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史料編纂所の所蔵する和歌資料の出陳

掲載日:2016年11月2日

出光美術館で開催される開館50周年記念「時代を映す仮名のかたち―国宝手鑑『見努世友』と古筆の名品―」展(2016年11月19日~12月18日)において、史料編纂所が所蔵する和歌資料2点が展示されます。
   「足利尊氏奉納稲荷社詠八首和歌」1巻は、暦応二年(1339)十二月中旬、尊氏が稲荷大社に奉納すべく、36人の歌人に各8首を詠じさせた和歌を書写した巻物で、現在は法印実性の和歌と尊氏の跋語(ばつご)の末尾3紙のみになっています。年紀の明らかな尊氏の花押(かおう)を含め、天下安寧を願う趣旨が知られる点に価値が認められてきました。加えて、当初のものと思われる料紙の装飾、とりわけ裏面のそれを残すものは、一連の尊氏による七社奉納和歌でも珍しく、南北朝時代の和歌清書本の姿をうかがう遺品として再評価されました。表面は、青・紫の打曇(うちぐもり)に天地には金銀切箔などを撒き、裏面には金銀泥で蝶・蜻蛉・水鳥・稲穂ほかを散らし描いています。書と料紙とのコンビネーションからなる美術が、中世に展開してゆく一例です。
   「禁裏御会和歌集」1巻は、永享十一年(1439)正月から翌年正月に、禁裏において続歌(つぎうた)形式で営まれた、月次および臨時の歌会における人々の詠歌を、伏見宮貞成(さだふさ)親王(後崇光院:ごすこういん)・貞常(さだつね)親王の父子が書写した本で、後に巻物に改装されています。丸一年計18回分の歌会を収める貴重な資料で、中世和歌研究でも存在には言及されていますが、歴史学の研究所で所蔵しているためか、文学研究の側から注目されることがありませんでした。後崇光院は、『看聞日記』(かんもんにっき)に中世の美術・音楽・芸能に関わる記述を多く書き残した文化人として著名で、特徴ある筆蹟も時代による仮名の書様の変容を示し、その典型例として本資料が紹介されます。
  今回の出陳は、史料編纂所の共同利用・共同研究拠点による公募型の一般共同研究「『隠心帖』を中心とする古筆手鑑の史料学的研究」(2014~15年度、研究代表者:鶴見大学・久保木秀夫氏)による成果の一端で、古典文学や書を専門とする研究者の視点から、本所が所蔵する史資料の見直しがなされ、本共同研究にご参画頂いた同館学芸員・別府節子氏による展示企画のなかで実現しました。本共同研究が主たる対象とした古筆手鑑『隠心帖』(重要文化財)も部分的ながら(上帖「金剛院切」、中帖「珍誉集切」の部分のみ)、久方ぶりに一般の観覧に供せられます。すでに評価の定まった平安・鎌倉時代の古筆のみならず、南北朝・室町時代の仮名にも積極的に光を当て、和歌の営みとともに時代の空気を映して、仮名の書風・様式が豊かに展開するさまを跡づける構想のなかで、本所所蔵の和歌資料にもご注目頂ければ幸いです。
  なお、本所所蔵の2点は全巻の画像を、「所蔵史料目録データベース」よりWeb公開し、個人蔵『隠心帖』についても、ご所蔵者のご厚意により、本所図書室で端末による画像閲覧が可能となっております。併せてご参照いただければと存じます。

会場:出光美術館 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ日比谷線・千代田線・都営三田線「日比谷」駅、東京メトロ有楽町線「有楽町」駅、JR「有楽町」駅。
会期:2016年11月19日(土)~12月18日(日)月曜休館
開館時間:10時~17時(金曜は19時まで)
入 場料:一般1000円、高・大生700円、中学生以下無料(ただし保護者同伴が必要)

関連URL:http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html

対象者: 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業



足利尊氏奉納稲荷社詠八首和歌(末尾) 東京大学史料編纂所蔵

禁裏御会和歌集(部分) 同蔵
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