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初めて観測された重力波の起源は原始ブラックホール? 宇宙の始まりに迫る新しい理論

掲載日:2016年8月10日

© 2016 Teruaki Suyama. お互いに近い原始ブラックホールは重力によって引き合い、初期宇宙で連星を形成します。連星からは重力波が定常的に放出され、最終的に2つのブラックホールは合体します。

ブラックホール連星のイメージ図
お互いに近い原始ブラックホールは重力によって引き合い、初期宇宙で連星を形成します。連星からは重力波が定常的に放出され、最終的に2つのブラックホールは合体します。
© 2016 Teruaki Suyama.

東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センターの須山輝明助教らの共同研究チームは、2015年9月に米国の重力波望遠鏡を中心としたLIGO-Virgo(ライゴ-バーゴ)チームにより発見された渦巻きを巻きながら互いを回るブラックホール(連星ブラックホール)が、宇宙が誕生した直後に形成された原始ブラックホールであるという新理論をまとめました。

米国とヨーロッバのLIGO-Virgoチームによって初めて重力波が観測された、というニュースは、記憶に新しいところです。さらにこの重力波はおよそ太陽の30倍重いブラックホール連星が合体した時に放出されたものだと分かり、これによってブラックホール同士の連星が初めて発見されたことも大きな話題になりました。この発見以降、そんなにも重いブラックホールがどうやって作られ、そして連星を形成したのかということに宇宙物理学研究者の大きな関心が集まってきています。

共同研究チームは、宇宙初期に原始ブラックホールが宇宙に点在したという状況を仮定して、現在これらのブラックホールが合体する頻度を計算しました。その結果、原始ブラックホールが宇宙の暗黒物質の1000分の1ほどを占めていると仮定すると、算出される合体頻度が、LIGO-Virgoチームの観測によって算出された合体頻度と良く合うことが明らかになりました。

今後、連星ブラックホールに関する観測データが蓄積してくると、この理論を検証することが可能になり、ブラックホールや原始宇宙に関する理解が深まると期待されます。

「重力波が観測されてタイムリーな研究課題だったので、2週間ほどで急いで論文に仕上げました」と須山助教は話します。「今後の観測で、今回提唱した仮説が検証されることが期待されます」と続けます。

この研究成果は、アメリカ物理学会の発行するPhysical Review Lettersのオンライン版に2016年8月日付で掲載されました。また、本論文は、掲載論文の中でも特に重要で興味深いものとして、Editors’ Suggestion(編集者が推薦する論文)に選定されています。

なお、本成果は京都大学基礎物理学研究所の佐々木節教授、同理学研究科の田中貴浩教授および立教大学理学部の横山修一郎助教らとの共同研究によって得られたものです。

プレスリリース

論文情報

Misao Sasaki, Teruaki Suyama, Takahiro Tanaka, Shuichiro Yokoyama, "Primordial black hole scenario for the gravitational-wave event GW150914", Physical Review Letters Online Editiion: 2016/08/02 (Japan time), doi:10.1103/PhysRevLett.117.061101.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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大学院理学系研究科附属 ビッグバン宇宙国際研究センター

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