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田無病院との協働による高齢者のリハビリ農作業 | 広報誌「淡青」35号より

掲載日:2017年12月19日

実施日: 2017年09月08日

淡青色のローカルプロジェクト6@西東京市(東京都)
 
田無病院との協働による
高齢者のリハビリ農作業
 

安永円理子/長崎出身
Eriko Yasunaga
農学生命科学研究科附属生態調和農学機構
准教授


 

 

じゃがいもの畝立ての作業に興じる参加者をスタッフの皆さんが常にサポートしていました。
  
生態調和農学機構の圃場には、毎週火曜の午前になると、少し覚束ない足取りで、シニアの皆さんがやってきます。近所にある田無病院や老人保健施設で療養中の皆さんです。

「病院や施設の皆さんと連携してリハビリでの農作業体験を実施しています。認知機能の低下が疑われる方が対象で、車椅子だったり、手が動きにくかったりと症状は様々です」と語るのは、長靴がよく似合う安永先生。専門は品質を落とさない農産物流通の研究ですが、2014年に超高齢社会を見据えた大学院教育プログラムの担当教員になったのを機に、この取組みを始めました。

「1年目は病院内の小花壇に江戸東京野菜の苗を植えました。収穫もメニュー考案も調理も患者さんたち自身でやってもらって、最後にみんなで食べたんです。改善効果は予想以上でした」

いつもは使えない右手を自然に動かしハサミでナスを収穫できた、笑わないおじいさんが笑った、夜中の独り言や妄想が減った、スタッフの名前を呼んでくれた……。手塩にかけて育てた苗の成長を見守り続けた後での収穫、そしてそれを味わう喜びは、特別だったのでしょう。手応えを得た先生は2年目から圃場に舞台を拡げました。

 

ナスの収穫。腰をかがめる体勢をとるのはなかなか難儀ですが、収穫の喜びのほうが上なのです。

「畑の軟らかい土の上ではバランス感覚が必要で、いい訓練になるようです。圃場にある香りの強いハーブ類もいい刺激になります。転倒・怪我予防、こまめな給水、日差しや雨の心配など、気を遣うことは多いですが」

作業中、退院が近い患者さんが愚痴をこぼしました。「せっかくやっても収穫のときは退院していないなんて残念だあ」。退院したくなくなってしまうほど楽しいリハビリ作業。農の力は絶大です。
 
※本記事は広報誌「淡青」35号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


 
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