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芸術と科学への招待/ゆらぎ渦巻く情報造形の世界|広報誌「淡青」36号より

掲載日:2018年3月26日

実施日: 2018年03月09日

芸術と科学への招待
自然の生命知で芸術をさらに面白く
ゆらぎ渦巻く情報造形の世界

情報を芸術的なレベルで造形することに取り組む河口先生。カンブリア紀からの地球生物の進化は芸術の宝庫だと見抜き、生物 を「遊泳系」「歩行系」「飛翔系」に分けて「自己組織的」に研究してきました。独自世界へと読者を誘う言葉はやはり独特。芸術的な研究者か、研究者肌の芸術家 か。それは読んでのお楽しみ。
河口先生顔河口洋一郎/文
情報学環教授(種子島出身)
http://individuals.iii.u- tokyo.ac.jp/~yoichiro/

 
 

自己組織化する複雑系グロース・モデル


遊泳する宇宙魚 Ficco

歩行する宇宙蟹 Cracco

【自己組織化する】

自然界には多くの螺旋が見受けられます。巻貝のように、要素の連続から生まれた螺旋の造 形は、プログラミングすることで、アートにも応用できます。

アートが自ら自分で自分の未来をクリエイトすることを考えてきました。

1976年から始めた自己組織的な造形モデルでは、今や人の動きに反応して、複雑な螺旋のグロ ース造形が、揺らいだりねじれたり、踊ったりすることが可能になりました。たくさんの子供たちが自分の動きに反応してくれる自己組織的造形と遊んでいます。

 

【ジェモーションの細胞膜】

反応する格子状の被膜のような研究は、人が押した圧力に反して、生き物のように反動的に 押し上げることから2000年に始まりました。凹凸に反応するジェモーション(Gemotion = gene + emotion)プロジェクトでは、格子状の要素面が生き物のようにエモ ーショナルに凹凸反応します。

細胞の集合体で、上下左右に隣接する細胞同士が、相互関係の一定のルールで、オン(生) /オフ(死)の生成消滅を繰り返すセル・オートマトンのようになっています

壁面があたかもエモーショナルに凹凸するとなると、生き物のように呼吸を始めることにな ります。未来の新たなアート空間としても壁面が生き物のように凹凸するのは、触ってみても魅力に満ち溢れて楽しくなります

【インテリジェントな挙動】

生まれたばかりの四足生物を考えてみましょう。まだ、どう動いて良いのか何も知らない。 前に進むこともわからない。立ち上がれない。何度も転んでばかりです。しかし、やがてようやく立つことができました。少しずつ前に進もうとします。それでも、 転びます。前に足を進めようとしますが、なかなか進めない。足が震えながらも、ちょっとずつ歩こうとします。でも、なんとか少しずつ前に歩こうとしてきました 。よちよち歩きです。喜びを表現しようとバンザイしました。

バンザイしても何回も転んでいます。四足生物はまるで赤ちゃんのようです。

【未来のアートはもう一つの生命体】

生まれたてのアートが、よちよち歩きしながら成長し始めていく。アートが立ち上がったり 、転んだりしながら、泣いたり笑ったりを繰り返しながら成長していくもう一つのアート。アートは、自己学習しながら、自分で自分の未来を創出していくことにな ります。エモーショナルな自己成長をしながら個性的なものに成長していきます。


これからのアートは、コミュニケーションしながら、異次元での人の五感を刺激して、一緒 に成長してくれる、もう一つの宇宙空間での生命体の仲間となります。

アートが子供や大人に夢と希望を与えながら、未来の魅力的な街づくりに寄与することを希 望しています。

宇宙探検するエギ―ちゃん


宇宙蝶 Bucco

飛翔しようとする宇宙鳳凰 Phoecco

※本記事は広報誌「淡青」36号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


 
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