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低消費電力デバイスに向けた新材料を開発 新しい原理「量子異常ホール効果」の可能性

掲載日:2012年9月19日

超低消費電力エレクトロニクスは、省エネルギー社会を実現するうえで有力な技術になると期待されています。エネルギー損失のない電力輸送法として知られる「量子ホール効果」は、1980年代に発見された原理で、特殊な半導体を非常に強い磁場中に置くと、その端にエネルギー損失することなく電流が流れるという現象です。しかし、量子ホール効果を使いエネルギー損失なく電流を流すためには、地磁気の20万倍にもなる10テスラ以上の非常に強い磁場が必要とされます。このため強磁場がなくても量子ホール効果が起きる材料の開発が求められていました。

量子ホール効果(左)と量子異常ホール効果(右)の模式図 © J. G. Checkelsky
量子ホール効果では、半導体に強磁場を印加することによって、試料の端にエネルギー損失することなく電流が流れる。一方、特殊な磁石を用いた異常量子ホール効果でも、材料自身が持つ磁化によって、外部磁場を印加しなくても試料の端にエネルギー損失することなく電流が流れることが、理論的に予言されている。

東京大学大学院工学系研究科の叶劍挺特任講師、岩佐義宏教授、十倉好紀教授、東京大学大学院総合文化研究科の小野瀬佳文准教授、理研基幹研究所J. G. Checkelsky特別研究員(現 東京大学大学院工学系研究科特任講師)らは、最近注目を集めているトポロジカル絶縁体に少量の磁性元素マンガンを添加した材料「磁性トポロジカル絶縁体」を開発、その材料表面が磁石の性質を持つこと、そしてこの材料の中の磁壁が電流を運ぶことを発見しました。これらは、ゼロ磁場においてエネルギー損失することなく電流を流す新原理「量子異常ホール効果」の検証であり、超低消費電力エレクトロニクスを大きく前進させる成果です。

プレスリリース

論文情報

J. G. Checkelsky, J. T. Te, Y. Onose, Y. Iwasa, Y. Tokura,
“Dirac-fermion-mediated ferromagnetism in a topological insulator”,
Nature Physics, 2012, doi: 10.1038/nphys2388.
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