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滅菌可能な骨誘導性微小人工骨の開発 骨形成性薬剤を徐々に放出するテトラポッド型リン酸カルシウム微小人工骨による骨再生

掲載日:2013年5月15日

高齢化社会を迎えた現代において、種々の疾患によって生じた骨欠損の治療は健康寿命の延伸につながる重要な課題の一つです。健常部位から採取した骨組織の移植による骨再建と比較して、人工骨を用いた再建は健常骨の採取に伴う侵襲を減らすことができるものの、人工骨自体は骨形成を誘導する能力に乏しいことが問題でした。そのため、骨欠損部周囲に存在する患者自身の細胞に働きかけることで積極的に骨形成を促進する人工骨、つまり骨誘導性人工骨の開発が期待されています。

© Shinsuke Ohba. 薬剤を搭載したテトラボーンを11 週齢のラット大腿骨骨幹部に作製した直径2.2 mmの円柱状骨欠損に移植し、骨再生効果をマイクロCTにて検証した。その結果、骨形成性薬剤を徐放するテトラポッド型リン酸カルシウム微小人工骨の移植群で、海綿骨と皮質骨両方の骨修復が認められた。

東京大学大学院医学系研究科医学博士課程の前田祐二郎氏、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授、鄭雄一教授らは、骨形成性薬剤をテトラポッド型リン酸カルシウム微小人工骨に搭載することで、滅菌可能な骨誘導性微小人工骨を開発しました。本人工骨を骨欠損部に充填すると、細胞を移植しなくとも、骨形成性薬剤が徐々に放出されることにより海綿骨・皮質骨両方の骨修復が誘導され、その薬効は滅菌処理によって失われません。本研究は、骨形成性薬剤の使用による作製・滅菌・保存の簡便さと骨誘導性を併せ持つ微小人工骨を用いることで、生体の自然治癒能力を効率的に引き出しながら、細胞移植を行わずに骨再生を誘導する方法を提案するものであり、新たな骨再生医療戦略の開発への寄与が期待されます。

プレスリリース

論文情報

Yujiro Maeda, Hironori Hojo, Nobuyuki Shimohata, Sungin Choi, Kenichi Yamamoto, Tsuyoshi Takato, Ung-il Chung, Shinsuke Ohba,
“Bone healing by sterilizable calcium phosphate tetrapods eluting osteogenic molecules”,
Biomaterials Online Edition: 2013/4/23, doi: 10.1016/j.biomaterials.2013.03.089.
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大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻

大学院医学系研究科 骨軟骨発生・再生研究グループ

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