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道はひとつじゃない 植物の液胞にタンパク質を運ぶ3つの経路を発見

掲載日:2014年6月5日

植物の液胞は、動物のリソソーム(不要物の分解を担う細胞内の構造物)や酵母の液胞と同様に、不要物の分解というはたらきを持っている。このはたらきに加え、植物の液胞はさらに、栄養分となるタンパク質や糖の貯蔵など、動物のリソソームや酵母の液胞にはない、農学的にも重要な多彩な役割を持つ。この植物の液胞の機能は、液胞ではたらいたり、液胞内に貯蔵されたりするタンパク質が正しく輸送されることにより成り立っている。しかし、植物がさまざまなタンパク質をどのように液胞へと運んでいるのかはこれまでよく分かっていなかった。

© 2014 海老根 一生
今回明らかになった液胞への輸送経路のモデル。
液胞には、小胞体、ゴルジ体、トランスゴルジネットワーク(TGN)などのオルガネラから、①RAB5とRAB7が連続してはたらく経路、②RAB5のみがはたらく経路、③いずれのRABとも異なる因子(AP3)がはたらく経路、によってタンパク質が運ばれている。②と③の輸送経路は、植物の液胞への輸送経路が進化の過程で高度に複雑化してきたことを示唆する。種子貯蔵タンパク質、SYP22、VAMP713はそれぞれの経路で運ばれる積み荷タンパク質。

東京大学理学系研究科の上田貴志准教授、海老根一生特任研究員らは、アブラナ科のシロイヌナズナを用いて、どのような仕組みでさまざまなタンパク質が植物の液胞に運ばれているのかを調べた。その結果、植物には他の生物と共通する液胞への輸送経路に加え、植物が独自にあみ出した輸送経路が少なくとも2つ存在することが分かった。

このことから、植物は動物よりもはるかに複雑な液胞への輸送経路を進化の過程で開拓することにより、多彩で複雑な液胞の機能を獲得することができたと結論づけた。タンパク質や糖の貯蔵など、ヒトの生活に密接に関わる機能を持つ植物の液胞の機能を最適化・強化することで、高機能植物の開発が期待される。

プレスリリース

論文情報

Kazuo Ebine, Takeshi Inoue, Jun Ito, Emi Ito, Tomohiro Uemura, Tatsuaki Goh, Hiroshi Abe, Ken Sato, Akihiko Nakano, and Takashi Ueda,
“Plant vacuolar trafficking occurs through distinctly regulated pathways”,
Current Biology Online Edition: 2014/5/29, doi: 10.1016/j.cub.2014.05.004.
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