東京大学環境放射線情報

環境放射線情報に関するQ&A



Q1:東京大学環境放射線プロジェクトの目的、活動内容について教えてください。

A1:当プロジェクトは東京大学災害対策本部の活動の一部として、平成23年3月15日から活動を開始しました。東大構成員向けの環境放射線に関する数値情報の提示を目的とし、本郷、柏、駒場の3つのキャンパスにおける空間線量率の測定をしています。その結果を学内ポータルサイトで公表しています。このポータルサイトに直接アクセスできない長期出張中の東大構成員からの要望と、近隣住民のみなさまからのご要望を受けて、現在では、ホームページ上でも一般公開するに至っております。この活動をいつまで継続するかについては、現時点では決めておりません。


Q2:本郷や駒場と比較すると、柏の値が高いように見えますが、なぜですか?

A2:現在、私たちが公表している柏のデータ(東大柏キャンパス内に設けられた測定点)は、確かに他に比べて高めの線量を示しています。測定点近傍にある天然石などの影響で、平時でも空間線量率が若干高めになっている所があります。また、福島の原子力発電所に関連した放射性物質が気流に乗って運ばれ、雨などで地面に沈着したことが原因であると考えています。気流等で運ばれてきた物質がどの場所に多く存在するか、沈着したかは、気流や雨の状況、周辺の建物の状況や地形などで決まります。


Q3:キャンパス内で測定されている放射線量(空間線量率)は人体への影響はありますか?

A3:事故前より高い空間線量率が測定されています。従来の疫学的研究では、100mSv(1回または年あたり)以下の被ばく線量の場合、がん等の人体への確率的影響のリスクは明確ではありません(自然被ばく線量は世界平均で1年間に2.4 mSvです)。ICRP(国際放射線防護委員会)は、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて、「長期間の後には放射線レベルを1mSv/年へ低減するとして、これまでの勧告から変更することなしに現時点での参考レベル1mSv/年~20mSv/年の範囲で設定すること」(日本学術会議訳)とする内容の声明を出しています。
※ICRP声明 3月21日 http://www.icrp.org/news.asp

なお、放射線の人体への影響については、今日多くの議論が交わされています。この問題については、さらに次のアドレスに掲載された情報などをご参照下さい。 (http://www.u-tokyo.ac.jp/public/AntiDisaster/kanrenjouhou.html


Q4:測定場所について公開できる情報はありますか?

A4:測定場所は以下の周辺条件です。

空間ガンマ線量率(μSv/時)
測定場所本郷(1)本郷(2)本郷(3)駒場柏(1)柏(2)
測定位置地上1m6階相当地上1m3階相当地上1m地上1m
地面主たる素材土壌コンクリート・敷石コンクリート・敷石コンクリート・敷石コンクリート・敷石土壌
近傍に存在する素材コンクリート・敷石土壌コンクリート・敷石
測定方法など手動測定(休止中)自動測定自動測定自動測定手動測定(休止中)自動測定


Q5:測定場所「本郷(1)」や「柏(1)」(それぞれ手動計測)を休止したのはなぜですか?

A5:新たに近隣に自動測定の可能な場所である本郷(3)や柏(2)を設置したため、本郷(1)や柏(1)の手動測定は休止しました。それらの変動の傾向は、本郷(3)、柏(2)と同じです。状況が変わって測定が必要になれば本郷(1)や柏(1)の測定を行います。


Q6:測定場所「本郷(2)」と「本郷(3)」あるいは「柏(1)」と「柏(2)」の測定値の違いはなぜですか?

A6:周辺の建物の状況や地形などの違いが影響するためです。A4の表もご確認ください。


Q7:測定器の種類はなんですか?

A7:NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータを使用しています。


Q8:東京大学にも放射線関係施設があると思いますが、地震の影響はありませんでしたか?

A8:震度4以上の地震が観測されたときには、施設ごとに決められた方法で、施設の点検が行われます。今回、大きな地震のあとも群発的な余震が続いていますが、東大が所管するすべての放射線施設に関して、放射線や放射性物質の漏えいはなく、施設の状況に応じた適切な状態での管理が継続されています。今後も各施設の放射線管理担当者が日常的な管理に加え、地震のたびに点検を継続します。


Q9:柏キャンパスにおける空間線量率のバックグランド(表中では「平時の値」と記載)は、どのように評価されたものですか?

A9:柏(1)のバックグランドは、福島第1、第2原子力発電所の事故以前に、放射線管理の専門家によって、まさにその地点で実際に測定されていた値を基にしています(0.08~0.16μSv/時程度)。柏(2)は柏(1)のすぐ近傍(約10m離れた地点)にあります。原子力発電所からの事故による飛来物の量は柏(1)と柏(2)でほぼ同じと推定されますので、柏(2)の自動測定を開始したころの相互の測定値を比較して、柏(2)の平時の値を0.05~0.1μSv/時と評価しました。この値は、柏(2)における過去のバックグランド測定値(0.07~0.10μSv/時)とよく整合しています。
測定された値から、平時の値を差し引いた値が、主に原子力発電所の事故由来の放射性物質による影響と考えています。




注1:【A2】の記述及び【A3】の記述は、平成23年6月14日に更新を行いました。 この更新は、平成23年6月13日に提出された教員有志からの総長宛要請書 (https://sites.google.com/site/utokyoradiation/home/request)  を受けた総長の指示により、これまで寄せられた質問等の状況も考慮しつつ行ったものです。
【A2】の更新の理由は、事故による空間線量率増加の影響が副次的であると誤解されるおそれを避けるためです。
【A3】の更新の理由は、事故当初の問い合わせの際に求められることの多かった端的な回答よりも、国民一人一人による影響判断の材料となる情報を提供することが、事故後の推移を経た現段階では重要になっていると考えられたためです。

なお、更新前後の記述は以下のとおりです。
【A2】
≪更新前≫
測定点近傍にある天然石や地質などの影響で、平時でも放射線量率が若干高めになっている所があります。現在、私たちが公表している柏のデータ(東大柏キャンパス内に設けられた測定点です)は、確かに、他に比べて少々高めの線量の傾向を示しています。これは平時の線量が若干高めであることと、加えて、福島の原子力発電所に関連した放射性物質が気流に乗って運ばれ、雨などで地面に沈着したこと、のふたつが主たる原因であると考えています。気流等で運ばれてきた物質がどの場所に多く存在するか、沈着したかは、気流や雨の状況、周辺の建物の状況や地形などで決まります。
≪更新後≫
現在、私たちが公表している柏のデータ(東大柏キャンパス内に設けられた測定点)は、確かに他に比べて高めの線量を示しています。測定点近傍にある天然石や地質などの影響で、平時でも空間線量率が若干高めになっている所があります。また、福島の原子力発電所に関連した放射性物質が気流に乗って運ばれ、雨などで地面に沈着したことが原因であると考えています。気流等で運ばれてきた物質がどの場所に多く存在するか、沈着したかは、気流や雨の状況、周辺の建物の状況や地形などで決まります。
【A3】
≪更新前≫
事故前より少々高めの線量率であることは事実ですが、人体に影響を与えるレベルではなく、健康にはなんら問題はないと考えています。
≪更新後≫
事故前より高い空間線量率が測定されています。従来の疫学的研究では、100mSv(1回または年あたり)以下の被ばく線量の場合、がん等の人体への確率的影響のリスクは明確ではありません(自然被ばく線量は世界平均で1年間に2.4 mSvです)。ICRP(国際放射線防護委員会)は、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて、「長期間の後には放射線レベルを1mSv/年へ低減するとして、これまでの勧告から変更することなしに現時点での参考レベル1mSv/年~20mSv/年の範囲で設定すること」(日本学術会議訳)とする内容の声明を出しています。
※ICRP声明 3月21日 http://www.icrp.org/news.asp

注2:【A2】の記述中、「測定点近傍にある天然石や地質などの影響で」を「測定点近傍にある天然石などの影響で」と、平成23年7月15日付けで更新を行いました。 更新の理由は、この回答における所見の対象が測定地点であったこと、及び、天然石の影響である可能性がより高いことを明確にするためです。

注3:【A9】の記述中、「測定されていた値を基にしています。0.08~0.16μSv/時ですので、平時の値としては、まるめて0.1~0.2μSv/時としました。」を「測定されていた値を基にしています(0.08~0.16μSv/時)。」と、平成23年7月15日付けで更新しました。
更新の理由は、測定された数値に基づき、柏(1)につき、少数第2位まで表記することにしたためです。なお、測定値については、計測上の誤差や時間的・場所的変動があり得ることに十分ご留意下さい。

注4:本郷(1)、柏(1)の測定地点は以下のとおりです。
 本郷(1):医学部総合中央館B1F健康と医学の博物館前庭
 柏(1):物性研究所本館北東側エントランス外部

注5:すべての空間ガンマ線量率の単位表記をμSv/時に統一しました。




≪東京大学環境放射線対策プロジェクト≫