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バイオ燃料 研究者によるキーワード解説

掲載日:2013年5月22日

図1 ヘマトコッカス この種は、本来は緑藻なのだが、強光下で培養することでアスタキサンチンを蓄積して真っ赤になる。アスタキサンチンは鶏卵や鱒類の色揚げや抗酸化剤としての利用のほか、それを溶かし込んだ油脂のバイオ燃料への利用も考えられている。他にも油脂を髙生産する有望な種が多数発見されている。

図1 ヘマトコッカス この種は、本来は緑藻なのだが、強光下で培養することでアスタキサンチンを蓄積して真っ赤になる。アスタキサンチンは鶏卵や鱒類の色揚げや抗酸化剤としての利用のほか、それを溶かし込んだ油脂のバイオ燃料への利用も考えられている。他にも油脂を髙生産する有望な種が多数発見されている。 © Shigeyuki Kawano.

ポストフクシマの暗惨とした気分のなか、元気が出そうなニュースがフランスから飛び込んできた。欧州航空機メーカー大手(EADS)が、パリから東京まで2時間半で飛行できる超音速旅客機を日本と共同開発中であるとパリ航空ショーで発表したのだ。この超音速ロケット旅客機、 Zehst(Zero Emission Hypersonic Transportation)は、ゼロエミッション(二酸化炭素排出量ゼロ)が特徴で、海藻由来の「バイオ燃料」を使用する。2020年までに試作機、2050年頃に運用開始なので、その頃までに藻類バイオ燃料もメジャーになっていると予想される(表1)。

近年、原油価格の高騰、地球温暖化問題、穀類のバイオエタノールへの転用などを背景に、海藻や微細藻類を利用したバイオ燃料への研究投資が官民問わず世界中で実施されており、Zehstの例が示すように大きな期待も寄せられている。バイオ燃料研究は、様々な問題をはらみつつも成功した第一世代のバイオエタノールから、カメリナ、ジャトロファ、藻類を利用した第二世代のバイオ燃料の実用化が急ピッチで進められている。藻類は、植物に比べて単位面積当たりの生産性に優れ、農業に適さない土地でも栽培可能で食料問題と競合しないので、バイオ燃料の有望な候補の一つとなっている。藻類の魅力はその多様な遺伝資源のなかで最も環境に適した高生産の種を選べることにある(図1)。

表1:藻類バイオと従来の海藻の市場規模
品名 市場規模 備考
バイオ燃料 1,280~11,050億円 世界(2015~2020年予測)【1】
海苔 3,000億円 約30,000トン【2】
昆布 2,400億円 国内(小売ベース)【2】
ワカメ 500億円 国内97%、輸入100%が養殖産【2】
クロレラ 300億円 約1,000トン【3】
アスタキサンチン 100億円 原料1トン(前年比20%増)【3】
フコイダン 100億円 国内(2008年予測)【3】
ユーグレナ 50億円 国内(2015年予測)【4】
スピルリナ 8億円 約150トン/年 5,000円/kg 09年調べ
フコキサンチン 2億円 約0.5トン/年 15~30万円/kg 08年調べ【3】
【1】Global Information, Inc. http://www.gii.co.jp/press/sbi12952.shtml
【2】佐藤純一(2002)海藻加工品.堀輝三・大野正夫・堀口健雄編「21世紀初頭の藻学の原況」日本藻類学会(山形)pp140-142.
【3】原料BANK http://www.genryoubank.com/
【4】産経biz 2010年11月3日

河野重行 教授

先端生命科学専攻 植物生存システム

新領域創成科学研究科

(この記事は淡青25号「再生のアカデミズム」に掲載されました。)

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