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東京大学所有(史料編纂所保管)「蒋洲咨文」の重要文化財指定について

掲載日:2016年3月23日

実施日: 2016年03月23日

  2016年3月11日、文化審議会が文部科学大臣に重要文化財に指定する美術工芸品などについての答申をおこないました。そのなかに史料編纂所が所蔵する「蒋洲咨文」(しょうしゅうしぶん)が含まれています。
 「蒋洲咨文」とは、明の嘉靖35年(1556)、明の使者蒋洲が対馬宗氏に倭寇禁圧を求めた公文書(咨文とは対等の役所同士がやりとりするさいに用いる様式のこと)です。宗家旧蔵で、1977年に書店から本所が購入しましたが、傷みが激しかったため、修復室において2007~08年にかけて全面的に修復されました。宗家の史料は現在各所に分散して所蔵されており、史料編纂所では「蒋洲咨文」以外にも江戸藩邸伝来の史料約3000点を所蔵しています(関東大震災後の1924年に南葵文庫より本学附属図書館へ寄贈され、1962年に本所に移管)。
 内容は、明が日本に対し、日本各地の民衆が中国辺境で掠奪を働くこと(いわゆる倭寇)を禁止するよう求めたものです。
 蒋洲は1555年、倭寇禁圧を求め日本にやってきて、豊後の戦国大名大友氏のもとを訪れ、これを要請します。この「咨文」は、蒋洲がまだ大友氏のもとに滞在中の嘉靖35年11月3日付で、対馬宗氏に向けて出されたものです。大友氏が蒋洲の来訪に応えて明に使節を派遣したのに対し、宗氏がこれを受け蒋洲にどのような対応をしたのかは知られていません。ただ、朝鮮の正史『朝鮮王朝実録』には、明宗12年(1557)3月、対馬宗氏の使者がやってきて、大明副使蒋なる人物から書状が来たと報告したことが記され、咨文の概略が引用されています。
 この「蒋洲咨文」は、倭寇をめぐる日本と明との関係を歴史的背景にした外交文書の原本として貴重なものであり、対外関係史・古文書学研究史のうえでの重要性が評価されました。
 なお今回の重要文化財指定答申では、史料編纂所において目録作成・翻刻している史料3件も含まれています。京都・大徳寺の「真珠庵文書」(1339通)、および奈良・春日大社の「大東家文書」(324通)・同「皇年代記」(1巻)です。これらは史料編纂所の調査研究が基礎となり、貴重な史料として学界に認知されたことが指定につながったと言えます。
 「蒋洲咨文」は、2016年4月19日(火)より5月8日(日)まで、「平成28年新指定国宝・重要文化財」として東京国立博物館において一般公開されます。この機会にぜひご覧下さい。

 

関連URL

文化審議会答申(2016年3月11日)
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/2016031101.html

蒋洲咨文の内容(「須田牧子「『蒋洲咨文』について」)
http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/kiyo/23/kiyo0023-17.pdf

史料編纂所特殊蒐書・宗家史料
http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships_help/OSIDE/W01/shushokaidai/T14.html



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