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ハチ目昆虫の行動進化と相関した脳高次中枢の進化 脳高次中枢の神経細胞の多様化が行動進化をもたらした?

掲載日:2018年4月27日

© 2018 大矢恵代、河野大輝、戒能洋一、小野正人、久保健雄(上段)今回研究に用い5種類のハチの系統樹、(中段)その写真、(下段)キノコ体を構成するケニヨン細胞サブタイプの種類を示すイラスト。

ハチ目昆虫の行動進化に伴うキノコ体を構成するケニヨン細胞の種類の増加
(上段)今回研究に用い5種類のハチの系統樹、(中段)その写真、(下段)キノコ体を構成するケニヨン細胞サブタイプの種類を示すイラスト。
© 2018 大矢恵代、河野大輝、戒能洋一、小野正人、久保健雄

東京大学大学院理学系研究科の大矢恵代、河野大輝大学院生と久保健雄教授らの研究グループは、ハチ目昆虫の行動進化に伴って、脳高次中枢キノコ体を構成するケニヨン細胞の種類が増加したことを発見しました。

ハチ目昆虫のうち、最も原始的なハバチ亜目は単独性で植物食です。より進化した有錐類(コマユバチなど)は単独性で寄生性であり、さらに進化した有剣類(スズメバチ、ツチバチ、アリ、ミツバチなど)は、子のために巣を作る営巣行動を示し、単独性と社会性の種を擁します。しかし、こうしたハチ目昆虫の行動進化の基盤となる脳高次中枢の進化は不明でした。 

今回研究グループは、ハチ目昆虫の植物食→寄生性→営巣性への行動進化に伴って、脳の高次中枢であるキノコ体を構成するクラスIケニヨン細胞のサブタイプの種類が1→2→3へと増加することを報告しました。このことは、ケニヨン細胞のサブタイプ(脳領野)の種類の増加が、ハチ目昆虫の行動進化の基盤になった可能性を示す世界で初めての知見であり、動物の行動進化一般にも洞察を与える、画期的な研究成果です。特に、営巣性の獲得は、多くの動物種で見出され、その後の社会性の芽生えに繋がる点で、その神経基盤の解明は重要です。今後、各ケニヨン細胞サブタイプの機能が解明されることで、ハチ目昆虫の行動進化の謎の解明は大きく前進すると期待されます。

「ハチ目の行動進化と、高次脳の細胞の進化のパラレルを示すことができて嬉しいです。ハチを見るたびに捕まえて脳切片を作りたくなります」と大矢大学院生は話します。久保教授は、「ハチの行動進化の基礎となる脳の機能進化は以前から大きな謎でした。今回の発見が、その謎を解く契機になることを期待しています」とコメントしています。

なお、本成果は筑波大学の戒能洋一教授、玉川大学の小野正人教授との共同研究で得られたものです。

プレスリリース

論文情報

Satoyo Oya, Hiroki Kohno, Yooichi Kainoh, Masato Ono, and Takeo Kubo, "Increased complexity of mushroom body Kenyon cell subtypes in the brain is associated with behavioral evolution in hymenopteran insects", Scientific Reports Online Edition: 2017/10/23 (Japan time), doi:10.1038/s41598-017-14174-6.
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