ARTICLES

印刷

第5回東アジア史料研究編纂機関国際学術会議の開催

掲載日:2016年11月16日

実施日: 2016年11月07日 ~ 2016年11月08日

 11月7日・8日の両日、東京大学IIRC会議として、史料編纂所主催・日本学士院共催による第5回東アジア史料研究編纂機関国際学術会議が開催されました。この学術会議は、史料編纂所(日本)、国史編纂委員会(韓国)、社会科学院近代史研究所(中国)が幹事機関となり、各国の代表的な史料研究編纂機関を集めて、2年に一度、3か国の回り持ちで開催されてきました。2002年の韓国開催からはじまり、今回が5回目です。
 今回の学術会議では、「アジア歴史資料の編纂と研究資源化」を全体テーマとし、①王家や貴族の文庫形成及び史料編纂・歴史編纂とこれらの活用の問題、②国内外機関との連携による新たな史料研究、③海外所在史料の調査と研究、④情報技術を活用した史料の利活用の推進、この4つの主題のもとに、各国5本ずつ計15本の報告がありました。各報告は事前に日中韓3か国語に翻訳され、600頁近い予稿集が準備されました。また会議中は、同時通訳を配置して報告や質疑を各国語に翻訳し、相互の実質的な議論を手助けする工夫をはかりました。
 当日は、まず主催者側を代表して五神真総長が挨拶に立ち、次いで史料編纂所山家浩樹所長、近代史研究所周溯源副所長、国史編纂委員会朴漢男委員長代理が挨拶の言葉を述べました。メイン会場となった伊藤国際学術研究センター特別会議室には、中韓からの招聘研究者15名を含む40人前後の研究者が詰め、隣接する会議室では発表の様子がモニター中継され、多くの研究者が見守りました。
 2日間多岐にわたった報告の中では、日本の天皇・公家文庫、朝鮮王朝や清朝皇帝の文庫や史料研究の成果、史料画像のデジタル化による公開状況などが次々と披露されました。また、各国の歴史資料デジタルアーカイヴ化の取り組みが紹介され、中韓両国ともに史料の研究とその公開・発信を重視し、積極的に推進していることがよくわかりました。とくに国際学士院連合への登録事業として、韓国国史編纂委員会が220億余(ウォン)の予算をかけて朝鮮王朝実録の英訳に取り組んでいることなども印象に残りました。日本からは、海外史料のデジタルアーカイヴ化や、開設10年を迎えたアジア歴史資料センターの報告がありました。最終日には総合討論の時間が設けられ、東アジア三国における歴史資料の研究・編纂について熱心な議論が行われました。
 学術会議に参加した中韓の研究者は、会議終了後、史料編纂所が所蔵する東アジア関係史料のミニ展示を見学しました。日本と琉球、明清や朝鮮にかかわる国宝・重要文化財を熱心に見て回りました。翌日からは京都を訪問し、京都御所や近衛家伝来史料を収蔵する公益財団法人陽明文庫を見学しました。史料編纂所が長年にわたり史料調査を継続している陽明文庫では、名和修文庫長のご配慮により、御堂関白記(藤原道長の自筆日記:国宝)をはじめ、貴重な原本史料を閲覧することが出来ました。
 一連の取り組みは、日中韓3か国の代表的な史料研究編纂機関が一堂に会し、歴史資料を介して交流する貴重な機会となりました。この学術会議の報告は、来年度の刊行が予定されています。また会議終了後、幹事機関による理事会が開催され、2年後は中国・北京で開催することが確認されました。再見!
 
学術会議の報告一覧:
〔第1日目〕11月7日(月)
 田島公(東京大学史料編纂所教授)「天皇と貴族が形成した文庫の目録学的研究の成果―デジタル画像の収集・公開と文庫の形成・再興・伝来の解明―」/元昌愛(韓国学中央研究院 蔵書閣責任研究員)「朝鮮後期の王室書庫―奉謨堂を中心に―」/李士娟(故宮博物院図書館研究館員・善本組副組長)「皇室の風格―清朝宮廷遺蔵典籍の特質及び整理研究の意義―」/梁晋碩 (奎章閣韓国学研究院学芸研究官)「奎章閣の古文書の現況と資料整理」/卜鍵(国家清史編纂委員会常務副主任)「清史編纂の史料準備(出版)」/李葵理(国史編纂委員会編史研究士)「朝鮮王朝実録の編纂と活用」/村井祐樹(東京大学史料編纂所助教)「史料編纂所の史料収集活動について」/禹秦雄(韓国国学振興院資料部研究員)「韓国国学振興院所蔵古文献の現況と今後の課題」/平野宗明(国立公文書館アジア歴史資料センター研究員)「アジア歴史資料センターにおける『アジア歴史資料』のデジタル公開状況と展望」
〔第2日目〕11月8日(火)
 馬忠文(中国社会科学院近代史研究所中国近代史档案館館長)「中国近代史档案館所蔵の黄元蔚档案にみる中日関係史料」/保谷徹(東京大学史料編纂所教授)「在外日本関係史料の調査・収集と研究資源化の研究―日本学士院UAI関連事業との関わりで―」/張鴻広(文化部清史纂修与研究中心網絡中心処長)「清史編纂プロジェクト檔案文献史料のデジタル化利用と情報化構築の概況」/韓亘熙(国史編纂委員会編史研究官)「3・1運動基礎情報データベース構築事業の内容と意味」/馬場基(奈良文化財研究所主任研究員)「奈良文化財研究所における情報技術を活用した史料の利活用の促進」/曹必宏(中国第二歴史档案館副館長)「中国第二歴史档案館館蔵档案デジタル化及びその公開利用」
 



挨拶する五神総長

山家所長へ記念の書を贈る周副所長

朴委員長代理の挨拶
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる