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2017年 五神総長年頭挨拶

掲載日:2017年1月1日

実施日: 2017年01月01日

明けましておめでとうございます。
新しい年を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

一昨年の梶田隆章特別栄誉教授のノーベル物理学賞に続き、昨年、東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは、本学としても大変喜ばしいことでした。大隅先生は、本学教養学部を卒業され、理学系研究科で博士号を取得された後、ロックフェラー大学に研究員としての滞在を経て、理学部で助手・講師をつとめ、ご出身の教養学部では助教授として研究・教育に従事されました。今回の受賞のテーマであるオートファジーの研究は、助教授時代の発見が端緒となったもので、大隅先生のノーベル賞受賞は本学にとって大きな誇りです。

東京大学は今年の春で創立140年を迎えます。この間、情報通信技術や高速輸送技術など科学技術は飛躍的に進歩し、人間の暮らしや社会の様相は大きく変わりました。世界中の出来事を瞬時に知ることができ、人々の活動は国境を越え、地球全体に広がっています。しかし、その一方で、資源の枯渇、地球環境破壊、世界金融不安、地域間格差、宗教対立の深刻化など、人類全体の課題が複雑さと深刻さを増していることも忘れてはなりません。こうした新たな様相を見せる難題を前に、人類が創り上げ良き伝統として守ってきた社会や経済や国際政治を支える基本的な仕組みが十分に機能しなくなっていると感じます。

2016年は、正月の世界的な金融不安から始まり、世界各地での大規模テロの頻発、イギリスの国民投票におけるEU離脱の意思表示、アメリカの大統領選挙とその波紋など、人類社会にとって大きな意味をもつさまざまな出来事とともに過ぎた一年でした。あるいは後世の人々が歴史を顧みて、人類社会の転換点となる年だったと振り返ることになるかも知れません。

残念なことに世界では、人間の知性に対する絶望も語られています。知のもつ力を否定するような動きも目立つようになってきました。しかし、より良い人類社会を創るために、今、大学が果たすべき重要な役割を放棄するわけにはいきません。向うべき方向について、ビジョンを共有し、知恵を絞り、協力し合うことで、知性への信頼を高め、そして、新たな社会や経済の仕組みを提示していかねばなりません。

大切なことは、知の多様性です。異なる考えを持った人々が互いに尊重し、協働し、それを推進力とするのです。創立以来、東西文化を融合しつつ、新しい知を作り上げてきたことこそが東京大学の伝統であり、本学が今、次の70年に向けて、このアクションの中心的役割を担うべきだと考えています。

そのために、全学の構成員と総力を結集し、いっそう力強く行動していきたいと思います。皆様の温かいご支援、ご協力をお願いいたします。

最後に、この一年が皆様にとってより良い年となることを、心よりお祈り申し上げます。

2017年1月1日
東京大学総長
五神 真



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