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第2回「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を開催

掲載日:2017年12月11日

実施日: 2017年11月18日

2017年11月18日 (土) カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) と物性研究所、宇宙線研究所の主催により、物理を学ぶ女子学部生及び女子大学院生の支援を目的に「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を Kavli IPMU 棟 (東京大学柏キャンパス) で開催し、19名の参加がありました。本イベントは、物理学科出身の様々な講師の方をお招きしキャリアパスを提示すると共に、参加者同士のネットワーク作りや物理学分野 (素粒子・原子核、宇宙・天文、物性、物理工学) の魅力を伝える機会として行われたもので、今年が第2回目となります。


最初に瀧川仁物性研究所所長の挨拶があり、講演に移りました。今年は4名の講師をお招きしました。1人目の講演者は、企業で研究を行っているヘンケルジャパン株式会社エレクトロニクス事業部テクニカルサービス&エンジニアリングの疋田彩シニアエンジニアでした。疋田先生は、「世界で活躍することを夢見て」と題して講演し、参加者の参考になればとの趣旨で初めに現在のキャリアに至るまでにどのような経験があったかを丁寧に振り返り紹介していました。その上で、グローバルな企業で人種と国籍を超えてメンバーと働き分かり合えることの面白さ、市場に自らが開発に携わった製品が出ていくことの喜び、物理は今でも楽しく且つ物理で学んだ考え方や研究への姿勢が現在も役立っていることを語りました。


2人目の講演者は、宇宙線研究所の苔山圭以子助教で、「日々、地下にもぐる ~ついにひらかれた重力波の“窓”」と題して講演しました。苔山先生は冒頭で、「物理の研究がいかに面白いかを伝えたいので研究の話を沢山します」と述べ、岐阜県飛騨市神岡町の地下に位置する大型低温重力波望遠鏡 KAGRA での日頃の研究活動の様子や KAGRA に施されている様々な技術的工夫を数多くの写真や図で紹介。さらに 苔山先生がKAGRA に携わる前に従事していた、重力波の初の直接検出で話題となった米国の LIGO 実験での経験や LIGO の重力波検出で得られた物理的意義に触れました。


3人目は、国立研究開発法人で研究を行う研究者として、物質・材料研究機構の清水智子主任研究員が「ロールモデルのつまみ食い」と題して講演しました。小さい頃から理科が好きで「なんでも作れるエンジニアになりたい」との想いを出発点に、走査型プローブ顕微鏡を用いた表面科学研究に従事する現在のキャリアを築いていくにあたり、清水先生がロールモデルとして参考にしてきた3名の女性を含む日米の5名の先生方や友人を紹介。子育てをしながら研究をしていく姿勢やプライベートを上手く切り分けるすべ、科学に対する真摯な姿勢といったものまで、それぞれのロールモデルからどのようなことを学んだかを述べました。そして、全てを真似するわけでなく各ロールモデルから良いところどりをしていくという考え方で、自分が納得する形でキャリアを切り拓いてきたと述べ、次世代となる参加者にもそのようなロールモデルを見つけていって欲しいと呼びかけました。


最後に講演を行ったのは、物理学科出身で現在は Kavli IPMU の研究者で唯一の文系研究者として現代科学論・科学コミュニケーション論の研究を行う 横山広美教授が「物理を経て、現代科学論の研究者に」と題して講演をしました。 「科学と社会の繋がりを研究する学問」である現代科学論とはそもそも何かを伝えるため、最初に現代科学論の歴史と概要について触れました。その後、現在のキャリアに至る経緯について紹介。中学生の頃に科学雑誌で初期宇宙論の話題に触れ物理の面白さに目覚めたと同時に科学を伝える仕事にも興味を持ったことを出発点として、その後に物理学を専攻し現代科学論の研究者となる前に従事していたニュートリノの K2K 実験での経験、分野転向し現代科学論の研究者となってから行なってきた仕事等を紹介しました。そして、物理で培った「原理・原則」に立ち戻る考え方や、物理の研究に従事し「科学」を体感してきた経験が、現在の研究活動で強みとなっていることを述べました。


講演の合間に行われた施設見学では参加者が3つの班に分かれ、Kavli IPMU と物性研究所、宇宙線研究所の3研究機関のうち2つの研究所を各班毎に見学しました。物性研究所では大学院生のスタッフが参加学生に自らの研究も交え研究装置の説明を行うなどしました。最後に行われた交流会では、お茶やお菓子を片手に和やかな雰囲気の中で、講師へ積極的に質問する姿や参加者同士での交流がみられ、盛況のうちに終了しました。


参加者アンケートからは、「これまで物理の世界で活躍されている女性の方たちの話を聞く機会があまりなく、とても新鮮でした」「結婚や出産を考慮するとネガティブなイメージを持っていた研究職のイメージが変化した」「いろんなキャリアを自ら作れるかもしれないと感じました」「好きなことを一生懸命にやろうと思えた。積極的に動こうと思った」など、参加者からの前向きなコメントが数多く寄せられました。

関連URL:http://www.ipmu.jp/ja/20171118-WomenStudents



参加者と講師、スタッフらの集合写真

施設見学の様子

交流会の様子。中央は参加者へ語りかける世話人の森初果物性研究所教授
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