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電子スピンの渦「スキルミオン」を微小電流で駆動 従来の10万分の1の低電流密度での磁気情報操作技術の実現に大きく前進

掲載日:2012年9月7日

スキルミオンが電流(伝導電子の流れ)によって駆動されている様子の概念図 © Yoshinori Tokura and Naoya Kanazawa
矢印は磁気モーメント(スピンと反対向き)を表す。磁気モーメントが渦状に配列したスキルミオンと伝導電子(図中の黄色の粒子)の磁気モーメントが相互作用することで、伝導電子の動きによってスキルミオンが駆動される。

磁石の源である電子スピンの向きをデジタル情報として利用する磁気メモリ素子は、高速・不揮発性などの特徴をもつデバイスとして注目されており、その磁気情報を磁場を用いずに電気的に操作する試みが近年盛んに行われています。強磁性体中に電流を流すと、磁化が上向きの磁区(スピンの向きが一様にそろった領域)と下向きの磁区の境界である磁壁(そこでは電子スピンの向きが徐々に変化している)を移動させることができるため、磁化反転が可能になり、情報を書き込むことができます。しかし、磁壁を移動させるには、最低でも1平方センチメートルあたり約10万アンペアという大電流密度が必要でした。これでは、大量のエネルギー損失が生じるため、より低い電流密度で磁気情報担体を操作する方法が望まれていました。

最先端研究開発支援プログラム(強相関量子科学)の事業の一環として、東京大学大学院工学系研究科の十倉好紀教授と理化学研究所基幹研究所の于秀珍特別研究員らの研究グループは、らせん磁性体FeGeを用いたマイクロ素子中に、電子スピンが渦巻状に並ぶスキルミオン結晶を生成し、強磁性体中の磁壁を駆動するのに必要な電流の10万分の1以下という微小電流密度で、スキルミオン結晶を駆動することに成功しました。このような微小な電流密度でスキルミオンを駆動できることは、スキルミオンを情報担体として用いた低消費電力の磁気メモリ素子の開発に向けての第一歩であり、現在、次世代の電子技術として研究の盛んなスピントロニクス分野においてさまざまな応用が期待できます。

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論文情報

X. Z. Yu, N. Kanazawa, W. Z. Zhang, T. Nagai, T. Hara, K. Kimoto, Y. Matsui, Y. Onose, Y. Tokura,
“Skyrmion flow near room temperature in an ultralow current density”
Nature Communications 3 (2012): 988, doi:10.1038/ncomms1990
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