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太陽の影 銀河宇宙線でさぐる太陽の磁場構造

掲載日:2013年7月11日

人類の宇宙進出には、地球と太陽間の磁場構造を理解することが重要である。しかし、太陽表面から地球の間の磁場は直接観測することは難しく、これまでユリシーズやボイジャーなどの宇宙探査機による観測があるものの、太陽近傍は高温・高放射線の過酷な環境であるために最新の宇宙探査機であっても近づけず、その理解が十分ではない。

© The Tibet ASγ Collaboration, 太陽表面の磁場から理論モデルで推測された太陽近傍の磁力線。太陽の北極と南極から出た磁力線は、低緯度方向に伸び太陽風に乗って地球まで届く。

東京大学宇宙線研究所を中心とする国際研究グループ(チベットASγ実験、中国チベット自治区に中国と共同で建設された空気シャワー観測装置)は、地球に届く銀河宇宙線が太陽によって遮られる現象、「太陽の影」を1996年から2009年まで観測して解析し、その大きさが11年の太陽活動周期と相関して変化していることを発見した。また、「太陽の影」の変化を利用して、太陽近傍の磁場構造を予測する2つの理論モデルを検証した結果、太陽近傍の電流が磁場構造に与える影響を考慮したCSSSモデルが「太陽の影」の実験結果をよく再現することが分かった。これは、銀河宇宙線中にできる「太陽の影」を用いて太陽近傍の磁場構造の検証を行った世界で初めての成果である。

この成果は、太陽磁場構造をさぐるための新しい手法を提供するものであり、今後、観測精度をあげることで、より詳細に太陽の磁場構造を診断できるようになると期待される。なお、本研究は、14年間にわたる宇宙線データの蓄積と、電荷を持つ宇宙線が磁場中で曲げられることを利用したもので、長期間の宇宙線の連続観測により可能となった。

本論文は Physical Review Letters (PRL) の “Editor’s Suggestions” に選ばれた。

また、米国物理学会(APS)の運営するウェブサイトPhysicsで紹介文付きで取り上げられた。
Synopsis: Catching Rays in the Sun’s Shadow

プレスリリース

論文情報

K. Hakamada, J. Huang, K.Kawata, K. Munakata, M. Nishizawa, M. Ohnishi, M. Takita, T. Yuda et al.,
“Probe of the Solar Magnetic Field Using the Cosmic-Ray Shadow of the Sun”,
Physical Review Letters 111 2013: 011101-011105, doi: 10.1103/PhysRevLett.111.011101.
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