ARTICLES

English

印刷

病原体はいかにして宿主の行動を操るのか:昆虫のウイルスを用いたアプローチ  

掲載日:2012年4月10日

バキュロウイルスへの進化(宿主遺伝子の改変利用)

バキュロウイルスへの進化(宿主遺伝子の改変利用)

病原体の中には、自己の利益のために、宿主の行動を変化させるものが存在します。このような「病原体による行動操作」は、昆虫においても良く知られています。最も古くから知られている例として「Wipfelkrankheit (梢頭病)」と呼ばれる現象があげられます。この原因となっている病原体は、バキュロウイルス(注1)という昆虫ウイルスです。このウイルスは、感染の末期に宿主幼虫を寄主植物(注2)の上方に移動させ、そこで致死させることにより、自身の伝播範囲を広げています。東京大学大学院農学生命科学研究科の勝間准教授のグループは、理化学研究所、およびカリフォルニア大学デービス校との共同研究により、カイコとバキュロウイルスを用いて、「病原体がいかにして宿主の行動を操るのか」というテーマに取り組んできました。今回、バキュロウイルスが、進化の過程で宿主から獲得したと考えられる遺伝子の機能を改変して、宿主の行動を巧みに操作していることを明らかにしました。本研究を足がかりにして、病原体による宿主の行動制御に関する研究が進展することが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Susumu Katsuma, Yasue Koyano, WonKyung Kang, Ryuhei Kokusho, Shizuo George Kamita, Toru Shimada,
“The baculovirus uses a captured host phosphatase to induce enhanced locomotory activity in host caterpillars”,
PLoS Pathogens doi: 10.1371/journal.ppat.1002644.
論文へのリンク

リンク

大学院農学生命科学研究科

生産・環境生物学専攻

昆虫遺伝研究室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる