3号までに掲げる事項を確保するものとする。
(研究成果の公開)
第18条 ヒトES細胞の使用により得られた研究成果は、知的財産権及び個人情報の保護等に支障が生じる場合を除き、公開するものとする。
附 則
この規則は、令和元年10月1日から施行する。