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肝臓難病の新規リスク遺伝子を同定 肝臓難病について見出された2個の新規遺伝子を含む14個のリスク遺伝子が明らかに

掲載日:2012年10月26日

原発性胆汁性肝硬変とは、中高年女性に多い原因不明の胆汁うっ滞性肝疾患であり、国内の患者数は比較的少ない(患者総数は全国で約5 ? 6万人と推定)が、進行すると黄疸、肝不全となり肝移植以外に救命方法がない難病である。

肝臓難病(原発性胆汁性肝硬変)遺伝要因のゲノム全域探索 © Minoru Nakamura
新規のリスク遺伝子TNFSF15およびPOU2AF1のほか、欧米集団で報告のあるHLA、IL7R、IKZF3なども同定された

本疾患の発症には強い遺伝的素因(疾患感受性遺伝子またはリスク遺伝子)が関与することが示唆されており、すでに欧米では21種類のリスク遺伝子が同定されている。これらが集団差を超えて本疾患発症に共通であるか否かは、疾患の発症機構の解明だけではなく、人類の進化と疾患との関連の解明のための人類遺伝学上の重要課題である。特に日本人のような比較的遺伝的均質性の高い集団における疾患感受性遺伝子の同定は世界の注目するところであった。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 中村稔教授(長崎医療センター臨床研究センター客員研究員)を代表とする全国規模の肝疾患共同研究グループと東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 徳永勝士教授らは、原発性胆汁性肝硬変患者1,500名と健常者1,200名のDNA検体を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、日本人原発性胆汁性肝硬変の発症に関わる新たなリスク(感受性)遺伝子2個のほか、欧米集団でも報告された10個余りのリスク遺伝子も同定した。

今回新たに同定されたTNFSF15、およびPOU2AF1と呼ばれる遺伝子は、Tリンパ球やBリンパ球などの免疫担当細胞の成熟や分化に重要な役割を果たしている遺伝子であり、これらの遺伝子の個人差(遺伝子多型)が日本人の原発性胆汁性肝硬変発症に関わっていることが明らかになった。 彼らの研究により、リスク遺伝子に集団間で差があること、ただし、疾患発症経路は共通であることが示唆された。

さらに、リスク遺伝子を同定したことは、原発性胆汁性肝硬変の根治的治療法の開発の大きな足掛かりとなると期待される。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Minoru Nakamura, Nao Nishida, Minae Kawashima, et al.,
“Genome-wide association study identifies TNFSF15 and POU2AF1 as susceptibility loci for primary biliary cirrhosis”,
American Journal of Human Genetics Online Edition: 2012/09/21 (Japan time), doi: 10.1016/j.ajhg.
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大学院医学系研究科

国際保健学専攻

人類遺伝学分野

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