ARTICLES

English

印刷

極低消費電力回路を実現できるトンネル電流を利用した新トランジスタを開発 横型構造のまま、亜鉛を拡散した接合を用いて実現

掲載日:2013年12月26日

IT機器が消費する電力は近年急激な増加を示しており、2025年には現在の約5倍、国内総電力量の20%を消費すると試算されています。そのような試算に基づき、集積回路の低電圧化の限界とIT機器の消費エネルギーの増大は、現在、重大な課題となっています。

© M. Noguchi, S. Kim, M. Yokoyama, O.Ichikawa, T. Osada, M. Hata, M. Takenaka, S. Takagi,
今回開発したトンネル電流を用いたFETのデバイス構造。ここで、チャネルとなるインジウムガリウムヒ素(InGaAs)はリン化インジウム(InP)の基板上に作られており、亜鉛(Zn)拡散のp型ソース領域とニッケル(Ni)-InGaAsという合金層からなるドレイン領域が形成され、白金(Pt)電極によりコンタクトが形成されている。MOS構造のゲート絶縁膜には酸化アルミニウム(Al2O3)が、ゲート電極にはタンタル(Ta)が使われている。ゲート電圧印加により、InGaAs表面が高濃度のn型となり、表面にトンネル電流が流れる。

今回、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の高木信一 教授と竹中充准教授は、住友化学株式会社(代表取締役社長 十倉 雅和)との共同研究により、極低電圧での動作が可能な新しいトンネル電流を用いたトランジスタの開発に成功しました。従来のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor, 金属-酸化膜-半導体)トランジスタとほぼ同等の素子構造を用いながら、亜鉛の拡散による急峻な不純物分布を持つ接合を導入することで、新しいトンネル電流トランジスタを実現し、ゲート電圧のわずかな変化により大きな電流変化をもたらすと共に、素子のオン状態とオフ状態での電流比を世界最高値にまで高めることに成功しました。

この素子を用いることで、従来のトランジスタでは実現できない0.3 V以下の低電圧で動作する集積回路への道を拓き、IT機器の大幅な省電力化をもたらすと共にバッテリー不要なLSIなど新しい応用を可能にすると期待されます。 なお、本研究の一部は、独立行政法人科学技術振興機構のCREST・研究領域「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成」(極低消費電力集積回路のためのトンネルMOSFETテクノロジーの構築)の支援を受けて行われました。

プレスリリース

論文情報

M. Noguchi, S. Kim, M. Yokoyama, O.Ichikawa, T. Osada, M. Hata, M. Takenaka, S. Takagi,
“High Ion/Ioff and Low Subthreshold Slope Planar-Type InGaAs Tunnel FETs with Zn-Diffused Source Junctions”,
2013 International Electron Device Meeting (IEDM)
講演日:2013年12月11日

リンク

大学院工学系研究科

大学院工学系研究科 電気系工学専攻

大学院工学系研究科 電気系工学専攻 高木・竹中研究室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる