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スピン流を用いた高感度磁気センサーの原理を解明 ―超伝導量子干渉計の感度をはるかに越えるセンサーの提案―

掲載日:2012年9月27日

Ni0.08Pd0.92合金で測定された逆スピンホール効果。強磁性体から常磁性体に転移する温度T = 21 K付近(図中★と▲)で逆スピンホール効果に異常が現れているのが明らかに分かる。
© Dahai Wei

電子は電荷とスピンという2つの属性を持ちます。通常のエレクトロニクス素子では電荷のみの性質を利用しますが、近年注目を集めているスピントロニクス素子ではスピンに依存した電子の伝導が重要な役割を果たします。その中でも、電荷の動きを伴わないスピンのみの流れを『純スピン流』と呼び、低消費電力素子へ応用が期待されています。この純スピン流の代表的な応用例が、ごく最近話題になっているスピンゼーベック効果です。この効果を用いることで、熱の流れを、純スピン流を介して電圧信号に変換することが可能となります。しかし、純スピン流を用いたその他の応用例はこれまで報告されていませんでした。

東京大学物性研究所の大谷義近教授、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの前川禎通センター長らは、この純スピン流を利用して、常磁性体から強磁性体に転移する温度付近で電圧信号に異常が現れることを発見しました。この異常はごく微量の強磁性体でも非常に敏感に現れ、今日、高感度磁気センサーとして利用されている超伝導量子干渉計(SQUID)をはるかに凌駕する感度をもち、さらにはSQUIDでは得られない情報を引き出すことができるため、超高感度磁気センサーとしての応用が期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

D. H. Wei, Y. Niimi, B. Gu, T. Ziman, S. Maekawa, and Y. Otani,
“The spin Hall effect as a probe of nonlinear spin fluctuations”,
Nature Communications Online Edition: 2012/9/12 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms2063.
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日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 量子物性理論研究グループ

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