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世界の卒業生紹介1/バイオロギングで動物の生態を解明する渡辺佑基さん | 広報誌「淡青」34号より

掲載日:2017年3月16日

実施日: 2017年03月07日

文系から理系、ビジネスから学究、芸術から政策と縦横無尽に地球規模で活躍する東大卒業生14名の姿から、世界と共にある東大を浮き彫りにします。
 

バイオロギングによる物理学で野生動物の生態を解明
渡辺佑基さん  Yuuki Watanabe
(http://www.geocities.jp/watanabeyuukionline)
国立極地研究所准教授  
2007年農学生命科学研究科博士課程修了(2006年度総長賞受賞)

 立川の極地研究所1階ロビーにて。 写真:貝塚 純一

 グンカンドリは3日間着地せずに飛び続ける、ウェッデルアザラシは1 時間弱も潜り続ける、クロマグロは太平洋の端から端まで往復する、ペンギンとマンボウは泳ぐ仕組みが同じ……。気になる事実を著書などで広く紹介してきた渡辺さんは、動物を追いかけて世界中どこへでも行く生物学者ですが、グンカンドリとともに飛び続けたり、アザラシとともに潜り続けたりできる超人、ではありません。その武器はバイオロギング。野生動物の体に小型の記録計やカメラを取り付け、logを分析して、活動ぶりを克明に描き出すというものです。

 「出会いは学部4 年のとき。指導教官の紹介で極地研究所の内藤靖彦先生を訪ねたら、アザラシにカメラをつけるんだ、と目を輝かせて言われました。なんじゃそりゃと思いながらも面白そうだな、と」
 

大学時代の渡辺さん

バイカル湖にて、
人生の師・バラノフさんと


 大学院に進んだ渡辺さんは、海洋研究所(現・大気海洋研究所)の宮崎信之先生の指導でロシアへ。数々の失敗を経て、3度目の渡航調査で、バイカルアザラシにつけた記録計をタイマーで切り離し浮上させて回収する画期的な手法を編み出しました。動物自体を捕獲してデータを回収する従来方式より飛躍的に効率のいいこの新方式の確立は、以後のバイオロギング界の発展に貢献するイノベーションでした。

 「費用の面も含めて一介の大学院生に全てを託してくれた宮崎先生の大きさが、教員となったいまでは身に沁みてわかりますね」

 「情熱大陸」という番組では「生物学界のインディ・ジョーンズ」と呼ばれたこともある渡辺さんですが、当初は力学が好きで、工学部志望だったとか。小さな細胞をずっと覗き込んでいるような印象が強かった生物学に、あまり興味が持てなかったのです。

 「でも、教養学部時代にたまたま出た授業で、野外に出て動物の生態を調べる分野があると知り、それなら面白そうだと思って、生物学に進んだんです。当時は教養教育の意味などわかりませんでしたが」

 創設以来140年にわたってリベラルアーツ教育を重んじてきた大学としては、その生体に記録計を取り付けて活躍ぶりを追跡し続けたくなる卒業生のお一人です。
 

おまけQ&A
南極で吹雪のときなどによくやる特技は?
「けん玉。けん玉協会南極支部で1級に認定されました」
特に気になっている動物は?
「ネズミザメ目のサメ。魚なのに体温が高く、遠くまで泳げます」
学生時代、研究以外でがんばったことは?
「運動会自転車部競技班。バイトも自転車便でした」
東大の後輩へメッセージを。
「コミュニケーションよりも自分なりにじっと考えることが大事」


※本記事は広報誌「淡青」34号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


 
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