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光で意のままにゲノムを編集 CRISPR-Cas9システムの光制御を実現

掲載日:2015年7月16日

© 2015 Moritoshi Sato and Yuta Nihongaki二分割によりDNAを切断する能力を失わせたCas9タンパク質のN末端側断片(N-Cas9)とC末端側断片(C-Cas9)に光スイッチタンパク質(pMag,nMag)をつなげました。青色の光を照射すると、pMagとnMag の結合に伴って、N-Cas9とC-Cas9も近接し結合します。これにより、N-Cas9とC-Cas9は本来のCas9タンパク質のようにDNAを切断する能力を回復し、標的の塩基配列を切断できるようになります(スイッチオン)。光の照射を止めるとpMagとnMagは結合力を失うため、N-Cas9とC-Cas9も離れ離れになり、DNAを切断する能力は失われます(スイッチオフ)。

今回開発した光活性化型のCas9(paCas9)により光を制御して行うゲノム編集のしくみ
二分割によりDNAを切断する能力を失わせたCas9タンパク質のN末端側断片(N-Cas9)とC末端側断片(C-Cas9)に光スイッチタンパク質(pMag,nMag)をつなげました。青色の光を照射すると、pMagとnMag の結合に伴って、N-Cas9とC-Cas9も近接し結合します。これにより、N-Cas9とC-Cas9は本来のCas9タンパク質のようにDNAを切断する能力を回復し、標的の塩基配列を切断できるようになります(スイッチオン)。光の照射を止めるとpMagとnMagは結合力を失うため、N-Cas9とC-Cas9も離れ離れになり、DNAを切断する能力は失われます(スイッチオフ)。
© 2015 Moritoshi Sato and Yuta Nihongaki

東京大学大学院総合文化研究科の二本垣裕太大学院生と佐藤守俊准教授らの研究グループは、「ゲノム編集」と呼ばれる遺伝子の改変操作を、自由自在に光で制御する技術を開発しました。

ゲノム編集を行うためには、ゲノム上の狙った塩基配列をDNA切断酵素で切断する必要があります。しかし、従来の技術ではDNA切断酵素の活性を全く制御できないため、たとえば、狙ったタイミングや狙った細胞でのみDNAを切断するといったことはできません。このため、従来のゲノム編集技術には、さまざまな制約が課せられていました。

本研究グループは原核生物で発見されたCRISPR-Cas9システムのDNA切断酵素(Cas9タンパク質)の活性を、光スイッチタンパク質を用いて青色の光で制御し、ゲノムを意のままに編集できる技術を世界で初めて実現しました。

この技術は、従来のゲノム編集技術の問題点を克服すると共に、その応用可能性を大きく広げ、医療や創薬、育種・品種改良等に貢献することが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Yuta Nihongaki, Fuun Kawano, Takahiro Nakajima, Moritoshi Sato, "Photoactivatable CRISPR-Cas9 for optogenetic genome editing", Nature Biotechnology Online Edition: 2015/6/16 (Japan time), doi:10.1038/nbt.3245.
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