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重要文化財『実隆公記』および「三条西実隆像紙形」の出陳

掲載日:2017年3月28日

  史料編纂所で所蔵する原本史料を代表する『実隆公記』が、この日記を残した三条西実隆(1455~1537)の肖像画のデッサンとあわせて、サントリー美術館「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」(2017年3月29日~5月14日)に出陳されます。
 

 本展は、日本中世絵画の主要な作品ジャンルである絵巻を、時代順や主題・様式分類による名品展とは切り口を変えて、パトロンの絵巻鑑賞・蒐集行為が作品制作と動的な関係にあることを念頭に、代表的な絵巻制作・鑑賞の記事をたどりつつ、そこに現れた作品を捉え直す企画です。実際には《絵巻マニア》では捉えきれない営為を扱いますが、愛好者たちの視線を重ね合わせて、絵巻の魅力を愉しんで頂ければと思います。
 焦点の当てられる人物は、後白河院、源実朝、花園院、伏見宮貞成親王(後崇光院)と後花園天皇父子、三条西実隆、足利歴代将軍、それに松平定信です。なかでも貞成親王の『看聞日記』と実隆の『実隆公記』は、室町時代の文化・学芸の様相を知る重要な日記で、絵巻に関する記事も豊富にあり、とくに『実隆公記』では現存作品と対応する事例も多くなります。
 

 今回、『実隆公記』原本が展示されるのは、実隆晩年の日記で、いずれも土佐光茂が描いた縁起絵巻の制作過程を伝えています。享禄4年(1531)の日記では、大和・当麻寺の僧より「当麻寺縁起絵巻」の詞書の清書を依頼され、さらに天皇や摂関家へも清書の分担を依頼する仲介者となった様子がうかがえます。また翌5年の日記には、将軍足利義晴の注文で制作された「桑実寺縁起絵巻」に関する記事があり、実隆は制作のプロデューサー的な立場にありました。そのころ義晴は、細川晴元に京を逐われて近江へ逃れ、湖東の桑実寺に仮寓しており、絵巻の奉納を思い立ちますが、実隆は詞書の文章を新たに作成することから取りかかりました。他にも『実隆公記』には、傑出した出来映えを示す「春日権現験記絵」や「玄奘三蔵絵」が奈良から京都へ運ばれ、天皇・貴族たちが鑑賞した際の記事を含むなど、展示・図録ではたびたび登場します。
 

【開催概要】
「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」
会場:サントリー美術館(六本木・東京ミッドタウン内)
会期:2017年3月29日(水)~5月14日(日)
開館日・時間:火曜日休館(5月2日は開館) 10時~18時(金・土曜日は20時まで)
入場料:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
交通:六本木駅(大江戸線・日比谷線)、乃木坂駅(千代田線)
 

【出陳史料】
『実隆公記』享禄4年3~8月記(展示期間:4月26日~5月14日)
『実隆公記』享禄5年春夏記(展示期間:3月29日~4月24日)【写真】
「三条西実隆像紙形」(展示期間:3月29日~4月24日)
 ※4月26日~5月14日には法体の実隆画像(二尊院所蔵)〔参考:本所模本〕が展示されます。
 

【参考文献】
『実隆公記』原本について:末柄豊「『実隆公記』と文書」(五味文彦編『日記に中世を読む』吉川弘文館、1998年)
「三条西実隆像紙形」について:黒田日出男「奇跡的に残った肖像画」(『UP』350、2001年)
「当麻寺縁起絵巻」について:奈良国立博物館編『當麻寺』(2013年)
「桑実寺縁起絵巻」について:國賀由美子「桑実寺縁起絵巻」(滋賀文化財教室シリーズ227)
 

史料編纂所データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/

対象者: 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業



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