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カーボンナノチューブの高分散化と配向制御を実現 ソフトエレクトロニクスに向けたカーボンナノチューブ/イオン液晶複合材料

掲載日:2012年8月16日

理化学研究所(野依良治理事長)と東京大学(濱田純一総長)、筑波大学(山田信博学長)、東京工業大学(伊賀健一学長)は、カーボンナノチューブ(CNT)を従来の1,000倍も高分散化させて、配向性や電気伝導性の制御を可能とした液晶材料の開発に成功しました。この成果は、東京大学大学院工学系研究科の相田卓三教授(理研基幹研究所機能性ソフトマテリアル研究グループディレクター兼務)、同博士後期課程の李廷湖、筑波大学数理物質系の山本洋平准教授、東京工業大学資源化学研究所の福島孝典教授(理研基幹研究所エネルギー変換研究チームリーダー兼務)、理研放射光科学総合研究センターの加藤健一専任研究員、高田昌樹主任研究員らによる共同研究の成果です。

今回開発したイオン液晶にカーボンナノチューブを加え、30分混ぜ合わせると、カーボンナノチューブが高分散した黒いペーストが得られる。基板に挟むと、液晶とカーボンナノチューブの配向性をそれぞれ制御できる。© Takuzo Aida

優れた機械特性や電気特性を持つCNTは、新規材料として産業利用が期待されています。この特性を生かすためには、CNTを1本1本のレベルまで高分散化させる必要があります。しかし、従来の液晶にCNTを混合する方法では、配向制御は可能となるものの、液晶との親和性が悪く実用化するための十分な量を分散させることができませんでした。一方、これまでの研究から、CNTの表面はマイナス電荷を帯びたパイ電子が豊富に存在するため、プラス電荷を帯びたイオン液体とは親和性が良いことが明らかになっていました。

今回、共同研究グループは、配向性に優れ、かつイオン液体よりもイオン化した部位が多いイミダゾリウムを有するイオン液晶にCNT を混合したところ、5~10重量%にもおよぶCNTが極めて効率的に分散化することを見いだしました。これは従来の液晶に比べ1,000倍も大きな量です。また、混合物を詳しく調べたところ、CNTとの混合により液晶が垂直配向すること、剪断力や加熱により液晶とCNTの配向方向を独立に制御可能であること、さらにはCNTの配向によっては電気伝導特性が2桁以上も変化することを明らかにしました。今後、ソフトエレクトロニクスの実現に向けたCNT複合材料開発への応用が期待できます。

本研究成果は、ドイツの科学雑誌『Angewandte Chemie International Edition』のオンライン版に掲載されました。また、同誌のVIP(Very Important Paper)に選出されるとともに、裏表紙(Back Cover)にも選出されました。

プレスリリース

論文情報

Jeongho Jay Lee, Akihisa Yamaguchi, Md. Akhtarul Alam, Yohei Yamamoto, Takanori Fukushima, Kenichi Kato, Masaki Takata, Norifumi Fujita, Takuzo Aida,
“Discotic Ionic Liquid Crystals of Triphenylene as Dispersants for Orienting Single-Walled Carbon Nanotubes”,
Angewandte Chemie International Edition Online Edition: 2012/07/24 (Japan time), doi: 10.1002/anie.201205477.
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