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建築博物教室第7回「幾何学のアーキテクチャ ――イワン・レオニドフによる新たな建築形態の探求」の開催(総合研究博物館小石川分館)

掲載日:2015年7月13日

実施日: 2015年07月04日

 「アーキテクチャ」をテーマにさまざまな分野の研究者が講演を行い、関連した標本を「アーキテクトニカ・コレクション」として展示するシリーズイベント「建築博物教室」の第7回が、7月4日(土)に総合研究博物館小石川分館で開催されました。ロシア建築史が専門の本田晃子氏(早稲田大学高等研究所助教)をお招きし、「幾何学のアーキテクチャ ――イワン・レオニドフによる新たな建築形態の探求」と題して講演が行われました。本田氏は第3回東京大学南原繁記念出版賞および第36回サントリー学芸賞を受賞した気鋭の研究者で、著作『天体建築論 ――レオニドフとソ連邦の紙上建築時代』(東京大学出版会)で展開された考察にも関わる講演内容となりました。一般来場者および教職員計67名が参加しました。
 ロシア構成主義を代表する建築家の一人であるイワン・レオニドフ(1902-1959)は、実作をほとんど残さなかった「紙上建築家」です。なかば夢想家として扱われてきたレオニドフの建築思想を、本田氏は「幾何学的形態」という着眼から読み解いていきます。十月革命を経て新しい社会の建設に直面したレオニドフは、世界を「新しく見ることが、新しく建築することにつながる」と考えていました。航空機やカメラの機械の眼といった新しいテクノロジーを介して、生身の眼では捕捉できないマクロな幾何学的パターンを発見し、これを建築や都市のデザインに適用しようと考えます。しかし1930年代のスターリン体制下になると、このような建築思想は「機械の建築」として攻撃の対象となりました。レオニドフはその批判をかわすために「建築の有機化」という課題に取り組みます。そのときに彼が参照したのが「自然」の形態でした。生物学者エルンスト・ヘッケルの放散虫の研究から導きだされた有機体の「根本形態」を人工物に適用することによって「建築の有機化」をはかろうとします。レオニドフのマクロな視点とヘッケルのミクロな視点が、人工物と自然物を結びつける幾何学的形態の可能性を浮かび上がらせます。
 このような横断的なアプローチは、多分野の学術研究から幅広い「アーキテクチャ」の探求を試行する小石川分館のイベント「建築博物教室」や常設展示「建築博物誌/アーキテクトニカ」の企図とも重なるものです。講演会場には、レオニドフのプロジェクト「太陽の都」の模型(建築学科3年の楊光耀氏が制作)が展示されました。なお、次回の建築博物教室は、本年11月21日(土)に高山浩司氏(植物系統進化学)による「植物のアーキテクチャ ――いのちを繋ぐ種子のかたち」を予定しています。

関連URL:http://www.um.u-tokyo.ac.jp/architectonica/kyositsu.html



建築博物教室の会場風景(総合研究博物館小石川分館)

レオニドフの「太陽の都」の模型
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