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東北地方太平洋沖地震が起こるまで 2度にわたる「ゆっくりすべり」の伝播

掲載日:2012年4月6日

過去に起きた大地震の中には、本震の前に前震活動を伴うものがあります。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の場合、本震発生前の約一ヶ月間に最大マグニチュードM7.3の地震を含む約300個の前震活動が気象庁より報告されていました。

ゆっくりすべりの伝播の概念図 © Aitaro Kato

しかしながら、前震活動から本震発生までの地震活動の経緯には未解明な部分が多く残っています。前震の中には大変小さなものもあり、他の地震による波動・波浪・人工的な振動等のノイズに埋もれてしまい、前震活動の全貌を把握することが非常に困難だからです。

東京大学地震研究所の加藤愛太郎助教らは、東北地方太平洋沖地震の前震活動域で発生した微小地震を多数検出することで、1416個の震源カタログを新たに構築しました。このカタログの詳細な分析により、本震の破壊開始点に向かう2度の「ゆっくりすべり」の伝播が本震発生を促した可能性が初めて示されました。

ゆっくりすべりとは、地表に大きな揺れを生じないままプレート境界などがゆっくりとずれてゆく現象です。東北地方太平洋沖地震の前に起こった2度のゆっくりすべりは、どちらも本震の破壊開始点付近で止まり、一点に力を集中させていたことが分かりました。

本研究成果は、巨大地震発生を引き起こすプレート境界の現象について理解を深める重要な手掛かりとなりました。地震の発生過程の解明には、プレート境界面におけるすべり挙動のモニタリングや蓄積されたエネルギーの時空間的分布の把握等、今後のさらなる基礎研究が不可欠です。

(広報室 南崎 梓, ユアン・マッカイ)

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論文情報

Aitaro Kato, Kazushige Obara, Toshihiro Igarashi, Hiroshi Tsuruoka, Shigeki Nakagawa, Naoshi Hirata.
Propagation of Slow Slip Leading Up to the 2011 Mw 9.0 Tohoku-Oki Earthquake
Science 10 February 2012: Vol. 335 no. 6069 pp. 705-708, doi:10.1126/science.1215141
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